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黒き騎士《ナイト》  作者: 悠夢
第1章:誕生パーティー 黄金の皇女と黒き騎士
2/22

パーティー前日1―不穏な動き―

 アリアはいつも通りの朝を迎えた。今日はいつもと違い慌ただしい一日になりそうだった。

 なにせ明日は自分の誕生パーティー。自分が主役である。なのでアリアの挨拶、アリアの衣装を決めなければいけない。

 「あ〜、今日は疲れそう」

 朝が弱気なアリア。朝が弱いからでもある。

 ところで今はというとドレスの試着中である。なので着替えさせてくれるメイドがいつもの倍以上いる。衣装も数えきれない。

 メイド達はアリアにドレスを着せては脱がしの作業を繰り返し行っている。

 気が付けば後ろにはドレスを持ったメイドの行列があった。アリアはその行列を見て俄然やる気が下がった。

 メイド達はそんなアリア気にせず「こっちの方がアリアンティア様に似合ってます〜」「こちらの方が大人っぽく見えますよ」「やっぱりアリアンティア様にはピンクが似合いますね」などなどもはや着せ替え人形のようになっていた。

 そんなアリアはされるがままの無抵抗。

 (うぅぅぅ〜〜〜)

 心の中で呻く。

 一着を決めれば言い訳ではない。最低四着。

 午前中に町を回るために着るもの。昼食の食事会。最後に夜パーティー用。後はもしもの時の予備。

 (・・・はっ、はやく、終わって〜・・・)

 アリアの悲鳴はだれにも届かずドレス決めは昼食を挟んだ後も続けられた。

 残りの午後の時間は何を話すか考え、練習をした。 すべてが終わった時には日もとっくに暮れていた。


 アリアは夕食とお風呂が終わったあと自分の部屋に戻りベットに倒れ込んだ。

 「もうダメ〜!疲れた〜!」

 精魂尽きた感じになっていた。

 「明日はちゃんとしないと」

 その言葉を最後に眠りについてしまった。


 午後の時間。マリクは訓練場にいた。

 毎日の日課となっている訓練をしている。しかし、マリクもこの国の騎士、任務がない時以外はほぼ毎日行っている。

 対人戦もするがマリクはだいたいシュミレーションで訓練する。

 シュミレーション戦なので対戦相手もホログラム。しかし、相手の強さ、数、対戦時間など設定できる。

 今のフィールドは荒野。無限に広がる荒野。

 辺りには何一つない。あるのは地面の土、枯れた木が数えられるくらい。

 そこにマリクがいる。

 マリクは荒野に立ち武器を展開している。両端から刃があり、中央部には柄がある。二本の剣を柄どうしで取り付けた感じだ。

 刃は透明で水色の光を放っている。マリクが魔力で形成された刃。

 その戦闘態勢のマリクを五人が取り囲んでいる。

 『プログラム設定。エネミーレベル、MAX。人数99人。時間無制限。・・・いつも通りの設定完了。準備はいい?マリク』

 スピーカーから聞こえてくる女性の声。

 「ああ、いつでもどうぞ」

 冷静に答える。

 『それではシュミレーション訓練を開始します』

 その言葉とともに相手が一斉に動き出す。腕を刃物変化させて。

 エネミー達は囲んでいる状態のまま中心にいるマリクに切り掛かる。

 マリクは当たるギリギリのところで屈みツインブレードを頭上に掲げで受け止める。数センチ上では刃どうしがガチガチと力比べをしている。一歩間違えは死が待っている。

 それでもマリクには恐怖を与えるには足りなかった。

 「雑魚が束になって」

 ただ切り捨てる。

 マリクは屈んだままツインブレードに回転を加えながら五本の刃を跳ね返す。 エネミー達は後方に吹き飛ばされる。反撃されないためにすぐに動くマリク。狙いは正面の敵。凄まじいスピードで敵に追い付き刃を振り下ろす。

