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黒き騎士《ナイト》  作者: 悠夢
第1章:誕生パーティー 黄金の皇女と黒き騎士
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パーティー当日―始まりの行進―

 揺れる馬車の中にアリアはいた。正面の席には王と女王が座っている。

 馬車と言っても普通の馬車に比べれば何倍も大きく馬が引くのではなく像が引っ張っている。

 外からは見えないようにカーテンで隠されている。

 アリアからは見えないがアリアがいる馬車の周りには歩行する兵士、普通の大きかの馬車で囲まれながら進んでいる。

 「ふぅー」

 少なからず緊張しているようだ。というのも今日はアリアの誕生パーティー当日でこの町の人達にも感謝の気持ちを込めてという感じで馬車で町を回るようになっている。

 今日の日程としては午前中は町を回る。昼食は城でいつもどうり取り、夜はパーティー本番で各国のお偉方などと夕食を食べたりダンスをしたりする予定どある。

 別に挨拶をする訳ではなくただ馬車の上に上がり手を振るだけ。

 「はぁ、わたしこういうの得意じゃないんだけどな〜」

 ため息とともに愚痴を吐く。別に町の皆が嫌いな訳ではない。逆に大好きだ。この町も。ただ大勢の前に出るのが苦手なだけだ。

 すると

 「アリアンティア様、そろそろ広場です。テラスへお上がりください」

 老執事がアリアに声をかける。

 「あっ、はーい。分かりました」

 (よし!)

 心の中で気合いの掛け声。その言葉と同時に立ち上がり、テラスへと進む。アリアを追うようにして王と女王が続く。

 広場の中央には噴水があり道の歩道にはこの町の住民すべてがいるだろうの人だかり。それに加え隣の町の観光客、旅人なども混じっている。

 アリアがテラスから顔を出すと大きな歓声が上がる。あちこちから、「あっ、皇女様だ」「皇女様、綺麗」「あのドレスとってもかわいらしい」などの声が聞こえてくる。

 今日のアリアのドレスは白とピンクを織り交ぜたフリルの付いたかわいらしいものとなっている。

 このドレスも高評価を得ているので昨日遅くまで考えたかいがあった。

 「ほら、アリア。手を振ってあげなさい。笑顔でね」

 「あっ、はい。お母様」

 母に促されるままに手を振る。笑顔で。

 とても嬉しい。自分の誕生日をこんなに大勢の皆に祝福されて嬉しいくない訳ない。

 本当にこの国に生まれてきて良かったと心の底から思える。それはこの町の人達がとってもいい人達だから。この国を背負ってきた先代、父、母を誇りに思う。

 そんなことを考えながら町の人達を見ている。馬車は進む。この平和な町を。馬車は何事もなく城へと戻る。

 しかし、平和だと感じているのはアリアだけだった。


 町は賑わっている。今、マリクは建物の屋上にいた。何をしているのかというともちろん警護だ。

 その証拠にマリクの他にも何人も屋上に点々と待機している。 何も起きなければいいが昨日のこともある。本当は昨日の時点で捕まえられれば良かったのだが相手はマリクよりも上だった。そのために逃がした。

