逆プロポーズ
すっかり空も明るくなった頃、私は窓辺から町を眺めていた。この家がちょっと高い場所に建てられていること、部屋が二階にあるために町の眺めが良く見えた。
桶を持った女性、騎士、騎士の後をついて行く少年、お店の準備をしている人。まだまだ人は少ないけれど、町が少しずつ活動し始めたことが分かる。
暫く眺めていると、この家からブロンドのショートに黒いのワンピースを着た女の人が出てきた。
(わぁー美人さんだ。おぉ、なんか歩き方が優雅だ。あっ水汲んでる)
――美鈴が彼女の一挙一動に注目しているとき、視界の外では一人の青年が家の中に入ったところだった。
(というか、そろそろだよね。言葉通じるといいな~)
外の景色からドアに視線を移した。
のん気に構えていると数人の足音がしてこの部屋の前で止まる。そしてヒソヒソと話し声が聞こえてきた。
「ねぇフロン。彼女、まだ寝てるかしら?」
「さぁどうでしょう?」
「ふふ、なんだかドキドキするわね」
「そうでございますね、奥様」
「彼女、どんな子だと思う?」
「まだ何とも言えませんね。かなりの美人であることしか分かりません」
「美少女なことは確かね。変わった顔立ちだけど、すごく奇麗だわ。胸も大きいし私が男だったら惚れてるわ。揉みたくなるというか」
「同感です、奥様」
最初は潜めていた声も最後の方はもろに聞こえていたので、何とも言えない気持ちになった。
早く入って来てくれないかな、と思っているともう一人──カチャカチャと聞きなれない音と共に──やって来た。
「──母さん達、そこで立ったまま何をしているんですか?」
その声を聞いて思わず固まる──どこかで、しかもごく最近聞いた様な気がするこの魅力的な声。
高鳴る心臓を無視して必死に思い出そうとする。
(──っあ!)美鈴が思い出した瞬間、ノックの音がして「入るぞ」という声と共に扉が開いた。
そこにいる人を見て目を見開く──こんなことがあって良いんだろうか。
「……ルシフェル様……」
私の口から出てきた声は誰も聞き取れないくらい小さかった。嬉しさのあまり身体が震える。
夢だと思っていたのに……。
(夢じゃなかったんだ……)
私は立ち上がり、愛しの彼のもとまで必要な五歩を進んだ。ルシフェル様は近づいていく私をじっと見つめたまま動かない。
ルシフェル様の目の前に来ると止まり、私もまた相手の瞳を見つめる。
──そして、大きな声で言った。
「私と結婚してください!!!」
作者「やっとここまで来ました! 美鈴ちゃん頑張れ!」
美鈴「もちろん。絶対逃がさないよ」