 エネミーは飛ばされた状態だかマリクのツインブレードを受け止め、弾く。しかし、マリクはそれを予想いていたとばかりに弾かれたと同時に相手の後ろに回り込み切る。1体撃破。それでもマリクの勢いは止まらない。

 残りの4体も苦戦せずツインブレードで切り裂く。 『やっぱり強いな〜。それじゃあ、次』

 5体追加。またもマリクを囲んで出現。

 マリクの周りに水色のオーラを出現する。

 「我を守る盾よ〈シールド〉」

 マリクの周りに六角形の板が3つ現れる。

 「くらえ!〈アイスホーン〉」

 かざしたマリクの手から鋭く尖った大きな氷柱が出現し放たれる。相手は体を貫かれ倒れる。

 残りも〈シールド〉で相手の攻撃をガードしつつ下級魔法で撃破する。

 『マリク、ウォーミングアップはこれくらいでいい?』

 「ああ。後は雑魚、全部出せ」

 『了解』

 承諾もらいエネミーを出す。そう今度は全員。フィールドを次々に埋めていくエネミー。荒野には88体のエネミーにマリク1人。

 こんなこと自殺行為にしか思われないがマリクは攻める。四方八方からの攻撃に〈シールド〉で防ぎ斬撃と下級魔法で対抗する。

 全体魔法も使えるが敢えて使わない。

 敵の数はみるみるうちに減っていった。そして残り20体をきった頃。

 「そろそろ終わらせるぞ」

 マリクの周囲の空気が変わった。さらに凍てつくように。

 エネミー達は残る全勢力でマリクに挑む。眼前に迫る敵に対してもマリクは目を閉じる。

 集中する。

 「氷の粒手よ。我が敵を撃ち抜け。〈ダイヤモンドダスト〉」

 先頭に来ていた敵が刃を振り下ろす。しかし、目の前で刃が止まる。マリクの魔法が発動。氷の粒が無数に出現。敵目掛けて一斉にガトリングガンのように撃ち出される。次々向かってくる敵を返り討ちにしていく。

 細氷(さいひょう)が止んだ時には敵の姿はなく荒野にはマリク1人だけ残された。

 『さっすが、マリクだね〜』

 感心した声が聞こえる。

 『じゃあ、最後の1体行くよ』

 「さっさと来い!」

 スピーカー越しの女性にではなく戦う相手にだ。

 最後1体は特別でボス的存在だ。

 『今日の相手はコイツだー!』

 敵が現れる。2メートルを越える長身。体は筋肉の鎧で覆われている。大斧を携えた二足歩行の大トカゲ、リザードマン。

 爬虫類独特の目でマリクを捕らえる。

 「グガァァァァァァーーーーーー」

 獲物を見つけての咆哮。体の奥まで響く。

 「今回はリザードマンか。雑魚ほどよく吠える」

 リザードマンの咆哮に怖じけることなく毒づく。リザードマンはマリクの言葉を理解したのか再度、怒りの咆哮挙げマリクに迫る。リザードマンは大斧を横に一閃するがマリクはバックステップかわしアイスホーンを腹に当てる。貫くことはできなかったがダメージは大きい。

 「チッ、やはり硬いな」

 そんなことを言っているがまだまだ余裕がある顔付きだ。その後の展開はというと言うまでもなくマリクが優勢で進んでいく。パワータイプのリザードマンに対しマリクはスピード重視で攻撃を回避し隙を見て魔法と斬撃でダメージを与えていく。

 そして、マリクはリザードマンの正面に突っ込む。リザードマンもそれに応戦する。大斧が振り下ろされマリクもツインブレードを下から切り上げる。大斧は空を切り勢いよく地面に突き刺さる。マリクはすでに相手の後側にいる。

