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25 イカ死亡

 俺たち三人は人間離れしたジャンプ力で飛び上がり、巨大イカに跳び蹴りを放った。

 その音速を遥かに超えた蹴りは、当たった場所だけでなく、イカの体全体に衝撃を与え、一撃でバラバラにしてしまった。

 今や海岸線は新鮮なイカの刺身で埋め尽くされている。


 あんまり美味しそうじゃないけど。


「……まさかキミたちがこんなに強かったとは」


 竜から降りたロゼッタさんは、俺たち三人を前に、少し緊張した顔になっていた。

 なにせ、あれだけ「私はニヴレア王立騎士団だ」とか「君たちには無理だ」とか偉そうなこと言っていたのに、いざ実戦となるとロゼッタさんは全く役に立たなかった。

 俺がロゼッタさんの立場だったら、砂浜に穴を掘って隠れるね。


 もっとも、実は俺たち三人のうち、真っ当な方法で強くなった者は誰もいない。

 俺は歩くだけでレベルアップするし、アリアもミミリィだってキスして一時的に強くなっただけだ。

 その効果時間もそろそろ切れる。


 だから、まともに修行してレベル70になったロゼッタさんが一番凄いんだけど……話がややこしくなるので、黙っておこう。

 というか、歩くだけでレベルアップとか、誰も信じてくれない。


「まあまあロゼッタさん。あなたがイカの注意を引きつけてくれたからこそ、俺たちはその隙を突いて攻撃できたんです。連係プレイですよ」


「そ、そうですよ! 気に病むことはありません!」


「これで私が小さくないと証明できたはず」


 いや、ミミリィは小さいと思うな。

 強さと身長はまるで関係ない。


「……キミたちは優しいな。私は自分の未熟さを思い知った。帰ったら、徹底的に鍛え直すつもりだ。それはそうと、お礼をさせてほしい。キミたちが受け取るはずだったクエスト報酬……いくらだった?」


「金貨四十枚ですけど」


「よし。それは私が払おう」


「ええ!? そんな悪いですよ!」


 そもそも、正式にクエストがキャンセルされたわけではないから、ギルドからも支払われるはずだ。

 ロゼッタさんからもらう筋合いはない。


「いいや、受け取ってくれ。今は持っていないが……必ず届ける。キミたちはどこに住んでいるんだ!?」


「いや、本当にいいですって」


 金貨一枚は日本円に換算すると、一万円から二万円くらいだ。

 つまり多く見積もると、八十万円にもなってしまう。

 騎士団の給料がいくらなのか知らないけど、ちょっと申し訳ない。


「よし、逃げよう。アリア、ミミリィ。ベッドに乗るんだ!」


 ホテルの料金は先払いしているし、着替えとかは全てベッドの収納スペースに入っている。

 このままベイルビアの町まで一っ飛びだぜ。


「こ、こらキミたち! 金を受け取れ! これでは私の気持ちが収まらん!」


 というロゼッタさんの声を聞きながら、俺たちはばひゅんと、町まで帰った。

 そして、海は楽しかったなぁ、という話をしながら、ぐっすりと休む。


「それにしても、ちょっと遊び足りなかったんじゃないでしょうか。ビーチバレーとか、スイカ割りとか、海のイベントはまだまだあります。ロゼッタさんはもう帰ってしまったはずですから、もう一度海に行きましょう!」


 アリアがそう言うので、次の日、俺たちはまたあの村にやってきた。

 まだ巨大イカの破片が片付け終わっていない状態だが、ロゼッタさんの姿はなかった。

 そこで俺はベッドに横たわり日焼けする。

 またアリアとミミリィは仲良く泳いだり、ビーチバレーをしていた。

 夕方にスイカ割りをして、夜は近くの墓場で肝試し。


「楽しかったですねぇ!」


 帰りのベッドでアリアがしみじみと呟く。

 ミミリィは遊び疲れて熟睡していた。

 俺は日焼けしすぎて全身がヒリヒリ痛い。

 レベルが高くても日焼けは痛いのか……回復魔術を使えば治るのかもしれないが、日焼けは海の勲章だ!

 このままにしておこう。


 そんな感じでアリアのアパートに帰ってきた俺たちは、数日をダラダラと凄し、冒険者ギルドに巨大イカ討伐の報酬を受け取りにいった。


「あれ? 報酬は金貨四十枚ですよね? 明らかに多いんですけど……」


 俺は受付嬢かわ渡された革袋を見つめながら言う。

 すると受付嬢は頬に指をあて、不思議そうに語る。


「それがね……私もよく分からないんだけど、ニヴレア王立騎士団のロゼッタって人が、あなたたちに金貨四十枚を渡してくれってギルドに頼んできたらしいのよ。こっちとしては拒否する理由もないんだけど……どうする? ちなみに、そのロゼッタさんは受け取り拒否してるから、あなたたちが断ったら、ギルドのものになるわよ?」


 ああ、なるほど。 

 俺たちは冒険者で、ロゼッタさんに名前を告げていた。

 となれば、特定は簡単だ。

 ギルドを通じて、金貨を送金してくるのは予測すべきだった。


「ど、どうしましょうテツヤさん! 金貨四十枚って、結構な大金ですよ!」


「くれるというなら、もらえばいい」


 アリアは狼狽し、ミミリィは平然と言う。

 ここは大人しくもらっておくべきかな。

 わざわざ冒険者ギルドまで使って送金してきたということは、ロゼッタさんは本気ということだ。

 受け取り拒否するのは彼女のメンツを潰すことになる。

 それに、王立騎士団というのは、如何にも給料が高そうだ。

 逆にこちらはフリーランスの冒険者。お金はいくらあっても困ることはない。


「ありがたく頂きます」


 ロゼッタさん、ありがとう。

 なんとなく、また会えるような気がするけど、あなたの気持ちは忘れません!

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