迫り来る者
ダンスホールは避難をする客人の悲鳴と誘導する執事達の声で慌ただしくなっている。
揺れは続いている。しかし、これは自然なものではない。ドシン、ドシンと一定の感覚でなっている。
揺れはたしかに城の方に向かって来ている。
黒煙立ち込める中でも確認でき怪しく光る双眸。煙の間から時折見える巨大な身体、鱗、翼。
「嘘っ!?ドラゴン?」
城を覆い隠すことのできる巨大なドラゴン。青い鱗が僅かな光に照らされて不気味に見える。巨大ドラゴンは太い4本の手と足でゆっくりと力強く大地を、町を踏み締めている。
「アリア!何処にいる!」
人の波のせいでアリアを見失ってしまった。アーサー王の声は人の波のせいで声は届くことはなかった。 「アーサー王様、ここは危険です。避難を」
銀の鎧を着た騎士が避難を促す。
「私はいい!アリアを見つけなければ!」
「あなた・・・」
自分よりも娘の身を按じている。
「アーサー王様!アリアンティア様は我々が見つけだします。王は・・・」
「五月蝿いっ!アリアを見つけださねば!」
「アーサー王様!」
本来ならばあってはならないことではあるが騎士の方も必死なのだろう。
「お気持ちは十分に分かっております!しかし、王にもしものことがあったらこの国はどうするのですか!」
「くっ!」
思わず言葉に詰まってしまう王。
「アリアンティア様は見つけ次第、我々が命を懸けてお守りしますので王は安全な場所に避難を!」
娘と市民。どちらか一方を選べと言われても選べるわけがない。
「分かった。アリアを頼む」
ここは我が国の騎士達を信じることにした。
「はっ!」
胸に拳を当て承諾の意を表す。
「それではアーサー王様、こちらへ」
「その前にルドルフに救援の連絡を入れてくれ」
「分かっております」
踵を返し安全な場所へと誘導する。後ろ髪を引かれながらもこの場を後にした。
客人達もドラゴンが接近していることに気付きさらに慌ただしくなる。
「わっわっ!押さないでよ!イタッ!」
アリアは一歩も動くこともできずに必死にカーテンにしがみついている。
「アリアンティア様ー!」
自分を呼ぶ声が微かに耳に届く。見回すが人が多すぎて見つけることができなう。
「だれー!わたしはここよー!」
なんとか片手を上げ自分の居場所を知らせる。
「アリアンティア様ー!」
もう一度声がして声の主を見つける。
「ユーリー!こっちこっち!」
侍女のユーリもアリアを見つけ人の波をなんとか渡ってくる。
「アリアンティア様!ご無事で!?」
「わたしは大丈夫。ありがとう、ユーリ」
「とんでもありません。それよりも安全な場所へ避難を!」
「ねぇ。あのドラゴンこっちに向かって来てるけど大丈夫?」
「はい!騎士団総勢であたっております」
「そう、なら・・・」 爆発音。会話の途中で言葉か途切れる。城の側面に衝撃が走る。
あちこちで悲鳴が上がる。
「今度は何!?」
アリアだけでなく他の客人も騎士も外に視線がいく。何故か巨大ドラゴンの他に無数にドラゴンがいる。さっきまで何処にもいなかったにも関わらずここにいる。見逃したとも思えない。まだ何処かにいるドラゴンを目を動かして探す。そして見つけてしまう。
山の向こう。星の光、月の光を遮る黒雲。いや、影。大量の影が集まり黒雲と成している。
「・・・えっ!?」
自分の目を疑ってしまう光景。ドラゴンの群れ。
ただでさえ巨大なドラゴンが城に向かって来ているこの状況でさらにドラゴンの群れが迫って来ている。最悪の状況。
「・・・」
アリアの目には強い意思が写っている。次の瞬間アリアは走り出していた。人にぶつかりながらも前へと進んでいく。
「アリアンティア様!?」
アリアの急な行動に驚き1歩出遅れる。ユーリはあっという間にアリアの姿を見失ってしまった。
迫る巨大ドラゴンこれからどうなってしまうのか?