 傷口から鮮血が吹き出す。それからリザードマンの手から大斧が離れる。

 手応えは十分にあった。誰もがマリクの勝利で訓練終了と思われた。しかし、終わってなどいなかった。


 ―システム管理室―


 警報と共に赤いパトライトが点灯する。

 「どうしたの!?」

 スピーカー越しで聞いた声の持ち主。

 「分からない!しかし、何者かがシステムに侵入したと思われる」

 男性の焦った声。周りの人達も慌ただしく動き回っている。

 「なんでこんな時に!いいわ、まずは訓練を中止しマリクを呼び出して!」

 しかし、マリクをモニタリングしていたモニターが、すべて真っ暗になる。

 「レイヴィ!駄目だ!システムが全停止した」

 レイヴィと呼ばれた少女。19歳でシステム管理室のオペレーターをしている。

 マリクとはマリクが入団した時に知り合いそれからの付き合いだ。

 「どうしよう」

 戸惑うレイヴィに対し状況は悪くなる一方。


 ―フィールド・荒野―


 異変はすぐに訪れた。

 マリクは背後から爆発するかのように膨れ上がる魔力を感じた。背後を振り返る。

 そこには倒れる寸前だったリザードマンが背後に・・・もう手の届く距離にいた。リザードマンは腕を振り上げていた。

 「くそがっ!〈シールド〉」

 回避が間に合わず仕方なく〈シールド〉を無数召喚し壁を作る。向きを変え腕をクロスさせガードの態勢をとる。

 リザードマンの爪が〈シールド〉を突き破りマリクに直撃する。

 「くっ!」

 マリクは抗うことなく後方に飛ばされ丘になっている壁に激突する。

 丘は激しく崩れ辺りは砂煙で見えないくらいだ。

 砂煙が晴れマリクが顔を出す。すると、リザードマンの様子がおかしい。

 筋肉で覆われた体がさらに膨張し太く力強いものとなり体格も大きくなる。爪も牙も鋭さが増す。

 変化が終わった時には4メートルに近い身長になっていた。

 「くそがっ!・・・何なんだ、アイツは!」

 たしかに倒したはずだ。手応えもあった。なら何故ヤツは消えない。どうして変化する。今までこんなことはなかった。ならシステム管理室で何かあったか。

 「おい、レイヴィ!あのリザードマンどうなってるんだ!」

 1人で考えてもしかたない為システム管理室に声をかける。

 『・・・・・・・』

 しかし、なんの応答もない。

 (やはり、あっちでも何かあったか。となると、考えられる原因は1つしかないか)

 リザードマンを見る。どちらにしろヤツを倒さなければどうにもならない。

 「訓練の追加だと思えば余裕だろう」

 これからの方針が決まり起き上がる。強化型リザードマンは狂いそうなほどの咆哮を挙げている。

 そんなリザードマンを見据えツインブレードを握り直す。再度、戦闘モードに入る。先に動いたのは意外にもリザードマンだった。

 「何!?」

 凄まじいスピードに思わず声が出てしまった。さっきの比ではない。倍、それ以上に。マリクとほぼ同じくらいだろう。

 「くっ」

 〈シールド〉が間に合わず爪撃をツインブレードで受ける。

 「雑魚のくせに!」

 思わず口から出る。マリクも魔力を変換し移動速度を上げる。

 2つの残像が離れては交差する。

 「チッ、きりがない。くらえ〈ダイヤモンドダスト〉」

 (おびたた)しい量の氷の弾丸。しかし、リザードマンの体には擦り傷程度でしかなかった。

 「〈ダイヤモンドダスト〉であれだけか。なら・・・〈アイシクル〉」

 ツインブレードに冷気が纏わり付く。

 高速の打ち合いが続けられる。

 「グガァ!?」

 リザードマンの動きが鈍くなる。リザードマンの体は少なさらず傷ついている。マリクの剣で。その他にも凍り付いている部分もある。

 〈アイシクル〉。凍らせる効果を上げる魔法。今回はツインブレードの凍結効果付着だ。

 数合の打ち合いは続いたがその打ち合いは静まる。リザードマンの足が凍り付いている。それを確認したマリクは魔力高める。マリクの周りに魔力のオーラが輝き出す。

 「グガァァァーーー!」

 リザードマンは阻止しようと向かってくる。爪撃の連撃。

 マリクはかわしながら魔力を高めていく。

 (よし)

