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18 女騎士さん現る

 そしてやって来ました、南の海!

 青い空!

 白い砂浜!

 立ち並ぶ海の家!


 なのに観光客が誰もいない!

 ビーチには俺たちだけ!


 何故か!?

 それは海に巨大イカが出現するからだ!


「貸し切りですよ、テツヤさん!」


 目的の村につくなり、いきなり宿で水着に着替えたアリアは、ビーチで嬉しそうに叫んだ。


「ワクワクを禁じ得ない」


 ミミリィも同じく水着になり、アリアの隣でそわそわしている。

 ちなみにミミリィの水着は、買ったときに尻尾用の穴を空けてもらった。

 おかげで可愛い尻尾が外に出て、嬉しそうに揺れている。


 俺も当然、水着になっている。

 しかし空飛ぶベッドの上だ!

 貸し切りの白い砂浜でベッドに寝転ぶ。

 うーん、究極の贅沢。


「いやいや、テツヤさん。せっかく海に来たんですから泳ぎましょうよ」


 アリアは不満げに言った。


「いやいや、皆さん。巨大イカの討伐に来たんじゃから、巨大イカを探してくれ」


 村長さんは不満げに言った。


 白くて長い立派なヒゲを生やした村長さんは、水着姿になってはしゃぐ俺たちの横に立ち、いつになったら仕事をしてくれるんだろうという瞳を向けているのだ。

 気持ちは分かる。

 分かるけど、遊びたいというこっちの気持ちも察して欲しい。


「探すと言っても村長さん。漁師の人たちは怖がって船を出してくれませんし。そもそも普段は海の底にいるんでしょう? 探しようがありません。現われるまでここで待つしかありませんよ」


 俺はちゃんとした理屈で答える。

 言っていることは真面目だけど、実際は探すのが面倒なだけだったりして。


「いや、まあ、そうなんじゃが……では巨大イカが現われたら絶対に倒してくださいよ。食われた観光客もいるんですから……早く退治してもらわないと」


「はい。任せてください」


 俺が笑顔で頷くと、村長さんは渋々という感じで去って行った。

 さーて。これで本当に俺たちだけだぞ。


「テツヤさん。今日くらいは観念して、ベッドから降りて遊びましょう!」


「……仕方がない。流石の俺も、この美しい海の魅力には勝てそうもないからなぁ」


 俺は砂浜に降り立った。

 素足にじゃりじゃりした感触が伝わってくる。


「テツヤさん、大地に立つ!」


「おおげさな」


「いえいえ。これはもう『降臨』と言っても過言ではありません! あ、いや、やっぱり大げさでした!」


 アリアは一人で盛り上がり、そして一人で冷静になった。

 忙しい子である。


「変なこと言ってないで、早く海に行こう?」


 ミミリィは待ちきれないという顔で俺たちを見る。

 耳と尻尾が有り得ないくらい揺れている。

 そわそわし過ぎて千切れそうだ。


「よーし、海まで競走だ!」


「望むところです!」


「よーい、どん」


「あ、ミミリィさん! 何を勝手にスタートしてるんですか!」


 ミミリィが一足先に飛び出し、それをアリアが追いかける。

 二人の可愛らしい後ろ姿を見つめながら、俺もスタートを切った。

 もちろん、本気は出さない。

 俺が本気で走ると、多分、砂が宇宙まで巻き上がる。というか、衝撃波で村が消滅し、摩擦熱で海が沸騰する気がする。


 なので手加減しまくったが、それでも新幹線くらいの速さは出ていただろう。

 アリアとミミリィをあっという間に抜き去り、海に飛び込む。

 バシャーン!

 気持ちいい!


【レベル500になりました】

【レベル・リースを習得しました】


 おお、記念すべきレベル500。

 しかし、今日でこの世界に来てから七日目だけど……まだ五百歩か。

 逆に凄いな、俺!

 ところで、このレベル・リースって何だろう?


「テツヤ、速すぎ」


「やっと追いつきました!」


 俺がレベル・リースの説明文を読もうとしたら、後ろから二人の少女が抱きついてきた。

 ムニッとしたのはアリアのおっぱいだろう。気持ちいい。

 ガチンとぶつかったのはミミリィの胸部だろう。早く大きくなれるといいね……。


「テツヤ、海って凄い。水平線、水平線」


 ミミリィは珍しくうわずった声を出し、海の向こうを指差した。


「端っこが見えません! 噂には聞いていましたが、海というのは本当に広いんですね……!」


 アリアも物珍しそうに海を見ている。


 そうか。この二人、海は初めてって言っていたな。

 この世界には自動車も電車もない。

 ちょっと移動するだけでも大変なのだ。

 まあ俺は、空飛ぶベッドという不思議アイテムがあるから、どこにでも行けるけど。

 あと、ドラゴンとか手なずければ、移動が楽そう。

 竜騎士とかいないのかな?


 なんて妄想していたら、空から竜騎士が降りてきた。


「……え、マジで?」


 海ではしゃぎすぎて幻覚でも見えたのかなぁ、と思っている俺をよそに、竜騎士は白い砂浜に降り立つ。

 竜の大きさは馬より少し大きいくらいだ。

 四本足で、ウロコの色は青。

 ちゃんと人が乗りやすいように、鞍や鐙、手綱が付いている。

 そして、その竜に乗っているのは、若い女性だった。


 年齢はおそらく二十歳くらい。

 燃えるような赤い髪が腰まで伸びている。

 かなりの美人だ。

 服装はラノベとかに出てくる女騎士みたいな感じだ。

 一応、鉄の胸当てに手甲、鉄のブーツを装備しているので、防御力はそこそこありそう。


「そこのキミたち。この海は危険だぞ。巨大イカが出るという話を知らないのか? 早く上がれ!」


 女騎士さんは竜に跨がったまま、海にいる俺たちに叫んだ。


「あー、俺たち、その巨大イカを倒すためにやって来た冒険者だから大丈夫です」


 俺がそう答えると、女騎士さんは難しそうな顔になる。


「なに、冒険者だと? この村は冒険者ギルドに依頼を出してしまったのか……あの巨大イカは一介の冒険者の手に負えるものじゃない。悪いことは言わん。命が惜しかったらこの仕事からは手を引け」


 女騎士さんの言う『一介の冒険者』というのは多分、レベル20~30くらいの冒険者のことだろう。

 アリアとミミリィがまさにそれだ。

 その程度のレベルでは無理だからやめなさい――と、そう言いたいらしい。

 表情はちょっと怖いけど、親切な人だなぁ。

 まあ、俺はレベル500だから大丈夫なんだけどね。


 それにしても、この女騎士さんは何者なんだろうか?

 ちょっとステータスを見てみよう。



名前:ロゼッタ・ホーリーランス

レベル:70

HP:301

MP:255

攻撃力:207

防御力:146

素早さ:172

幸運:98



 おお、強い!

 この人、滅茶苦茶に鍛えてるぞ。

 レベルの割に幸運が低いのが気になるけど……なんか油断しているとオークとか襲われそう。


「あ! もしかしてその服装……あなたはニヴレア王立騎士団の騎士様では!?」


 アリアは女騎士さんを見つめて叫ぶ。

 王立騎士団かぁ……どうりで強いわけだ。

 しかし、王立騎士団がわざわざ出てくるほど巨大イカって強いのか。

 確かにアリアとミミリィの身が危ないかもしれない。

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