アリアの魔力
不快な思いをした方はすぐに読むのを辞めてください。すみません。
お昼が終わり部屋で1人休憩しているアリア。そこで
「アリア、ちょっといいかな」
父の声だ。
「はい、どうぞ」
アリアの返事を聞き中に入る王。
「午前中はご苦労だったな。疲れてないか?」
「うん、ちょっと疲れたけど大丈夫」
「そうか。それならいいんだが」
「うん?」
少し父の様子がおかしい。何かよそよそしいし、あまり視線を合わさないようにキョロキョロしている。
「お父様、何か用があって来たんじゃないの?」
その問いに少しビクッと反応する父。やはり何か怪しい。
「あ〜っとだな。その〜・・・」
父の答えを待つがいっこうに答えが帰ってこない。帰ってくるのは「あ〜」とか「うん〜」とか「その〜」だけだった。
「もうー!用があるならはきっり言ってよ!」
じれったくなり声を荒げる。
「はっ、はいーーー!」
娘の急な怒鳴り声に驚いてしまう。こういうところは妻のエリザベスに似ていると思ってしまうアーサー王。
「ええ〜〜〜と、・・・アリア・・・すまん!」
弁解の言葉と共に両手を突き出す。
「?・・・これって・・・ドラゴン?」
王は両手にドラゴンを持っていた。しかし、そのドラゴンはピクリとも動かない。
「・・・のぬいぐるみ?」
一応、アリアは受け取ってみる。
「その〜、誕生日プレゼント、ドラゴンの赤ちゃん欲しいって言ったから捕まえようと思ったんだが・・・本当にスマン!」
深々と頭を下げる王。人前では見せられない姿。
「・・・うふっ、もういいよ。謝らなくていから。ただ無茶なお願いしてお父様を困らせたかっただけだから」
あまりにも情けない父の姿に思わず笑ってしまった。
「本当か?なら違う物を渡そう。何がほしい?」
「ううん。何もいらない」
「しかしだな〜・・・」
「ホントにいいね。わたしはこの子がいいの」
そう言ってさっき貰ったドラゴンのぬいぐるみをギュッと抱きしめる。
何か言いたそうにしていたがそんなかわいらしい娘を見て言葉を飲み込んでしまう。
「そうか。アリアがそういうならそれでいい。アリア」
「なに?」
「誕生日おめでとう」
「うん、ありがとう。お父様」
その言葉言った後、父は部屋を出ていった。
部屋に静寂が戻ってきた。ぬいぐるみを抱きしめたままアリアは少し淋しい顔になっていた。
日は暮れ辺りは闇に包まれ始めた。
城のエントランス赤絨毯を抜けた先にあるホール。ダンスホール。周りはガラス張りになっていて外の風景を眺めることができ町の家に明かりが点りとても綺麗な夜景となっている。
ホールの中にはきらびやかに着飾ったドレス姿の婦人とその娘達。男性はタキシードでビシッと決めている。
ざっと見ても何百人いや、何千人はいる。それほどこのエントランスは広かった。ダンスもするのでこのくらいが丁度なのかもしれない。
辺りでは久し振りの再会挨拶や御偉い様方に媚び売りなどの雑談をしている。後は主役が登場するのを待つだけとなっていた。すると
「皆さん。今日はお忙しいなか我が娘 アリアンティアの誕生パーティーにお越しくださいまして誠に有り難うございます」
王がホールの出入口から姿を表し挨拶が始まる。隣には女王が付き添う。
扉を隔て上の階にアリアはスタンバイしていた。ダンスホールから父の声が聞こえる。
「うぅぅ〜、始まっちゃった」
アリアはダンスホールの手前の扉にスタンバっている。
「アリアンティア様。緊張なさらずいつもどうりで大丈夫ですよ」
老執事のセバスチャンの言葉。
「うん。わかってるよ」
分かってはいるがそれだけで緊張が完全に抜けることはなった。
そんなアリアを見てセバスチャンは思う。いや、思っていたことが口から出てきてしまう。
「アリアンティア様。本当に大きくなられましたね」
セバスチャンはアリアが生まれた時からお世話をしてきた。毎年の誕生パーティーで思うこと。
「それにとてもお綺麗になられて・・・爺はとてもうれしゅうごさいます」
と言ってセバスチャンはハンカチで涙を拭う。
「も〜、泣かないでよ。別に何処かに行く訳じゃないんだから」
「あぁ〜、アリアンティア様に慰めて貰う日が来ようとは。アリアンティア様が生まれた時のことを爺は昨日のことのように思い出すことができます。小さかったアリアンティア様がこんなに・・・ご立派になられて・・・爺は、爺は・・・」
お嫁にいく父親のように泣きじゃくっている。
「も〜誕生パーティーでこんなに泣く人いないでしょ。早く涙を拭いて爺や」
なんとかセバスチャンを宥めるアリア。
「あっ、ありがとうございます」
自分の成長を泣くくらい喜んでいるセバスチャンを見てアリアは思う。
(ここに生まれてきてホントに良かった)
アリアは心の底からそう思った。
だから、見てもらおう。自分がどのくらい成長したのかを。皆に見てもらおう。アリアは強く思った。
「それでは私の話はこの辺にして今日の主役を呼びましょう。この世界の女神 アイリスの力を受け継いだ我が娘 アリアンティアです」
拍手と共に照明が徐々に暗くなっていく。
アリアが待機している扉が開かれる。
「アリアンティア様」
セバスチャンからの合図がある。
「うん!・・・よしっ!」
周りに気付かれない程度に元気な声で返事をし気合いの掛け声。
その後アリアは神に祈る様に目を閉じ両手を合わせる。アリアの周りに魔力のオーラが集まる。しかし、そのオーラの色がどの属性のにも属さない黄金色。
通常、魔法を使えばその属性の魔法光を発する。炎ならば赤。水なら青。
