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悪魔アモンとの契約

長いです。

そして一人称と三人称混じってます。読みにくいかと思います。

すみませんが根性で読んでくださると幸いです。


ブラックマウンテン。


そこは木も草も花も地面も全てが黒い漆黒の山。

その山の生態系の頂点に君臨するのはブラックドラゴンである。

この世界のドラゴンは、よくあるファンタジーの中のドラゴンとはちょっと違う。

なにが違うのかと言えば、この世界のドラゴンは基本的に人型の姿をしているのだ。

自身や仲間の危険を察知し、戦闘態勢になったときのみ皆さんの知っているあの伝説のドラゴンの姿になるのである。

ドラゴン人間…といえばわかりやすいのか、解りにくいのか。


そんなブラックドラゴンの若い衆二人が、昼飯のために釣りをしていた時のことだ。

一人の小さな少年が現れた。

種族は判別できなかった。人間?エルフ?

どちらにせよ、多種族との交流を苦手とするブラックドラゴンの若い衆はその少年を山から追い出そうと近づいた。


すると少年は若い衆に尋ねた。



「ねぇ、ブラックマウンテンの主に会いたいな」













「……車や新幹線って偉大だったんですね…私は現代科学のすごさを身にしみて感じています」

「魔王殿、それは何かの呪文か?」

「いえ、なんでもないです」



ブラックマウンテンに行くと決めてはや数日。

歩けど歩けど目的地は見えてこず、森ばっかり。

アモンさんに羽ばたいてもらえば数時間で着くそうなのだけど、勇者法とかにより許可なく空を飛ぶと勇者が何処からともなくやってきて成敗されるらしい。

そんな馬鹿なーと思って一度ためしにやってみたら数分で須賀君がやってきたので慌てて隠れたりもした。

須賀君よ、貴方はセ○ムか。



「徒歩で何日かかるんでしたっけ?」

「あと一週間くらいかな~?魔王様、ガンバ☆」



カースさんに励ましに本気で殺意を覚える。

一週間って、一週間って…私とカースさんとアモンさん、二人と一羽のこの旅って結構キツイ。

会話の内容に困る。救いはガチで梟姿のアモンさんが可愛いことくらいだろう。



「そんな人を射殺さんばかりの顔はよしてよね。機嫌直してよ魔王様。もうすぐ町だから、今夜は野宿じゃないよ。ゆっくり寝れるよ」

「おお!異世界生活数日目にして初の宿屋!ふかふかのベッドだ~!」

「うんうん。魔王様の笑顔が見られて僕も嬉しいよ」

「-て、ちょっと待って。私この世界のお金持ってないんですけど」



今までは野宿だったのでお金なんて必要なかったけど、宿屋に泊まるとなると話は別だ。



「そんな事か」

「え、アモンさんお金持ってるの?」

「人間界の金銭など、持っているわけないだろう」

「そ、そうですか。なーんだ…」

「そこらへんの通行人から奪えば済む事だろう」

「はいアウトーーー!」

「なぜだ?」

「喝アゲ反対!そういう悪者っぽいことは駄目です!」



う~っ。やっぱり町に着いても野宿なのかなぁ…

水浴びじゃなくって、ちゃんとしたお風呂ははいりたいのに。

それに服だって着替え欲しいし。ご飯だってちゃんとしたの食べたいし。

私のふかふかベッドが…!あああ…。



「ふふふ、魔王様。僕のこと忘れてもらっちゃぁ困るよ」

「どうしたんですかカースさん。その不敵な笑みは」

「僕がお金出してあげるよ。宿も食事も全部」

「……」

「あれ?何そのリアクション」

「…何が望みなんですか?」

「そんな恐喝者に敗れたかのような台詞が言われるなんて心外だなぁ」



どの口が言うか。



「望みなんてないよ。魔王様が勇者を倒すこと以外はね。お金を出してあげるのは、資金稼ぎなんかに時間をかけて欲しくないだけさ。僕は魔王様が労働している姿を延々見たくて召喚したわけじゃないんだから」



