魔王、勇者に発見される。
初の携帯投稿です。
携帯って何時でも編集できるのはいいけど慣れるまでがやりづらいですね…
「精霊祭り?」
「そう。丁度今の季節にこの町で毎年行われているんだ。見たところ今は準備期間ってとこかな」
「それでこんなに賑やかなんですね」
「ところで魔王」
「なんですか、ディーンさん」
「さっきから女性達の視線が痛くて吐きそう…」
「…本当に残念な人ですよねディーンさんって」
イケメンのディーンさんは目立つのでよく女の人の視線の的になる。
本人はその視線を「殴られる」「シバかれる」と勘違いをしているのだから本当に残念だ。
ここはミサフーラというブラックマウンテンに一番近い町。
舗装もされており、綺麗な所だ。市場も賑やかで、『ブラックスコーン』『ドラゴングッズ』などなど沢山のご当地土産があってなかなか楽しい。
ドラゴンのいる山を観光スポットにするなんて…人間ってたくましいよね。
そんなブラックマウンテン関連以外に目につくのが町中に飾られている花や精霊を描いた絵やかたどった像などの芸術品達だ。
これはこの時期のみ開催される精霊祭りの飾りらしい。
「明日開催なんだってね。残念だね魔王様」
「え?なんでですかカースさん」
「何故って、今日これからブラックマウンテンに向かったら、早くても明日の朝頂上につく計算になる。精霊祭りに参加出来ないね」
「えー!そうなんですか!?」
楽しそうだから参加したかったのになぁ…
カースさんのお金で屋台ご飯沢山食べたかったのに。
さっき看板で見つけた『精霊の恵みパフェ』が気になってたのに…!
「カースさん、今日明日は泊まって明後日向かいませんか?」
「ふふふ…い・や☆」
うわー腹立つー。
でも財布を握ってるのはカースさんだから無理には出来ないのよね。
嗚呼…異世界の祭りを満喫したかったよ…
「ま、でも魔王様の頑張り次第では精霊祭り途中参加くらい出来るかもよ?」
なんですって?!
「どういう事ですか?」
「ブラックマウンテンの主を仲間に出来たら、乗せてもらって山を下ればいい。すぐに着くよ」
そっか!
ドラゴンだから人を乗せて飛べるんだ!
やった!精霊祭りに参加出来る!
「(小声)ミスターカース」
「(小声)なにかな?アモンちゃん」
「(小声)魔王殿を乗せて運べるのも、勇者法が適用されるのも、私もドラゴンは同じなのだが」
「(小声)わかってるよ。ワザとだよ。僕早く魔王殿とブラックマウンテンの主との対面を見たいんだよね~」
「(小声)やはりか。了解した。私も黙っていよう」
「(小声)流石アモンちゃん話がわかる~」
「カースにアモン、なんの話をしてるんだ?」
「「なんでもない」」
そして私達はすぐさまブラックマウンテンに向かった。
ブラックマウンテンは本当にその名の通り、真っ黒な山だった。
草も花も土も流れる水も全部黒色なのだ。
不気味を通りこしてなんか幻想的だと私は感じた。
「相変わらずだね、此処は」
「カースさんこの山に来たことあるんですか?」
「まぁね」
そういうとカースさんは杖を取り出した。
「じゃ、僕はこれで」
「え。カースさん一緒にいないんですか?」
「うん。ちょっと用事あるからね。大丈夫、魔王様がブラックマウンテンの主を説得する場面は密かに見てるから」
「全然そんな心配してません」
ま、しばらくお金必要ないし、カースさん居なくても大丈夫か。
どうせ私が危ない目にあっても助けてくれないし。
「またね」
そう言って杖を一振りするとカースさんは消えてしまった。
「さて、俺らも行くか」
「そうですね。早くブラックマウンテンの主を仲間にしてさっさと町に帰りましょう。そして精霊祭りに参加しましょう」
「魔王殿…余程祭りに参加したいのだな」
少々呆れた顔(のように見える)のアモンさん。
だって異世界のお祭りって興味あるもの。
因みにアモンさんは人気がないとの事で、元の悪魔の姿に戻っている。
「頂上に主はいるんでしたね」
「そうだとミスターカースが言っていたな」
「俺イマイチあの魔法使いは信用出来ないんだけど大丈夫か?」
「私も信用してないですが、多分大丈夫ですよ」
とかそんな会話をしていたら、黒い草むらからガサガサと音がした。
「「「!」」」
すぐさま戦闘態勢に入るアモンさんとディーンさん。
うわぁ、頼もしい!
勿論私は逃げる態勢である。(バッチリ☆)
ガサッ
「あ」
「「「あ」」」
草むらから出てきたのは私と同じ世界から来た須賀君こと勇者ヒロユキとすごい美女二人だった。
「た、高塚さん!?」
圧倒的有利なのに何故か動揺している須賀君。
ずり下がってしまったメガネを元に戻したり、しきりに制服を掴んだりと忙しない。
おいおい須賀君。
せっかくのこの世界でのクールなキャラが台無しだよ。
「勇者・ヒロユキ?」
ほらっ!お仲間のキリッとした美女が怪訝な顔をしてるよ。
「勇者様のお知り合いですか…?」
お姫様のような煌びやかな美女も困惑してるし。
そこで須賀君はようやく我にかえり、こほんと咳払いをして誤魔化す。
「久しぶりだな、魔王」
今更キッと睨まれてもなぁ…
でも、この状況はよろしくない。
「アモンさん!」
「心得た!」
アモンさんは以前逃げた時のように巨大な梟の姿になる。
私とディーンさんはすぐさまアモンさんに乗り込もうとしたが
「カトレット」
煌びやか美女がキリッと美女に静かに声をかける。
「魔王様を捕まえなさい」
「畏まりました。我が姫ディアナ」
受けてカトレットさんとやらが私に目掛けて走る。
けど残念。結構距離があるから私がアモンさんに乗り込む方がはやい。
ーと思っていたのだけど甘かった。
今私達が対峙しているのはチート能力保持者の須賀君と、須賀君と共に魔王を倒した八戦姫なのだ。
「スキル発動!『加速』!」
ギュン!
カトレットさんの走る速度が自動車並みに早くなった!
嘘でしょ!?
ヤバ!追いつかれる!
八戦姫が一人、特攻騎士カトレット。
八戦姫の中で唯一魔術が使えず、変わりに『加速』のスキルを持っているという。
畜生、情報は知ってたけど認識が甘かったっていうか対策の立てようがないわっ!
ギュン!
「わわわっ!」
いつの間にかカトレットさんは私の目の前に立ちはだかっていた。
そしてガシッと腕を掴まれた。
「魔王を捕獲致しました」
「ご苦労様カトレット」
華やかな笑顔で微笑むディアナさん。
キリッとした表情そのままで私を離すまいとしっかりと腕を掴むカトレットさん。
「こんなものか。呆気ないな魔王」
見下した目で見る須賀君。
「魔王殿…!」
「…」
焦った表情のアモンさんとディーンさん。
そして、絶対絶命の私!
ど、どうしよう…!?
そんなこんなで次話に続く。