アリアの得意属性は光ではあるが光の魔法光は白である。
その謎の魔力を溜めていき次第に背中へと集まる。そこでアリアは飛び降りる。来客がいる、父がいる1階へと飛び降りる。
誰もが想像する嫌な予感。
しかし、その予想は見事に外れることとなる。アリアの背中には2枚の黄金の翼が生えている。
翼をはためかせゆっくりと降下していく。その光景は女神がこの地に舞い降りたようだ。
「アリアンティア様。お綺麗ですわ」
「女神様」
「女神様の魔力。神々しいですわ」
「さすが女神様」
などの声が聞こえる。
女神の魔力。それはこの世界を創ったされる女神 アイリスの魔力。アイリスの魔力は十年に1人、百年に1人の確率で継承し生まれてくる。ごく稀に一般の家庭の子供に継承されることもあってその国の王が養子にするともあるがアリアは正真正銘、アーサー王とエリザベス女王の実の子である。
アイリスの魔力の証明となるのが黄金の魔力。属性に限らず魔法を発動させれば魔法光は黄金に輝く。アリアが正真正銘この時代の継承者である。アリアは拍手とともに1階の地に足を着ける。アリアの演出はこの国にはたしかに女神がいるということを見せつけてのことだ。
翼が光りの粒子を残し消え父と母の傍へと駆け寄る。今度のドレスは青を基調とした物になっていて昼間よりも大人っぽくしている。
「え〜っと、今日はわたしの誕生パーティーに来てくださってありがとうございます。まだまだ未熟なわたしで色々わな人達に迷惑をかけてきたと思います。しかし、皆様のお陰で今日まで生きることもできましたし成長してこれたと思っています。これからも迷惑はかけると思いますがこれからも暖かい目で見守って頂ければ嬉しく思います。今日は本当にありがとうございます。パーティーは始まったばかりなので楽しんでいってください」
また拍手が起こる。
「アリア〜、立派になって〜」
「あなた!」
娘の挨拶に思わず涙が滲んでしまう王。
「アリアンティア様〜」
「セバスチャンまで〜!」
上を見ればセバスチャンが号泣している。女王は大きなため息が出る。
そんなこんなでアリアの挨拶が終わりまたホールに賑やかな雰囲気が戻る。
アリアは両親と一緒に個人個人に挨拶をしに回っていく。昔からよくしてくれている人達からは心の篭った言葉が「ありがとう」贈られ話しが弾む。
しかし、中にはアリアの・・・女神の存在が目的でアリアに自分の息子を無理矢理紹介する者。王に気に入られて政略結婚を狙う者もいた。
アリアも分かっているが嫌われない程度に軽く流す。
王の方は言わなくても分かるがアリアのことを1番に考えている為、間違った相手を選ぶはずがない。その前に「結婚なんぞ断じて許さーん!」などと言って結婚を認めなさそうである。
パーティーは滞りなく進んでいく。何も起こらずにパーティーは楽しいままで終わるはずだった・・・
城の1番高い場所。夜の闇に黒マントがはためく。 「そろそろ頃合いか」
そう言って指を鳴らす。その音だけが辺りに響く。
パーティーも中盤に差し掛かった所それは突然にやって来た。最初はごく小さいものだったが次第に大きなものへと変事ていく。
「えっ?」
アリアだけでなく客人も気付き始める。その揺れに。
「・・・また、地震?」
最近になって頻繁になりだしていた。
「そういえば・・・昨日も揺れていたな」
アリアの小さな呟き。多分、他の客人達も思ったことだろう。昨日は日が沈む頃に1度あった。
「皆様。少し揺れていますが時期に収まるでしょう」
王も客人もいつもの揺れだと思いすぐに収まるだろうと考えお喋りを続ける。案の定、揺れは次第に収まっていった。天井の豪華なシャンデリアはまだ揺れていた。
しかし、今回はそれだけではなかった。収まり始めていた揺れはまた大きなものになっていく。今までのものとは比べられない程の地震。まるでこっち近づいてくるように大きくなる。
テーブルは倒れ食器類が床に落下する。シャンデリアも今まで以上に激しく揺れる。人はもう立っていることすらできない。
留めとばかりに一際大きな揺れ。地面から突き上げるような爆発が起こる。
「きゃあああぁぁぁーーーーーー!」
あちこちで女性客の悲鳴が上がる。爆発的な揺れがあった後も地震は続いたが徐々に小さいものになっていく。
「アーサー様、エリザベス様、ご無事ですか?」
地震が弱まったのを見極めセバスチャンが王と女王の元に辿り着く。
「ええ、大丈夫よ」
「私は大丈夫だ!それよりもアリアを!」
2人は自分の無事を伝えるとすぐに娘を気遣う。
「アリアンティア様ー!ご無事ですかー!」
セバスチャンは辺りを確認しながらアリアの名前を呼ぶ。
「爺ー!わたしは大丈夫ー!」
アリアがセバスチャンの方に手を振る。人に流されて壁際までいき長いカーテンにしがみついていた。
アリアの無事に王も女王も老執事も周りの客人達も安堵の息が出ていた。
少なからず城も町も被害は出ている。そう思い町の様子をガラス越しに見てみる。
やはり町の方は崩れている家がある。火災も所々で黒い煙を上げている。
「えっ!?・・・・なに、あれ・・・・・」
そして、アリアは見てしまう。黒煙立ち込めるその向こうに巨大な影を。揺れはなおも続いている。その揺れは不思議と城に・・・アリアに近付いて来るようだった。
不快な思いをした方はすみませんでした。
最後まで読んでくださった方はありがとうございます。
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