 「くそっ!」

 その事を考えただけで怒りがこみ上がりつい口から出てきてしまう。

 『マリク、そうイライラしないの。昨日のことはしょうがなかったて』

 レイヴィの声が聞こえてくる。これはテレパシーである。

 人にはそれぞれ魔力の波長がある。その波長を探し声を送る。あまり離れては送れないがレイヴィはテレパシーと魔力感知に秀でている。そのかわり、他の魔法はてんでダメだ。

 「うるさい!お前は黙ってろ!」

 怒りがさらに上がる。

 『はいはい!分かりましたよ!』

 レイヴィは簡単に引き下がる。マリクの性格を知ってのことだろう。

 何も起きなければいいのだがそうもいかなかった。

 アリアが馬車から出た時だった。正しく相手はこの瞬間を待っていた。

 一本の矢が放たれた。それは間違いなくアリアを狙ったものだった。

 警護の騎士が動くなかマリクは動じずその場に留まっている。それでも矢は進む。

 そして、マリクは右手を前に出す。

 「〈シールド〉」

 矢はマリクの召喚した盾に防がれる。

 幸いにも矢が放たれた事は群集もアリアさえも気付ずことはなかった。もし気付くものがいれば大騒ぎ程度では済まされない。悪ければパーティーは中止だろう。

 ちなみに防がれは矢は地面に落ちる前に違う騎士が回収済みである。

 「逃がすか!」

 マリクは走っていた。シールドを召喚した瞬間にアリアからは目を外して。マリクの〈シールド〉はオートで動くことができる。矢ぐらいの物なら勝手に防いでくれる。

 そしてマリクは向かう。矢の軌道から相手がいるであろう場所へ。

 人影が見える。相手も家屋の上にいるようでそこから下に飛び降り逃げる。

 マリクも後に続く。2人は家と家の間の狭い道を進んで行く。そして、周囲を高い塀に囲まれた場所に差し掛かる。行き止まりだった。

 「鬼ごっこは終わりだ」

 相手は仕方なくマリクに振り返る。フードのマントを着ている。

 相手は逃げ切れないと確信し懐に潜めていたナイフを取り出してマリクに襲い掛かってきた。

 何の変哲もない直線的な攻撃。そんな攻撃がマリクにあるはずもなく軽くかわされ腕を身体の後ろに持っていかれナイフが地面に落ちる。

 「貴様、何物だ」

 マリクの問いには答える気がないようだ。せめて顔でも確認するべくフードを剥がす。

 「っ!?女!?」

 そう女性だった。年は20代半ばくらいだろう。

 しかし、その女性はマリクを睨み無言を通すのみ。

 「チッ、ダンマリかよ!おい、こいつを連れていけ!知ってる事を全部吐かせろ!」

 そう言って後から来た騎士に彼女を渡す。

 「何処に行くんだ、マリク!」

 先輩の騎士なのか少しイラついた声でマリクに言う。

 「まさかコイツ一人だけだと思ってるのか?あんたは」

 さらにイラついた声で返す。

 「なんだとー!お前はいつもいつも・・・」

 まだ何か言っている先輩騎士を無視しこの場を後にした。

 マリクの睨んだとおりアリアの命を狙った者は何人か発見されたが、だいたいはマリクが捕まえることとなった。


 今はお昼を少し過ぎたくらい。マリクは城の廊下を歩いていた。話しは王にいっていると思うが一応、報告のために王の部屋に向かっていた。

 その途中でアリアを出くわす。

 「あっ、マリク君」

 いつもどうり話しかけてくる。多分、アリアは昼食を食べ終わり一度、部屋にで戻るのだろう。

 「アリアンティア様。午前中はお疲れ様でした」

 アリアを労った言葉。

 「うん、ありがとう。午前中だけで疲れちゃった」

 「夜までは何ないのでそれまではお休みください」

 「そうさせてもらうよ。夜まで体力がもたないかも」

 「はい、それでは私はこれで」

 「うん、マリクもあんまり無理しないでね」

 マリクはアリアに一礼し王の待つ部屋に足を進める。アリアは何も気付かないままこの場を後にする。


 「誰だね」

 扉をノックした後、中から声が聞こえてくる。

 「アーサー王様。マリクです。少しよろしいでしょうか」

 「マリクか。中に入りたまえ」

 「失礼します」

 礼儀正しく中に入る。

 「早速ながらアーサー王様。すでに耳にしていると思いますが・・・」

 「ああ、アリアを狙った者達の事か。聞いている」

 アーサー王はマリクが言い終わるよりも先に言い返す。

 「そうですか。今日のパーティーは続けるおつもりですか」

 「・・・アリアには悪いが続けるしかなろう。他国の王もこっちに向かっている。辞められる訳がない。王の中には気分屋の者もうる。気分を損ねて同盟を破棄去れたらかなわん。このパーティーはあの子一人の問題ではないのだよ」

 難しい顔になってしまう王。実際のところアリアのお陰で同盟を結んでいるところがほとんどだ。アリアの・・・女神の存在のお陰でこの国も成り立っている部分もある。もちろん、アーサー王の人柄の良さなどもあるが。

 「やはりそうですか。なら私達は守るだけです。アリアンティア様を」

 「すまない、マリク。騎士達には城門を固めてもらっている。マリクも頼む」

 「分かっております」

 力強い返答する。すると、慌ただしい足音ともにノックがされる。

 「アーサー王様!」

 「どうした、入れ」 部屋に入る騎士。余程急いで来たのかすごい息遣いだ。少し呼吸を整えた後

 「ハァハァ・・・。た、大変です!港町が何物かに襲われている連絡がありました!至急応援をお願いします!」

 「何!?」

 王の口から驚きの声が出てしまう。

 「アーサー王様」

 マリクが王の返答を待つ。

 「・・・分かった。少し兵を送ろう。それとアラドも向かわせる」

 「騎士団長がですか!それは有り難いです!」

 「すぐに出発の準備を進めてくれ」

 「分かりました」

 通達役の騎士が急いで出ていく。

 「マリク、お前はここに残って引き続き警護にあたってくれ。もしもの時はお前が対処してくれ」

 「分かりました」

 左胸に拳を当て了解のポーズをとる。

 そう言ってマリクも出ていく。

とうとうパーティー当日まできました。

これからいろいろ動きます。

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