勇者登場
ピロピロリーン!
悪魔アモンが仲間になった!
そんな言葉が脳内に浮かんだ私は立派なゲーム脳だ。
ま、そんなことはどうでもいい。
胡散臭くて全く助けにならない魔法使いのカースさんと梟の頭をした悪魔アモンさんを連れて次なる強い魔界人の元へ向かう私、高塚千里こと魔王様(凡人)。
魔界は廃れている上に暗い空模様。
もともと良くない私の気分は沈む一方だ。
「どうしたの魔王様♪元気ないね!」
「カースさんはとびきりご機嫌ですね…」
「そりゃね!アモンちゃんを仲間にしちゃうなんて流石だよ」
「しかし魔王殿。油断されるな。貴殿が面白くない行動をすれば私はすぐさま殺す」
「これって仲間って言えるの?」
「言えるよ。ねー?アモンちゃん」
「ちゃん付けをするな」
ジュバッ!
ばい~~ん!
「な、何今の効果音!?」
「私がミスターカースに攻撃をして」
「僕がバリアを張って防いだんだよ」
ま、全く見えなかった…
これが俗に言うヤムチャ視点ってやつね。
…凡人にはついていけません。
「もうすぐで次の魔界人の家だよ」
「次はどんな人なんですか?」
そんな会話をしていたその時、カースさんとアモンさんの表情が変わった。
そして次の瞬間、カースさんは私に向かって言葉をかける。
「僕は逃げるから。じゃ、またね」
「え!?ちょっと!?」
シュッ!
一瞬でカースさんの姿が消えてなくなる。
あ、あの野郎…
アモンさんは私をかばうように背を向ける。
ああ。アモンさんがいてくれて良かった…。
「……魔王殿、注意されよ」
「注意?」
「勇者だ」
「!!?」
カツン、カツン…
靴音が、どんどん近づいてくる。
同じ世界から来たという、この世界で一番強い勇者に出会ってしまう。
私はドキドキしながら向かってくる人物を見つめた。
カツン、カツン、カツン…
勇者の姿がおぼろげに見えてきた。
中肉中背。武器は何も持っていない。
眼鏡をつけており、服装は制服だった。
…あれ?
あの制服、ウチの高校の制服じゃない?
それに勇者の顔、どこかで見たことあるような?
ーーーーーって、いうか
「須賀君じゃない!?」
「た、高塚さん!?」
勇者と呼ばれたその人は、私のクラスメイトである須賀弘幸君だった。