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イライラ!⁉︎

 今日の私は気分が優れない。

 別に体調が悪い訳でも、女の子の日という訳でもない。気になることがあるからだ。


 朝、起きた時に朝食の準備を終えて、やくやとごはんを食べようとしている時のことだった。


「お母さん。僕、ごはんいらない。ごめんなさい」


 そう言って、部屋に戻ってしまった。

 そう言えば、今朝のモーニングハグの時にいつもより少し熱っぽく感じたのだが、それ以外は普段どおりだったので、普通にごはんの用意をしていた。


 私も今日は試験があるから休みたいが、大学に行かなければならなかった。

 家を出る時には、さくやも学校に行く準備をしていたから、そのまま戸締まりをお願いして、私はいつものように大学に来ているのだが、気になって仕方ない。


 たしか、昔もこんなことがあったと覚えている。

 あれは、今でも恥ずかしい想い出なのだが、今回も我慢出来そうにない。


 横に座る深雪に答案用紙を渡して、教室を後にした。

 今回は解答を記しているので、あの時とは全く違う。

 我ながら、少しは大人に近ずいているのだろう。


 私は高校時代に同じことがあった。

 今より、確実にさくやは熱っぽくて、熱を計ると38度を超えていた。

 急遽、熱冷ましを飲ませて、母様に電話するが母が電話に出ることは無かった。

 しかし、今日は大事な中間テストの最終日であり、2科目しかないから少しだけ我慢してもらおう。

 幸いにも薬が効いたのか、熱は37度まで下がって来ているので、高校まで連れて行って、私室のベッドに寝かせておこう。


 そう、この高校には私の私室があるのだ。

 元々は、華の部屋と呼ばれて、優心女子学園の華という学校の代表の特別室だった。


 しかし、姉から私へと続いて優心女子学園の華という学校の代表に輝いているので、個人的な主観において私室とみなしている。

 今では、私が使うのが当然だし、昔みんなもそう思っている。


 さくやを学校に連れて行っても、保健室の先生にみていて貰えば、なんとかなるはずと考えた。


 今日は英語と数学の2科目。


 1限目の英語を10分で解いて、さくやの看病に戻ったのだが……。


 保健の先生の話では、インフルエンザの疑いが有るので、早めに病院に連れて行く必要があるとのことだった。


 あと、1科目だけで終了なんだけれど……。


 私は2限目のベルが鳴ると解答の名前欄にサインして、問題を読んだ。


 …………長文問題ばっかじゃない。


 解けない問題なんて私には皆無なのだが、それでも20分以上はかかりそうだ。


 どうしよう?

 さくやも『はぁはぁ』って息を荒げていたし、一刻も早く病院に連れて行きたい。


 既に玄関にはさくやを乗せた救急車が待っているし、私が来るのをさくやは待っている。


 ああっ、決断しないと。



『………………』


「先生っ、わたしの解答用紙に丸をつけておいてください。急用だから、後で答えを書きます」


 言うや否や、私は教室を後にして駆け出していた。

 教室の中は静まり返り、誰もが理解するまで時間が掛かったみたいだ。


 後から、深雪から言われた。


「一夜。あんたね、先生が動揺してたわよ。

 先生も先生だけど試験中なのに、私の邪魔して『姫方さんは、私に100点にしとくように言ったんだよね?』なんて聞いてくるんだから……。

 みんなも後から意味がわかって、姫方様はさすがですねって言ってたけど。普通、あれはないでしょう? あんたはバカ?」


「深雪、ごめん。さくちゃんがお熱出したから仕方なかったの」


「やっぱり、あのガキんちょか?!」


「うん。私の理由にはそれ以外にあり得ないもん」


 あの時のおバカな行動がフラッシュバックする。

 週末に配られた数学の解答用紙に鉛筆で書かれた文字は私のサインだけで残りは空欄だった。


 その空欄には全て丸が付いていて、名前欄の横には100点と記されている。


 未だこのことは伝説として私の母校では伝えられているらしい。





 私も昔は本当に無茶をしたものだ。

 教室近くのエレベーターに乗り込む前に電話する。

 もちろん母様ではない。

 篠田さんのお家に。


 3コール目で出てくれた。

 たぶん、予想していたみたいだ。


「あら、やっぱり一夜さんですね。

 さくや君のことですよね。

 大丈夫です。

 娘がさくや君がいないと知って、帰って来ましたから、すぐにうちの病院の医師には見せました。

 ただの風邪らしいですから、安心してください。

 もちろん、今は娘が側にいますのでゆっくりお帰りください」


「はぁ、沙由里ちゃんは学校は良かったのですか?」


 たぶん、沙由里はそうするだろうとわかっているが、一応の社交辞令として聞いてみる。

 それも気の毒そうに。


「沙由里が好きでしてますし、学校なんて私達は気にしてません。それよりもさくや君が心配ですから」


「じゃあ、1時間程度で帰って来れますから、よろしくお願いします」


「いえいえ、そんなにお急ぎにならなくとも、大丈夫です」


「はぁ、それではお願いします」


 どちらかというと、さくやの病気よりも2人の関係の方が心配だ。

 さくやはまだまだ子供と思うが、沙由里ちゃんはかなり積極的だし、私に似てる。


 さて、時間が出来たからカットでもして帰ろうかな。

 少しは2人きりにしてあげるのも母親の務めだよね!

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