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29 ロゼッタさんの弱点

「それで、どんな物件をお探しでしょうか?」


「えっと……三人が不自由なく暮らせるところです。出来れば一軒家で、安いところ。予算は金貨で百枚くらいなので、借家で。流石に金貨百枚で買える家はないでしょうから……」


 金貨一枚の価値は日本円で一万円から二万円くらいだと俺は見ている。

 つまり俺たちの予算は多く見積もって二百万円だ。

 二百万で一軒家が買えたら、逆に不安になる。

 田舎ならともかく、ここは王都なのだから。


「ありますよ。金貨百枚の一軒家」


「え?」


 スタッフさんの言葉に、俺はポカンと口を開けてしまう。

 アリアたちも同じ反応だった。


「これが見取り図です。超オススメ物件ですよ!」


 見れば、なかなかに立派な家だった。

 二階建てで、日本の平均的な一軒家より広いかも知れない。

 しかも庭付き。

 お風呂だってある。


「妙だな。これだけの家なら、金貨百枚どころか千枚でも買えないはずだ。何か訳があるな?」


 ロゼッタさんがジロリと女性スタッフさんを睨み付けた。


「そ、それは……」


 騎士に睨まれた女性スタッフさんはビクリと震える。

 それにしてもロゼッタさん。どうしてまだ俺たちと一緒にいるんだろう?

 一緒に住むわけじゃないのに。

 もしかして、俺たちと遊びたいのかな?

 王立騎士団は意外と暇らしい。


「なぜ怯える? 騎士である私の前で隠し事か? お前が売った家のせいで、この三人に何かあったら……ロゼッタ・ホーリーランスの名にかけて許さんぞ」


 ロゼッタさんは眼光をますます鋭くする。

 俺ですら逃げ出したいくらい怖い。

 睨まれている女性スタッフさんは、たまったものではないだろう。


「あの、実は、この家……幽霊が出るんです……」


 あー、ベタなのが来たー。

 しかし、ベタベタだろうと幽霊はイヤだ。

 寝ているときに枕元に立たれたりしたら、怖くておしっこちびるぞ。


 アリアは「ゆ、幽霊ですか!?」と、目を丸くして叫ぶ。

 ミミリィも「幽霊こわい」と、耳をしおれさせる。


 だが、幽霊という単語に一番反応したのは、なんとロゼッタさんだった。


「ゆ、ゆゆ、幽霊だとッ!?」


 ロゼッタさんは椅子ごとのけぞり、顔面が蒼白になっていた。

 あれ?

 もしかして幽霊がダメな人?

 いや、幽霊が大好きって人は珍しいと思うけど、この反応はちょっと過剰だ。

 ……面白いことになりそう!


「ロゼッタさん。王立騎士団なのに、まさか幽霊が怖いとか?」


 俺はあえて直球で尋ねた。


「ば、馬鹿なことを言うな! そんなはずないだろう!」


 真っ赤になって否定してくる。

 ベタな反応。ありがとうございます。


「じゃあ、俺たちと一緒に幽霊屋敷を見に行きましょうよ。もしかしたら退治できるかも知れませんよ」


「い、いや……私もそろそろ職務に戻らねば……キミたちも幽霊屋敷のことは忘れて、まともな家を探すことをオススメするぞ! じゃないと遊びに行けないからな!」


「あれあれ? どうして幽霊屋敷だと遊びに来れないんですか? やっぱり怖いんですか?」


「違う!」


「じゃあいいじゃないですか。それに王都に幽霊屋敷があるなんて、問題だと思いませんか? これを解決するのも騎士の勤めだと思いますよ」


「くっ……さてはキミ、分かった上で言っているな!」


 ロゼッタさんは肩を怒らせて叫ぶ。


「はて、何のことですか? いいから、ほら。行きましょう」


「……分かった! ニヴレア王立騎士団ロゼッタ・ホーリーランスの名にかけて、その幽霊を退治してやろうじゃないか!」


 不動産屋の中でロゼッタさんは剣を掲げ、プルプル震えながら宣言した。

 完全にヤケクソだ。

 それを見たアリアとミミリィが口をそろえて「可愛い……」と呟いていた。

 うーむ。ロゼッタさんのキャラが残念系で固まってきた感じだぞ!

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