帰り道
2027年 4月11日 PM6:50
「すまんな、ちょっと遅れたわ」
校門で待っていた輝夜は眠そうな目をしていた。
「うんうん、私も今来たとこ!」
「そうか、なら帰ろうぜ。もう暗くなる」
「うん!」
横からついてくる輝夜はテニスの服を着ている。お似合いだな。
歩く。
「なぁ、輝夜?今日の部活は楽しかったか?」
「うーん…まぁまぁ!」
「そうか………」
おいおいおい、何を喋ればいいんだよ。帰り道だぞ!家だと普通に会話出来るが帰り道では訳が違う。まず話題がわからない。ってか普通はやっぱり妹と下校するやつなんかいないだろ。高校生と中学生だぞ。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「な、なんだ?」
「もし………人間に羽が生えたら、どうすると思う?」
輝夜は目を閉じている。
「そりゃ……飛ぶだろ?その生えた羽で」
「やっぱりか………じゃお兄ちゃんならどうするの?」
少し沈黙が続く。
「飛ばないな」
「なんで?」
「だって………意味ないだろ。空を飛べても何も変わらない。もし遠くに行きたければ車や飛行機を使えばいいだろ」
「やっぱりね。思った通りだよ!お兄ちゃんわ!」
輝夜は笑う。
「なら輝夜ならどうするんだ?」
「うーん…………私なら飛ぶかな。何か楽しそうだし」
「ふーん」
俺は片目を閉じた。
2027年 4月11日 PM9:55
俺の部屋に本をめくる音とイヤホンから漏れる音が響く。
その音は懐かしく悲しくなる音に似ている。いや違うな。そんな音は本当はない。俺が勝手に作り出した音。その音とよく似ている。
「はぁぁぁぁー」
深くため息をつく。特に意味もないため息。
その時、部屋のドアが勢いよく開いた。
「お、お兄ちゃん!何かリビングに置いてある!」
何か?虫か何かのことか?まぁとりあえず見てくるか。
「どこに置いてあるんだ?」
「リビング!さっきお茶とりに行ったら置いてあったの!」
階段を降りる二人の速度はいつもの二倍はある。いや三倍かな?
「動くのか?」
「わかんないけど虫とかじゃないよ」
その声を聞き俺はリビングのドアを開けた。
ドアを開け目の前にはソファ。その左隣に机。さらにその左にテレビ。ソファの左隣に一枚壁がありキッチン。ぱっと見は普通だな。
「ど、どこにあるんだ?」
「キッチンの所」
俺は恐る恐る覗いてみた。
「う……ん?」
目の前には丸くて光る、そうビー玉みたいな………。
「こ、これか?」
「うん、ビー玉みたいでしょ。でも私さっき触ったけど重いの!」
重い?
俺はビー玉みたいな玉に手を伸ばす。そして摘まむ。後は上に……。
「あれ、持ち上がらねぇ……」
俺は力一杯持ち上げる。しかし動かない。
あれ?
何か横にスイッチが………。
ポチ。
目の前が光る。
とっさに俺は輝夜の手を握りしめた。