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28 羞恥心、とは

 紙袋に果物とかチーズとかを詰め、アリアとミミリィは帰ってきた。


「あれ、ロゼッタさんじゃないですか。お久しぶりです!」


「久しぶりだなアリア。と言っても、あれから一週間しか経っていないが」


 アリアとロゼッタさんは挨拶を交わす。

 なかなか親しげだ。


 一方ミミリィは、

「私を小さいとバカにした人」

 トゲトゲしい。


「べ、別にバカにしたわけではないぞ! というか、かなり根に持つんだなキミは!」


「私の前で身長と胸の話をしてはいけない」


「分かった。分かったら許してくれ」


「……許す」


 ミミリィはロゼッタの手を握り、ギュッと握手した。

 和解である。

 やはり平和が一番だ。


「ところで二人とも。ロゼッタさんが不動産屋まで案内してくれるらしいぞ」


「本当ですか? ロゼッタさん、前から思っていましたが親切なんですね!」


「見直した。ロゼッタいい人」


「そ、そんな大したことではない。騎士として当然のことだ!」


 アリアとミミリィに持ち上げられたロゼッタさんは、顔を真っ赤にする。

 可愛い。

 不動産屋に案内するのがどうして騎士として当然のことなのか全く分からない辺り、最高にキュートだ。

 そんなロゼッタさんをベッドに乗せ、俺たちは不動産屋に向かって飛んでいく。


「なんというか……思っていた以上に恥ずかしいな、これは。キミたちはどうして耐えられるんだ。精神力を鍛えているのか?」


 空飛ぶベッドは超低空飛行をしているので、俺たちの目線が歩いている人たちと変わらない。

 だからジロジロ見られる。

 実のところ、俺だって若干、恥ずかしい。

 しかし、うつむいてモジモジしているロゼッタさんが可愛いので、このまま飛んでいく!


「慣れですよ慣れ! そのうち気にならなくなります!」


 なんとアリアは気にしていないらしい。

 羞恥心が壊れてしまったのか。


「私は普通に恥ずかしいから寝る」


 ミミリィは布団の中に潜り、頭までスッポリ隠してしまう。

 しかし狐耳だけは外に出ており、ひょこひょこ動いている。


「こ、この耳は触ってもいい耳か……?」


 ロゼッタさんは狐耳を見つめながら、震える声で呟いた。

 王立騎士団ですら心を奪われるミミリィの耳。

 凄い!


「触ってもいいですけど、ミミリィが嫌がります」


「じゃあ駄目じゃないか……私はこれ以上、この子に嫌われたくない……」


 触れないと知ったロゼッタさんは、ガックリと肩を落とす。

 どんだけ触りたかったんですかい?


「ああ、テツヤ。ベッドをとめろ。あれが不動産屋だ」


「なるほど……入り口が大きいので、ベッドごと入れますね」


「本当に歩きたくないんだな……」


「ロゼッタさん。いちいち呆れるなんて初心者ですね! 私は逆に尊敬するようになりましたよ!」


「これほど羨ましくない自慢を聞いたのは久しぶりだ」


 なんてことを言い合いながら、俺たちはベッドごと不動産屋に入っていく。

 スタッフの人たちがギョッとした顔になる。


「大丈夫です。俺たちは怪しい者ではありません。いや、多少は怪しいかもしれませんが、真剣に部屋探しをしています」


「はあ……ではこちらへどうぞ」


 女性スタッフの一人がポカンとした顔で、俺たちに椅子を勧めてくれた。

 何が起きたのか分からないので、普通の客と同じように対応することにしたのかもしれない。

 それにしても、ベッドから椅子までの数歩すら面倒だなぁ。


 あ、そうだ。

 前に『浮遊』のスキルを習得したんだった。

 使ってみよう。


「あ、テツヤさんがついに空中浮遊を始めました! さすテツ!」


 アリアのさすテツを聞きながら、俺の体はふわふわ飛んで、ベッドから椅子へと舞い降りた。

 よーし、これで歩くことなく日常生活が送れるぜ!

 いや、ちょっとは歩いたほうがいいのかな?

 健康に悪い気がする。

 しかし、これだけレベルが高いんだから、運動不足とか関係ないのかも。

 ま、体に影響が出てから考えよう!

 そのうち、運動しなくても大丈夫なスキルとか覚えると思うし!

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