番外 戦闘員K
短いです
しかも、ただの主人公の紹介です
普段は主人公の一人称視点ですが、今回は三人称視点になります
戦闘員K
突然異世界に召喚されたその男は、彼を召喚したこの世界『多重多層世界リーフス』において、奇抜としか言いようのない出で立ちをしていた。
顔は目の部分だけ穴の空いた白い面に覆われており、白の手袋とブーツを身に付けている以外は、頭の先まで黒の全身タイツに身を包み、金属製のベルトを巻いているだけだ。
体格はガッチリと引き締まった筋肉質なものだが、背丈は170cm程と高いというわけではない。
彼は、元の世界では『悪の組織』または『悪の秘密結社』と呼ばれる組織に所属していた。
組織の改造手術を受けて五年、手術前からも合わせると今年で三十歳になることになる。
福岡県北九州市で一般家庭に生まれたが、六歳のときに、『正義の味方』と『悪の組織』の戦いに巻き込まれて両親を喪った。
戦っていたのは、当時その地域で最強といわれていた機械腕を持つ三人組の『正義の味方』アームド・アーム、『悪の組織』は蟲を使う小組織だった。
その後は孤児として同じような境遇の子供たちと共に国の施設で育った。
他の子供たちが『正義の味方』に憧れ、自分たちも『正義の味方』や、その『サポーター』を目指す中、両親を喪ったときの「とある出来事」によって、むしろ『正義の味方』を憎んで成長した。
学生時代は『反正義の味方』を隠して成長したが周りとは馴染めず、いじめなどは受けていなかったものの独りで漫画やライトノベルを読んでいることが多かった。
同好の士は何人かいたが、『反正義の味方』という根本が他と違うこともあり、特に仲のいい友人などができることは無かった。
無事に社会には出たものの、『正義の味方』を歓迎する世界を受容できず、高校を卒業後に入った会社を一年で辞めてしまった。
一年程職を転々とした後に『幻影帝国ファントム』に就職した。地域でいくつかある『悪の組織』の中で『幻影帝国ファントム』を選んだのは、他の『悪の組織』が「世界征服」を目標とするのに対して、『幻影帝国ファントム』は今ある世界を自分たちの理想とする世界で塗り替える「世界改変」を目標としているからだった。
『幻影帝国ファントム』に入ったものの、初めはフロント企業である玩具メーカー『有限会社 遊幻』に所属することになった。
広報部、開発部にそれぞれ二年所属し、『悪の組織』としての技術を使い商品化した、所有者の精神力をフィードバックして能力を上げる玩具や、同じく精神力が引きに影響を与えるカードゲームなどを販売し、資金と「世界改変」のための力を稼ぐ手伝いをした。
その後、準戦闘員として一年『悪の組織』としての教育を受けた後に、戦闘員としての改造手術を受けることになった。
改造の際の適性検査で高い適正を見せたことで、上級戦闘員への改造を受けることができ、所属も一般人相手に破壊工作を行ったり正面から『正義の味方』と戦う「作戦・戦闘班」ではなく、普段は幹部である四天王のの護衛をしつつ、他の『悪の組織』や『正義の味方』を襲撃する「特務・護衛班」に配属されることになった。
ちなみに、改造を受けた後に『幻影帝国ファントム』が何年か前に、全盛期の力を失っていた『アームド・アーム』を倒していたことを知ることになった。
流石に、大組織と言われるような『悪の組織』とは抗争を起こさなかったとはいえ、改造後の五年間だけで、単独で七つ、他の「特務・護衛班」のメンバーと協力して二十を超える中小規模の『悪の組織』を壊滅させ、下位の『正義の味方』三十近く、中位のそれでも五組を殺害・捕獲してきた。
ただそのことで目立ってしまい、近隣だけでなく全国から数組の、上位といわれる実力の『正義の味方』が合同で討伐計画を立てるという事態を招いてしまった。
戦闘員Kが召喚されたのは、その討伐計画への対策会議のために首領以下、四天王や上級戦闘員までが全員集まったところだったのである。
そして現在、彼は与えられた客室の一人掛けソファに行儀悪く腰かけて、どこからか取り出した元の世界の本を読みながら返事を待っているのだった。
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