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俺式異世界冒険譚!  作者: 明智 烏兎
第七章 ~魔の森の三姉妹~
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戦闘準備は万全?

 弓士の少女・“リース”を新たな仲間に加えた俺達は、その日の内に船に乗り込み再びガルツァーク大陸を目指した。


「ああのっ! カエデさんってどこから旅を始めたんですかっ?」


 なるべく酔わないように甲板の後ろの方で海風に当たっていた俺を見つけて、リースがそんな事を尋ねてきた。


「どこから? ん~そうだなぁ……ルナの屋敷から……いや、厳密に言うなら、やっぱ地球からって事になるのかな」


 そう答えると、リースは頭に疑問符を浮かべて聞き返してきた。うん、丁度いい。他のみんなにはもう話したから、リースにも俺の事を知ってもらおう。


「リースも簡単には信じられないだろうけど……実は俺、グランスフィアの人間じゃないんだよね。つまり、異世界から来た人間なんだ。地球って言うんだけど……そこからある日突然こっちの世界に来ちゃってさ、それから色々あって今はルナ達と旅をしてるってわけ」

「えええッ!? それ本当ですかぁっ!? はわわ、どうしよ……わわ、私っ、その、それ、そういうの好きなんです! い、異世界とかそういうのにずっと憧れてて……よければ、詳しいお話を聞かせてもらえませんか!?」


 目を輝かせて俺の話に食いついてくるリース。特に断る理由もないし、俺はせっかくだから他のみんなも集めて、地球の事を詳しく話してみようと思った。話題は尽きる事なく、むしろガルツァークに着くまでの二日間だけでは話し足りないほどだった。また、話をしていたお陰なのか、今回は船酔いせずに済んだ。これから馬車での旅が待っている事を考えると、本当に良かったと思う。


 でも、俺としてはリースの話ももっと聞いてみたかったな。話の合間に聞き出せたのは、リースの趣味くらいだ。見た目通り少女趣味全開のリースは編み物と読書をこよなく愛する女の子で、編み物をする理由は作ったマフラーやセーターを誰かに渡すシーンを想像するのが好きだからだとか。しかもその妄想はかなりのレベルでぶっ飛んでいて、マフラーを渡すシーンからベッドシーンまで瞬時に脳内で再生されている模様。なので俺はリースの趣味の中に“エロい妄想をする事”という項目をこっそり書き加えておく事にした。


 勝気で博識、ときどき天然なツンデレ少女・ルナ。

 人間だったらきっと美少女だと思うアガムキメラ・リピオ。

 天真爛漫な妹属性ボクっ娘・セイラ。

 人間だったらきっと美少女だと思う白馬のような魔物・ミュー。

 感情を失くした薄幸のミステリアス少女・ティリス。

 グラマラスボディに夢見る乙女の心を宿す弱腰少女・リース。

 うむ……俺もいつの間にかハーレムを築きつつあるようだな。このままさらに人数を増やして、全員と仲良くなれたら……おっと、リースにつられて俺までエロい妄想をしてしまった。全くリースの奴め、紳士たるこの俺にエロい妄想をさせるなんて、いけない子だ。けしからん……実にけしからんなぁ……ムフフフ……。


 それからまたミューに無理を言って馬車を飛ばし、行きの時と同様に三日で魔の森まで帰って来る事ができた。森の入り口付近にリピオの姿がなかったので一瞬焦ったが、森の中からリピオが戻って来て無事な姿を見せてくれたので、とりあえずは一安心といったところか。

 どうやらリピオは、丁度ハーピー達の様子を見てきたところらしい。


「まだ三羽とも中にいるって。でもケガはもうほとんど治ってきてるから、もう少し遅ければ逃げられてたかも」


 ルナの翻訳にリピオが頷く。


「そっか、間に合ってよかった。よし……じゃあリピオ、案内を頼む!」


 ──魔の森は昼だというのに薄暗く、ジメジメとした不快な空気が漂っている。試しにアガムを使おうともしてみたが、本当に使う事ができなかった。

 頼れるのは剣だけか……。俺は不安になりかけた気持ちを振り払うように拳を握り締め、弱気な心を奮い立たせた。


 それからしばらく奥に進んでいくと、前方に開けた空間を見つける。そこの地面には、なぜか穴が掘ってあった。何だこりゃ? ハーピー達が掘ったのか? 俺達を落とし穴にはめようと思ったのか……いや、魔物風情にそんな知能があるとは思えない。


「グルルゥゥ……!」


 その時、先頭を行くリピオが立ち止まり小さく唸った。


「いよいよか……みんな、準備はいいか?」


 背負っていた祭祀剣ソーマヴェセルを鞘から抜き放ち、俺は静かに言った。ルナは杖剣アルヴィスを、セイラはアスラート王から授かった雷樹槍アラドヴァルを、ティリスは何の変哲もないダガーをそれぞれ構えた。だがリースだけは武器を構えず俺の服を掴んできた。


「俺はリースの武器じゃないぞ」

「そ、それは分かってますけど……ちょっと心の準備が……」


 緊張しているのか、かなり強張った表情で返してくるリース。俺は深呼吸して落ち着くように提案し、リースがその気になるのを待った。

 俺にはリースの今の気持ちが手に取るように分かる。なぜならリースは、俺に似ているからだ。そう……地球にいた頃の俺に……。


「はぁ~~……ああの、深呼吸は終わりましたぁ」


 幾分表情の和らいだリースの報告に、俺は頷いて答える。


「よし、じゃあいくぞ」

「ままま待って下さいぃぃ! まだ準備体操が……あと精神集中もっ」

「あ……あのなぁリース……」

「ひうっ!? い、いやぁ、やっぱり何でもないですぅ~、あはは……いっ、行きましょうっ!」


 呆れる俺達の視線を浴びて、苦笑いしながら言うリース。きっと、待ってたって覚悟なんかできっこない。やるならぶっつけ本番、一発勝負。俺達みたいな人種はさ……結局追い詰められるまで変われないんだよ。そうだろ? リース!


「行くぜ、みんな!」


 俺の闘志がみんなに勇気を与えるようにと、俺はできる限り緊張を押し隠して戦場へと飛び出した。

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