魔界家庭訪問~悪魔アモン編②~
「え!?ええええ!?死!?死ですか!?」
「そうだ。私はあの方以外の魔王など認めない。貴殿は邪魔だ」
「じゃ、邪魔って」
「そもそも、人間で、しかも何も能力を持たない凡人に魔王が勤まるわけがない」
もっともな意見です。激しく同意します。
けれど、だからって死ねってひどくない?
これだから悪魔はっ!
「ははは。面白くなってきたね」
「ちっとも面白くない!」
カースさんは私を助けそうなそぶりを全く見せない。
うん。なんとなくそんな気がしてた。
アモンさんは構え、戦闘態勢に入る。
みなぎる殺気が私に突き刺さる。
ほ、本格的にピンチ!
「ア、アモンさんは先代の魔王様のこと好きなんですね。どんなところが好きだったんですか?」
とりあえず会話をして気を紛らわせようとする私。
私の意図を知ってか知らずか、アモンさんは答えてくれた。
「圧倒的な魔力だ。あの方の魔力は素晴らしかった」
「魔力?魔力があるから好きなんですか?」
「人間にはわからない感覚だろうな。魔界人は強い者が好きなのだ。強い者が魔王なのだ」
「へー」
人柄とか政治的手腕とかそういうのじゃないんだ。
確かにそれはわからない感覚だなぁ。
「でも、どうしてそんなに強い先代が勇者に殺されたんですか?勇者の方が魔力が強かったんですか?」
「貴殿は何もミスターカースから聞いてないのだな。まぁいい。私が教えてしんぜよう。あの方の方が魔力は強かった。しかし、勇者はある特殊なスキルがあった」
「スキル?」
「魔力を使う魔術とは別のものだよ」
私の疑問にカースさんが説明をつけてくれる。
それによるとスキルとは体質のようなもので、本人が望む望まないにかかわらず自動的に発動してしまう能力らしい。
スキルがある者は人間でも魔界人でも稀なのだとか。
「勇者のスキルは魔術反射。ありとあらゆる魔術を受けつけず、反射してしまうのだ」
そのスキルがあるのも知らずに先代は勇者に大魔術で攻撃し、反射され自滅したという。
自分の敵に対するリサーチ不足じゃないか…とは、流石に言えない。亡くなってるしね。
でも、圧倒的な魔力を持っていて過信して足元を掬われたのだろうという私の認識は間違っていないと思う。
「私なら…そんな失敗はない」
「なんだと?」
思わずそんな言葉が口から漏れた。
なにせ魔術が使えないのだから、失敗のしようがない。
それに、私相手では勇者のスキルは無意味だ。
まぁ、魔界人だって魔術を使わないようにする事だってできるのだろうけれど、命を懸けた戦闘中なのに魔術に頼るなと言う方が無理なのかもしれない。
暗闇の中ろうそくと懐中電灯の二つがあって、どちらかあげると言われたら、誰だって懐中電灯を選ぶ。
わざわざろうそくを選ばない。
そういうことなのだろう。
「なるほど。カースさんが能力無しを召喚した理由がわかったわ」
だとしても、私を選んだ理由は『面白いから』なんだろうな…
格闘技の心得のある男の人を召喚すればもっと簡単に勇者を倒せると思うのに。
まあ、チート能力の勇者だからスキルだけじゃなく他の能力もあるのだろうから、そんなに上手いこといくとは思わないけれど。
「…貴殿は、面白いな」
「へ?」
「魔力が無いくせに、魔王になり勇者を倒そうとしているのだろう?」
「そうじゃないと元の世界に帰してくれないと脅されてるからです」
「貴殿が勇者を倒したら…さぞかし愉快であろうな」
「でしょ?面白そうでしょ?」
ニヤニヤするカースさんに頷くアモンさん。
ていうか微妙に私の話聞いてないですよね?
「そうだな。面白い。よかろう。私も貴殿を魔王と認めようではないか」
「ええ!?」
さっきまであんなに先代先代と言っていたのにアッサリすぎ。
これだから魔界人は…
まあ、私にとって都合がいいので今回は許す。
「私は悪魔アモン。貴殿の力になろう。よろしく頼む。魔王殿」
そんな訳でアモンさんが仲間になった。