まぁ、それを聞けばカースさんらしいと納得もできるか。



「宿帳に書く名前は偽名にしようか。一応勇者対策ね」

「そうですね。宿帳で見つかったら居たたまれないですしね」

「なんて名前にしようか?魔王様をターニャ、僕がカーラルでいいかな。性はリベルド」

「へぇ、兄妹設定なんですね」

「いや、夫婦だけど?」

「却下します」



冗談ではない。

こんな怪しげな旦那が居てたまるか。



「だって、兄妹で一部屋しか借りないって不自然じゃない?」

「いえべつにそうは思いませんけど…って、一部屋しか借りてくれないんですか!?」



えー、お金だしてもらってなんだけど、出来たら別室がいいんだけど…

やっぱり私も年頃の娘なわけで、そういうの気にするわけで。

でも、おごってもらう以上文句はいえないけど…うーん…



「魔王殿」

「なんですか?アモンさん。今私は究極の選択を迫られているんですが」

「魔王殿。私と契約をしろ。そうすれば、もし万が一ミスターカースが襲ってきても守れる」

「!」

「嫌だなーアモンちゃんまで。僕は紳士なのに」

「契約って、どういうことですか?」



私は梟姿のアモンさんの小さな顔をじっと見る。

表情からアモンさんの真意を読み取るのは難しそうだったが、そうするしかなかった。

アモンさんはポーカーフェイスのまま続ける。



「私達悪魔は契約をして縛りつけることが出来る。契約さえしてしまえば、契約者の危険をすぐに察知でき、駆けつけることができる。その悪魔に出来ることならなんでも命じることができる。契約者は絶対だ」

「普通は何かを代償・生贄を差し出して契約にこぎつける人間が多いね。勇者みたいに代償なしに力づくで契約しちゃうのは特例中の特例だね」



アモンさんの説明をカースさんが補足する。

補足っていうか余談?



「私は勇者のやり方は好きではない。契約は悪魔にとっても大事な儀式だ。代償もなしに命令が出来るのはルール違反だ」



世の中キブアンドテイクというわけね。



「アモンさんの場合、契約には何が必要なんですか?」

「……そうだな」



思案中のアモンさん。

うう。この間が少々緊張する。

なんだろう?寿命とかかな?それとも生き血?

ーってそれは吸血鬼か。

でも、なんでも命令できるんだからそれなりの代償なんだろうな。



「思いつかないな」



ずるっと私は思いっきりこけた。

そりゃもうギャグマンガばりに。



「なんですかそれ」

「うむ。何百年と生きてきたが、私は契約をしたことがなくてな」

「え、そうなんですか」

「アモンちゃん。強いからねー。呼び出せるほどの術者いなかったんだよね」

「ああ。同級生達は『今度人間に呼び出されたら生気をもらうんだー』と言う会話をしていて少々羨ましかった時期もあった」



ど、同級生って。魔界にも学校あるんだ。

ていうかそんな会話人間側からしたらシュールすぎる。



「しかし、私は人間の生気も寿命も興味ない。金や宝石もいらないし、魔王殿はそんなの持ってはいないし、後は処女くらいのものだが」

「しょ、処女って…っ!!」



た、確かに処女ですけど、さらりと言わないで欲しい!



