01 きっとこれは夢!
今日は俺の誕生日だ。
ということで頑張った自分へのご褒美に、キングサイズのベッドを買った。
なにせ俺は寝るのが大好きだ。
寝具には拘りがある。
無駄に大きなベッドでゴロゴロするのが夢だったのだ。
さーて寝るぞ。
ゴロゴロ。
ああ、しかし。
明日の朝には、また会社に行かなければならない。
今日は誕生日ということで、頑張って二週間ぶりの休暇を取ったが……次に休めるのはいつだろう?
嫌だよー。
もう会社行きたくないよー。
始発から終電まで働くのは人間のやることじゃないよー。
何でまだ二十三歳なのにこんな社畜なんだよー。
ゴロゴロ。
なんて思ったところで意味はない。
夜更かしすればするほど、明日が辛くなるだけだ。
さっさと寝てしまおう。
幸いにも寝るのは得意だ。
ブレーカーを切るようにして意識を落とす。
これが俺の特技だ!
すやぁ……。
△
目覚めると、そこは森だった。
え、いや、ちょっと待って。
おーけー。確認だ。
まず俺は買ったばかりのベッドに寝ている。
ふかふかのマットレスと布団は健在だ。
枕もパジャマも拘りの一品。
しかし、天井がない。壁もない。
代わりに周囲一帯が森になっている。
木の葉の影から差し込む光の角度を見る限り、今は朝?
おお、会社に行かなければ!
って、そんな場合でもないな。
うーむ、これはどういう状況だ?
普通に考えたら絶対に有り得ない……。
ああ、そうか。
夢だ!
そう考えると全てに説明が付く。
会社に行きたくない一心で、こんな夢を見ているのだな。
なるほどー。
じゃあ、しばらくこの夢を堪能するか。
どうせ夢だ。体感時間も適当だろう。
幸いにも俺は、目覚まし時計が鳴れば一瞬で起きる体質だ。
寝過ごすことは……まあ、ないだろう。
よーし。
夢なら俺の思いのままのはずだ。
ベッドよ飛べ!
俺を乗せたまま飛べ!
って、いくら夢でもそこまで都合よくはいかないか……と、思いきや。
俺が寝そべっていたベッドは、ふわりと浮かび上がった。
すげー。
夢ってすげー。
明晰夢、最高!
このまま森を冒険するぞ!
それいけ空飛ぶベッド!