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魔王迷子になる。

町を出て早数日。

ブラックマウンテンまであと2・3日で到着かという頃。

私達は暢気に歩きつつ会話をしていた。

アモンさんの若干ズレてる話とカースさんの煙に巻いたようなスッキリしない話でも異世界から召喚された私にとっては貴重な情報源である。

私はこの世界をよく知らなくてはならないのだ。



「いいか魔王殿この世界はいくつかの界に分かれており、人間界、魔界、妖精界…」



でもま、細かい世界設定は追って私が地の文で説明するのでアモンさんやカースさんの説明は端折っちゃおう。

長々とここで説明されるとか眠いし。

王道な剣と魔法のファンタジー世界のテンプレ設定を頭に置けば大体大丈夫っぽい。



「魔界やたまに妖精界からもモンスターがやってきたりするから、人間の中には冒険者っていう職業があるんだって。たまに魔道師もそれに含まれたりするね」

「冒険者というのは、モンスター専用の退治屋みたいなものなんですね」

「そうだね。お金を貰って護衛や傭兵の仕事をしたりもするね」



私の知ってるファンタジーとそうブレはなさそうね。

ん?待てよ?

この世界は誰でも魔術、またはスキルを使えるのよね?

だったら魔術師って?



「いい質問だね。実は誰もが魔術があるといっても結構使えるレベルに個人差があるんだ。個人差にも色々あって、魔力の量・発動させる為の知識・魔力の消費量・回復までにかかる時間とかかな」

「へー」

「魔術師は基本的に専門の学校に行けば名乗れるけど、知識以外の才能がないと面接に落ちて入学できないんだ。魔王様なら門前払いだね」



最後の一言は余計だ。



「アモンさんはどのくらい魔力あるんですか?」

「アモンちゃん?」



私は肩に乗っている梟を見た。

アモンさんはいきなり話題が自分に来たので少し驚いている(ように見える)。



「ミスターカースに評価はまかせる」



以前似たような質問したときもイマイチよく解ってなかった感じだもんな。

その方がいいだろう。

しかし梟って地味に重い…肩が…肩が…



「ん~、アモンちゃんの魔力か。それも解らないんだ魔王様。可哀そう」



哀れまれた。

なんかすごく腹立つ。



「勿論すごいよ。アモンちゃんは強いって言ったでしょ?魔力の量は多いし、知識はあるし、省エネだし、回復も早いよ。Aランクってとこかな」

「ランクがあるんですか」

「僕が独断と偏見でつけてるの」



カースさんの個人的主観かよ。

でもまぁ、カースさんは魔法使いだしあながち的外れな評価でもないだろう。



「ちなみに魔王様はランク圏外。勇者はSSSトリプルエスランクだよ」

「知ってた!知ってたわよ!」



いつもながらなんなのこの圧倒的不利。



「でも魔王様、気をつけてね。魔術師じゃなくても魔術がすごい人はいるんだからね」



やけにこの言葉は耳に残った。

















夜になり、野宿をすることになった。

簡単な夕食をすまし、眠りにつく。

アモンさんは見張り、カースさんはどこかに行ってしまった。

カースさんがたまに居なくなるのはよくあることだ。

全く何を企んでいるんだろうねあの人。

そんな事を考えつつうつらうつらしていたら小さく声をかけられた。



「魔王殿」

「ん?アモンさん?」



見るとアモンさんは頭部だけ梟身体は人間の悪魔の姿に戻っていた。



「モンスターに囲まれている」

「えっ」

「静かに。安心しろ。私の敵ではない」

「そうなんですか。よかった」

「だが私の風は少々大味でな。魔王殿を巻き込まないとは言えない」

「なるほど。私は安全な場所に逃げておけということですね」

「そうなる」

「解りました。私はどの辺にいたらいいですか?」

「そうだな…北に向かってひたすら走ると崖がある。そこまで逃げ切ってくれれば問題はない」

「そ、そんなに逃げなきゃ駄目ですか?」


どんだけ攻撃の範囲広いの。



「ふむ。下手な場所に逃げられると別のモンスターに襲われかねんからな」

「全力で崖まで逃げましょうとも」

「では、参ろうか」



心なしかアモンさんがワクワクしている気がする。

本当に戦うの好きなんだねー悪魔ってわかんない。

俺より強い奴に会いに行ってくる!見たいな感じ?



「魔王殿、後ほど会おう!」



ビュゥゥゥ!



大きな風音を合図に私は走り出した。



走って



走って



走って



走って



……………迷った。

ここどこ!?崖が全然見えてこないよ!

大体北ってどっち?


現状から察せれるだろうが、私は方向音痴だ。

乙女ゲー主人公とかに多い設定である方向音痴は私も搭載されているのだ。

これで迷いに迷って攻略対象と出会い、そして恋愛しちゃうわけである。

ーが、生憎ここは乙女ゲーの世界ではなく弱肉強食のファンタジーな世界である。

ヘタをすれば死ぬ。方向音痴で死ぬ。



「どどど、どうしよう」



来た道を戻るとアモンさんの攻撃の餌食になるかもしれないし…

だからといって闇雲に進むのもどうかと思う。

ーと迷っている時、嫌な音がした。

ガサガサという草を掻き分ける音。そして動物のうなり声。

やばい。別のモンスターに見つかった!



「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」



私は猛ダッシュで逃げる。

もう、毎回毎回思うけどなんで私は攻撃をするすべがないのかなぁ!?

須賀君の馬鹿チート!能力半分でもいいから私に寄越しやがれ!

頭の中でそんな事を思い現実逃避してみるも、現状は変わらない。

いやむしろ悪化している。

何故ならモンスターは私を追いかけてきており、だんだんと距離は狭まっているからだ。

森の中なので木が邪魔をして私に飛び掛れてないようだけど、時間の問題だ。

やばい!本格的にやばい!どうしようどうしよう!

ーと、その時。景色が変わった。


崖だ。


下には川がザァザァと流れている。

目的地にはたどり着いたけどモンスターが追いかけてきているのであまり意味がない。

私は深く考える間もなく決断した。そうするしかなかった。



「ええ~~~~いっ!」



景気よく駆け出した私はそのまま森を抜け、崖を飛び


そしてそのまま川に落ちていった。




どぱーーーーーーん!








そこで私は意識を失った。



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