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俺式異世界冒険譚!  作者: 明智 烏兎
最終章 ~俺式オープンエンド!~
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いざ、四神忍者の里へ

「アポカリプス復活を企む咎人の集団、四神忍者……うぅ~~~っ、許せない! 絶対にやっつけてやるんだから! ねっ、カエデ」

「ん~? あぁ……まぁ、そうだなぁ」


 打倒四神忍者に闘志を燃やすルナとは対照的に、俺は気のない返事をする。そんな俺に、


「どうしたのお兄ちゃん? 悪い人は成敗しなくちゃ!」


 と、セイラが小さな拳を握ってシュッと前方に繰り出した。

 悪い人は成敗……それには俺も大賛成だ。が、一体誰が悪者なのか、そいつを見極める必要がある。

 俺はどうも、あのサイガとかいう陰陽師の言う事が信じられない。ただ、四神忍者の素性が知れない以上、サイガが怪しいとは言い切れないのも確かだ。


 辿り着いた神威には、至る所に御触書が立っていた。

 その内容はいずれも四神忍者への警戒を呼び掛けるもので、隠れ里の情報提供者には謝礼を出すとも書いてある。

 町人に四神忍者の事を尋ねても、


「こんにちは旅の人」

「神威の町へようこそ。ここの温泉は最高ですよ」

「町の外を歩いていると、やがて夜になりましょう」

「武器や防具は持っているだけじゃ意味がないぞ。ちゃんと装備しないとな」


 などと決まった台詞を返すばかり。

 こ、これは一体……俺達はいつの間にか、RPGの世界に迷い込んでしまったのか?


「こりゃ駄目だな。アポカリプスもアレスも、四神忍者についても何一つ聞き出せそうにない。この人達、何でこんな事になってるんだ?」

「な~んか、変な感じ。ウチにはここのみんな、操られてるみたいに見えるんだけど」

「きっ、ききききっと四神忍者ですよぉ~~! 人の心を操る術、あわわ、何て恐ろしいぃ~~……」


 ミリーとリースの予想は、いい線いってると思う。町の人達は十中八九、何者かに操られているのだろう。ただ、その犯人が四神忍者かどうかまでは断定できないな。


「そこのご一行、お待ち下され」


 ふと、どこからともなく少女の声が響いてきた。が、姿はない。まさか……また陰陽師か?


「な、何奴!?」


 俺はきょろきょろと辺りを見回し、声の主を誰何する。今回は声がするまで全く気配が読めなかった。以前の陰陽師、サイガ以上に隠れるのが上手いようだ。


「こちらにござる」


 ボコッ! と、ルナとコロナの足元から二本の腕が生えてきてその足首を掴んだ。


「きゃああああぁぁぁッッ!?」


 ドゴッ! ガスッ! バキッ! グシャッ! ……数十発の肉が打ちのめされる音が、周囲に痛々しく鳴り響いた。



 ────。



「……おどろがぜで、ずまないでござる……」

「い、いえいえこちらこそすみません! 魔物かと思っちゃって……」


 ボコボコにされた少女と、ボコボコにした少女達が同時に頭を下げる……何とも奇妙な光景だ。

 にしてもこの女の子の服装……雪色のミディアムヘアを引き締める黒い鉢巻き、首には白いマフラー、黒網シャツの上に露出の高い黒装束を重ね、手甲を装着。黒い網ニーソに白足袋、草履、そして背負う日本刀……。


「お前、四神忍者だな?」

「なっ、なにゆえそれをッ!?」

「見れば分かるわっ! そんなコテコテの忍装束で町をうろついてたらな!」

「……何とした事……これは意外な盲点でござった。ならばこれからは覆面も着用し、しっかりと素性を隠すでござる」

「いや、それ忍者としての完成度を上げるだけだから」


 俺の突っ込みに忍者風の女の子は「拙者とした事が」と呟いてコツンと自分の頭を叩いた。


「まぁ、貴殿らに隠し事は無用でござろう。拙者四神忍者が一人、“シオン”と申す者。守護神“玄武”を司ってござる。拙者、異国の者である貴殿らに忠告をしたく参上仕った次第」

「忠告?」

「左様。貴殿らは知りますまい、あの憎き陰陽師共が為さんとする非道な行いを……」

「ちょっと待って」


 その時、鬼の形相で指の関節をボキボキ鳴らす(けど鳴ってない)ルナが、シオンに詰め寄ってきた。


「非道な行いをしてるのはあなた達四神忍者の方でしょ? さぁ! アポカリプスを返しなさい! それとこの町の人達を操ってるのもあなた達なんでしょ? すぐ元に戻しなさい!」


 地を踏み鳴らして叫ぶルナ。その言葉にシオンはキッとルナを睨み返し、後方に跳躍して一気に間合いを離す。


「拙者らがアポカリプスを……? それはどういう……」

「とぼけないで。陰陽師のサイガさんから全て聞いてるんだから。もう一度だけ言うわ、アポカリプスを返しなさい!」

「おのれ陰陽師共め、我らを悪に仕立てるつもりか……む? ご貴殿、今“アポカリプスを返しなさい”と申したようでござるが、ひょっとして」

「そうよ! 私の名前はルナ・ルーラント。ルーラントの名を知らないとは言わせないわ。私達は盗まれた降魔剣アポカリプスの行方を追ってここまで来たの。あなた達四神忍者がアポカリプス復活を目論んでいる事も、すでに調査済みよ」

「それは違いまする! アポカリプス復活を企てているのは陰陽師の方でござる! 何卒……何卒信じて下され!」


 ルナとシオンの間に緊迫する空気が流れる。このまま睨み合いを続けていても埒が明かない。となれば……。


「……分かったよシオン。君の言う事をまだ信じたわけじゃないけど、陰陽師の話を聞いておいて忍者の話は聞かないってのも不公平だ。詳しい話を聞かせてほしい」

「ま、真でござるか!? 何と器の大きなお方……名は何と?」


 そう言えば自己紹介がまだだったな。ついでだし、ここで全員の挨拶を済ませてしまおう。

 俺達はそれぞれの名前をシオンに告げていく。思えばよくここまで人数が増えたもんだ……全員の名前を一気に覚えるのは無理があるかもしれないな。


「かたじけのうござりまする! ではカエデリーナ殿、我らが隠れ里へご案内致しまする」


 やっぱ覚えられなかったか……道すがら、もう一度自己紹介し直そう。


「ちょ、ちょっとちょっとカエデさんっ! い、いいンですか、このままついていっちゃってぇ……わ、罠かもしれないンですよ?」


 不安そうな顔で俺のマントを引っ張るリース。


「確かに罠って可能性はある。けど俺は、陰陽師より忍者を信じたい」

「そ、それは何でですかぁ?」

「あんなメタボ陰陽師より、こっちのクノイチの方が可愛いからだ! 文句あるか!!」

「さ、こんな馬鹿ほっといて行きましょうシオンさん。四神忍者の隠れ里へ、レッツゴー!」


 足早にその場を去っていく俺以外の面々。


「フッ、計算通り。今みたいな言い方をすれば隠れ里行きを反対する人はいなくなるだろうと踏んで、あえて馬鹿な発言をしたのだ! ……決して本心じゃないぞ?」

「ミュミュッ!」


 俺の言い訳に反応してくれたのは、結局ミューだけでしたとさ……とほほ~。

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