 リザードマンの爪が地面をえぐる。後方に大きく飛ぶマリク。 そして、

 「凍える突風!凍れ!〈ブリザード〉」

 氷の粒手のを含んだ突風が吹き荒れ強化型リザードマンを襲う。辺りは白で塗り替えられる。

 リザードマンの体を切り裂き、貫いていく氷の刃。

 突風が止んだ時には巨大な氷像が出来上がっていた。

 だがそれで終わりではなかった。マリクは氷像に追撃を加える。

 氷がツインブレード全体を覆われていく。

 「〈クラスター・エッジ〉」 氷の刃を振り抜く。

 声を挙げることもできず切り付けた部分から砕け散る。あとに残されたのはリザードマンだった氷の残骸だけ。

 「ふん」

 一度、剣を振る。

 「いつまでそこに隠れてる」

 「ふふっ。やはり、バレましたか。さすがですね」

 さっきマリクが激突した丘の瓦礫から姿を表す。黒いフードを被っている怪しいヤツ。

 「お前がやったのか?」 「まあね〜」

 聞いているとやる気がなりそうな間の抜けた声。幼いような感じもする。

 「お前の目的はなんだ?内容によっては・・・殺す!」

 そんな黒フードに怯まず話を進める。

 「ちょっ、ちょっと待ってよ〜!そんな怒んないでよ〜。僕はただ君を見に来ただけだから」

 「何の為に?」

 「だから〜、ただ見に来ただけだって〜」

 「・・・。ふざけるな!」

 黒フードに切り掛かる。が、手応えは全くなかった。

 マリクは黒フードを見失う。

 「お〜〜〜い!こっちだよ〜!」

 マリクは声の聞こえる方に振り向く。

 黒フードは違う丘の上に移動していた。

 「危ないじゃないか〜」

 (余裕だったくせに!)

 心の中で舌打ちする。

 「僕は本当に見に来ただけなんだよ〜。これ以上ここにいると本当に殺されそうだから僕帰るね。・・・あと、これ返すね」

 と、黒フードは何かをマリクに投げてくる。マリクは反射的に受け取る。

 「な!?」

 それはアクセサリー。いつも剣帯に吊り下げていた物。レイヴィに無理矢理持たされたお守り。

 マリクは慌てて剣帯に目を向ける。やはりない。

 「ニヒヒヒッ。それじゃあ、バイニャ〜」

 視線を戻した時にはもう誰もいなかった。

 『マリク、大丈夫?』

 通信が回復したのかレイヴィの声が聞こえてくる。

 「・・・」

 『マリク?』

 返答がないため聞き直す。

 「ああ、何でもない」

 とにかく異常がなくなったのだと確認し氷の刃を解く。柄だけになったツインブレードをマントを翻して腰に戻す。

 レイヴィのお守りを剣帯に戻す。

 「レイヴィ。どうなっているんだ?」

 『それが分からないの。いきなり、システムが誰かに乗っ取られてシステム全停止。モニターも切れちゃったからそっちの状況も分からないの。マリクの方はどうなったの?』

 「そうか。俺の方は・・・」

 マリクはさっきの出来事、倒したはずのリザードマンが蘇って襲ってきたこと黒フードのヤツがいたことを報告した。

 『そっか。それじゃあ、その黒フードのヤツがマリクの実力を見たかったってこと?』

 「そうかもしれないし他にも何か目的があったのかもしれない。それに・・・嫌な予感がする」

 マリクは険しい顔付きになる。

 何故この時に?何故アリアンティア様の誕生パーティー前日に?

 何か嫌な予感がしてならなかった。

 マリクは訓練場を後にした。


 王に報告するために自室に向かったマリク。

 報告後、王は悩んだが誕生パーティーを中止にはしなかった。

 他の国の王などもこちらに向かって来ている。パーティー前日にキャンセルなど失礼過ぎる。事情を話せば分かってくれる人もいればそうでない人もいる。

 城の守りを増やす考えで話は進められた。

今回はマリクの魔法バトルを中心に書きました。どうでしょう。

また、読んでください。

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