闇を照らす光
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
少女の息遣いと足音が無機質な煉瓦の螺旋階段に響く。
階段の頂上にたどり着いた時には肩を激しく上下させているくらいだった。ここの部屋はアリアを囲むように丸い作りになっている。その壁に向こうの景色が見えるように丸い窓がいくつかあった。
アリアがたどり着いた場所は城の1番高い場所。町全体を見渡せる塔。そこから町を見る。巨大なドラゴンが迫る。その他にもドラゴンが町を襲っている。山の向こうには町に近づくドラゴン。もう目の前まで来ている。
「せめてあのドラゴンだけでも」
言葉に。瞳に。心に。強い意思が集まる。アリアは両手を合わせ祈る。そして、アリアを黄金の光が包み込む。
「お願い!皆を守って!」
光が更に強くなりここの空間を。城を。町を。包み込んでいく。
巨大な円形の結界。結界の中にいるだけで心が暖かくなるような感じがする。
空を見れば先頭のドラゴンが町目掛けて降下してきていた。しかし、アリアの結界によって阻まれてしまう。後続のドラゴンも到着するも先に進めないためその場に群がってしまう。声を上げるドラゴン。火炎を吐くが全く意味がない。これで今、以上に増えることはなくなった。しかし、状況はさほど変わらない。ただ外界からの進行を防いだだけ。結界の中を何とかせねば。しかし、アリアにはこれくらいしかできない。家庭教師にも攻撃魔法を習っていない。
そうこうしている内に巨大ドラゴンが大口を開け小さな火の粉が口に集中する。アリアの魔法光に反応したのか明らかにアリアの方に照準が合っている。
アリアはマズイと思いが戦い慣れしていないため瞬時の判断ができなかった。
巨大ドラゴンは魔力を溜め終わっており牙の間からも紅蓮の光が発光している。次の瞬間、口を開き巨大な火炎弾を吐き出す。
火炎弾は無情にもアリアのいる場所に確実に向かってくる。
目の前に迫る紅蓮の炎。瞳にもくっきりと写っている。アリアは恐怖を前にただ見ていることしかできなかった。
火炎弾は塔に激突。当然の如く塔を焼き、粉砕する。
闇を照らす恐怖の明かりとなった。
次回はクレイア側を入れていきます