「……魔王殿の処女を貰ってもな…」

「ちょっとどういうことですかっ!私じゃ魅力不足ですか!?」



別に処女捧げるつもりはないけど、でもその言い草傷つく複雑な乙女心。



「確かに魔王様ちょっと足が太いもんねー」



私はカースさんが言うその太い足で彼の足の脛を蹴った。

地味に効いたみたいでカースさんは無言しゃがみこみ、脛を擦りまくっている。



「私は色魔ではないので処女を特別欲しいとは思わないと言う意味だ」

「あ。そうなんですか。よかった」

「しかし、私は魔王殿に簡単に死んでしまっては困る。面白いものが見れなくなるからな。だから、雑魚くらいなら私が蹴散らした方がいいと思ったんだ」

「だから契約しろなんて言ったんですか」

「そういうことだ」

「契約者の命令は絶対じゃないんですか?私が全面的に守れって言ったら雑魚以外も倒さないと駄目ですよ?」

「それは盲点だったな。魔王殿。できればそれは命じないで欲しい」

「ええー」



確かに、肝心なところで助けてくれなさそうとはいえアモンさんと契約をするのはお得そうだ。

けど代償が不明なのもあるし

それに…



「きゃーーーーーっ!」

「!!?」



突然子供の悲鳴が森の中に響いた。

私は声のした方に走り出す。



「何処に行く魔王殿!?」

「何処って、悲鳴のした場所に決まってるじゃないですか!助けないと」

「行ってどうするのさ?魔王様はこの世界最弱なのに」



馬鹿にしたかのようなニヤケ顔でカースさんが言う。

そうだ私はこの世界最弱だ。

子供や老人よりも私は弱い。

助けに行ったって、意味がないかもしれない。

それでも



「行ってみないとわからないでしょ!!」



そう言って私は走り去った。






「あーあ。行っちゃった。アモンちゃんはどうするの?」

「私は…」














「ごめんなさいご主人様!お許しください!もうしません!」

「ああん!?お許しくださいじゃねーっつーの!お前のせいで俺の服が水浸しだ!!」




町が近い場所だからだろうか。

声のした場所には井戸があった。そしてそのすぐそばに大人の男と、一方的に殴られている子供がいた。

そして私は気づいた。

子供のほうは人間じゃなかった。明らかに人間じゃないとがった耳と馬の足を持っていた。

下半身が馬の身体なのでキック力はありそうなのに、子供は泣きながら蹴られるがままだ。

男のほうは、右の上着の裾が少々濡れていた。

まさかこれが原因で蹴っているの?

なにそれ。許せない。

すっごく怖いけど、勇気がいるけど、見過ごせなかった。

私は声を上げた。



「あの!やめてください!」

「はぁ?誰だよアンタ」



緊張で声が裏返った。足も震えている。

けど私は答えた。



「その子、謝ってるじゃないですか。そんなに蹴ることないと思います!」

「俺の契約した悪魔だ。俺がどう扱おうとアンタには関係ないだろ」



ドゴッ!

男はまた子供を蹴った。



「うぐぅ!げぇ!」

「やめて!」

「俺じゃなくって勇者様から貰い受けた悪魔だけどなー。本当、勇者様々だぜ。代償を払わなくてもこんな奴隷ができるんだからな」



奴隷。

契約は、悪魔を縛る。

奴隷にしてもいい。どんなにひどい目にあってもいい。

契約者の命令は絶対。

けど、今の場合はどう?

代償はなく、不本意に命令される。殴られる。蹴られる。

悪魔だから。契約したから。


須賀君。

貴方は本当にこの世界が正しいと思っているの?


アモンさん。

私、決めたわ。



「痛いよぅ!痛いよぅ!ごめんなさい!ごめんなさいご主人様!」

「うるせぇ!下級悪魔が!ぎゃーぎゃー喚くんじゃねぇ!」

「だからやめてって言ってるでしょ!!」



私は男と子供の悪魔の間に入り込み、子供の悪魔を守るように抱きしめた。

でも目は挑むようにキッと男を見た。

少々涙目なのは気にしない。



「なんだよさっきから!アンタには関係ないって言ってるだろ!?」

「か、関係なくなんかない!」



アモンさん、私決めた。

私は私のやり方で、この世界を救う。

須賀君をぎゃふんと言わせる為の、元の世界に帰る為の手段だけじゃなくって。

人間だけじゃない、悪魔も、魔界人も全部全部救いたい。



「私は魔王なんだから!」



けど、世界最弱の私だけの力じゃ無理だ。

だからどんな代償を払ってでも、アモンさんと契約する。

そう決めたんだ。



「はぁ?魔王?何言ってんの?頭正常?」



ボキッ、ボキボキボキッ

ものすごく怒った顔で指を鳴らす男。すごく戦闘態勢。

…あはは。私女の子なんだけど手加減するとかそんな意志全くなさそう。

この世界じゃそんな女の子に暴力を振るわないとかいう甘い概念ないのかもなー

こんなことならさっさとアモンさんとの契約を済ませておけばよかったよ、はははははは。



「どうみたってアンタ人間なんだけどー。魔王っていうならよ、勇者法に則って退治してもいいってことだよな」



勇者法め。本当に私に都合の悪い法律ばっかりだな。

ぼっ!

