表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/46

20 海でまったり

 海の家が沢山並んでいる。

 しかし巨大イカのせいで観光客がいなくなったので、どこも店を閉めている。

 ようやく空いている海の家を一つ見つけた。

 店員のオバチャンいわく、俺たちがイカ退治に来ると聞き、開けておいたらしい。


「それに、店を閉めたって他にやることがあるわけでもないしね」


 オバチャンはうちわをパタパタやりながら、そんなことを言う。

 こんな綺麗な海が目の前にあるなら泳げばいいのに……と思ったけど、巨大イカのせいで無理なんだった。


「むむむ。さっきはラーメンを食べたい気分でしたが、焼きそばも捨てがたいです!」


「私も焼きそばと言っておきながら、ラーメンが食べたくなってきた」


「いっそ、両方注文してしまいましょう!」


「私もそうする」


「じゃあ俺も」


 というわけで、ラーメンと焼きそばを三つずつ注文してしまった。

 成人男性である俺はともかく、小柄な少女であるアリアとミミリィは食べきれるのだろうか?

 まあ、俺なんかより真面目に運動しているから、お腹が減っているのかもしれない。

 というか、俺が駄目駄目すぎる。

 あとで泳いで運動不足を解消しよう。


「はい、おまちどおさま」


 オバチャンはあっという間に俺たちの注文を持ってきてくれた。

 ラーメンは如何にもな中華そばだった。この世界に中華はないと思うけど。

 そして焼きそばもまた、ソース色に染まった麺。キャベツ。タマネギ。豚肉。そして紅ショウガと、俺のよく知っている焼きそばだった。


「美味しそうです!」


「両方頼んで正解だった」


 少女二人はテーブルの上に並べられたラーメンと焼きそばを見て目を輝かせる。

 ちなみに、ちゃんと割り箸もある。

 日本か、ここは。


「このラーメンと焼きそばってどこ発祥の料理なんだろう?」


 あまりにもファンタジー世界に似つかわしくなかったので、俺はさり気なく話題に出してみた。


「国の名前までは知りませんが、東方から伝わってきたと聞きます。東方のことはテツヤさんの方が詳しいのでは?」


 そういえば、俺は東方出身ってことになってたんだっけ。

 きっと東方には、アジアっぽい文明があるのだろう。

 だけど、いくらアジアに似ているとはいえ、俺は日本人だ。

 この世界の東方について深く突っ込まれても、何も答えることが出来ない。

 誤魔化さないと!


「うーん、東方と言っても広いからなぁ……」


「それもそうですね!」


 誤魔化せた。良かった良かった。

 安心したので、食べることに集中しよう。

 アリアとミミリィは既に半分以上食べている。

 凄い食欲だ。

 二人とも小さい体なのに、どこに栄養を回すつもりなのか。

 アリアはおっぱいに回すのかな? すくすく大きくなりなさい。

 ミミリィは……耳と尻尾かな?


「ふぅ、ごちそうさまでした」


「とても満足」


「最初は凄い量だと思ったけど、意外といけるもんだなぁ」


 俺たちはオバチャンに代金を払い、そして美味しかったと告げ、海の家をあとにする。

 浜辺に行くと、ロゼッタさんはまだ木陰から海を監視していた。

 お仕事、ご苦労様です。


 そして、そんなロゼッタさんを尻目に、俺たちは泳ぐぞ!

 海へ向けてダッシュ!


【レベル614になりました】


 おお、今日は沢山歩いたなぁ。

 更に泳いで、今までダラダラした分、運動するぞ。

 そりゃ、クロールだ! 平泳ぎだ!


「わー、テツヤさん、泳ぎが達者なんですね!」


「子供の頃、水泳教室に通っていたからね!」


「流石テツヤさん! さすテツ!」


 ただ泳いでいるだけなのに、アリアはいたく感心していた。

 一方ミミリィは、俺に対抗意識を燃やしたらしく、海に飛び込み、猛烈な速度で追いかけてきた。


「私だって泳ぎは得意」


 狐耳少女による犬かき!

 可愛い!

 なのに速い!


「おいついた」


「ミミリィは凄いなぁ」


「えへん」


 俺に褒められたミミリィは、どうやら喜んでいるらしい。

 しかし彼女の表情はいまいち分かりにくいので、断言は出来ない。


「私のドヤ顔、どうだった?」


「あ、今のドヤ顔だったんだ」


 普段の無表情と違いが分からなかった……。

 だが、そういうところもミミリィの面白いところだ。

 撫でてあげよう。


「くすぐったい」


 耳を触られたミミリィは、目を細めてトロンとした顔になる。

 モフったときの表情は分かりやすい。

 流石は獣耳!


「二人とも待ってくださーい。泳ぐの速すぎですよー」


 だいぶ遅れたアリアが、ぱしゃぱしゃと、あまり上手ではないクロールで追いついてきた。


「ひぃ……ひぃ……疲れました……溺れてしまいそうです……」


 アリアは顔を真っ赤にして、一生懸命泳ぐ。


「ここ浅いから、疲れたなら立てば?」


「……言われてみればそうですね!」


 アリアは恥ずかしそうに舌を出し、海の底に足を付けた。

 それから俺たちは水を掛け合ったり、アリアが上手に泳げるよう指導したりと楽しい時間を過ごした。

 そして疲れたのでベッドに横になり、夕日が沈む海を見つめる。

 うーむ、まるで楽園だ。

南の島に行きたい……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