いきなり私達の周りの草が燃え始めた。



「きゃぁ!」

「ひぃぃぃ!ご主人様の魔術だっ!」

「魔術ですって…!?」



そうだったこの世界は誰もが何かしらの魔術かスキルが使えるんだった。

この男の人は火使いってことね。



「ま、魔王様は、な、なんの能力なの…!?」

「ごめん、私世界最弱だからなにもできない」

「えええっ!?」



ご、ごめんよ…助けに来たのが弱い0能力者で…



「なんだよ、随分弱い魔王だな。笑える。このまま燃えて滅びろよ!」

「ちょっと!この子まで燃やす気!?」

「いいんだよ。そいつ役立たずだし。勇者様にもっとすごい悪魔貰うからいらね」

「そんな!ご主人様!」

「最低ね!」

「そう思うなら魔術で俺を攻撃してみろよな!それともスキルか?なんも出来ないんだろ!?ははははははははははははっ!」

「~~~っ!」



悔しい。

どうして私には魔術もスキルも使えないの。

どうして私は弱いの。

こんな小さい悪魔の子一人守れやしないのに


どうして私は魔王なの?



火の手が近づいてきた。

私は悪魔の子を守るように抱きしめる。

意味はないってわかってるけど。私にはそれしか出来なかった。

ぎゅっと目を閉じ、焦げ付く匂いを感じていた。




「やれやれ魔王殿。私を忘れてもらっては困る」



聞き覚えのある低い声が耳に届いた。

そして、風が吹く。


ビュゥゥゥゥゥゥゥッ!


風はだんだん強くなり、もはや立ってはいられないほどの強風が渦巻く。

そのおかげで私達を囲む火はすっかり消えてしまった。


「な、なんだこの風は!?俺の火が消されるだとっ!」

「なんだ。この火は貴様の魔術か。弱すぎて焚き木かと思った」

「誰だよ!?何処にいるんだよ気持悪りぃ!出てこい!」

「落ち着きのない男だな」



木の陰からスッと出てきたのは初めて会った時の姿をしたアモンさんだった。

首から下はシックで上品なスーツを来た人間なのに、首から上は梟だ。

最初は気を失いそうになったものである。今は慣れた。



「あ、悪魔か。知ってるぞ。勇者法で悪魔は人間を傷つけることはできないんだぞ!」

「それがどうした」

「へ?」

「私は魔王殿の悪魔アモンだ。勇者の決めた法律を魔王の悪魔が守ると思っているのか?」

「そ、そ、そんなっ…!」

「吹き飛べ」



ゴォォォォォォォォッ!!



「うわーーーーーーーーーー!」



男は突如発生した竜巻により遠くに飛ばされてしまった。

すごい。これがアモンさんの魔術か。

けど、死んじゃってないよね…?私人死には嫌なんだけど。



「安心しろ。着時事の衝撃は気を失う程度にしておいた」



なんかアモンさんに心読まれた。

私、そんなに顔に出る?

でも、死んでないならいいや。



「あの、アモンさんありがとうございました」

「気にするな。私もこんなところで魔王殿が死んでしまっても困る。あんな雑魚に殺されてはつまらない」



うん。アモンさんってそういう人。



「ま、魔王様に…アモン様…あの、ありがとうございました」

「うん。私はなにもしてないけどね」

「そんなことないよ。僕、庇われて嬉しかった」

「それに魔王殿。貴殿のやることはこれからだ」

「へ?」

「その子供の契約、切ってやろうとは思わないか?」



そっか。この子の契約者はさっきの男。

死んでないのなら契約は有効なのだろう。それならなんにも変わらない。



「切ることができるんですか!?」

「その子供の腕輪を外せ。それが契約の証だ」

「これが?」



シンプルなデザインの黄金のな輪だ。

綺麗。これ本物かなぁ?

…っていうか、外すだけでいいの?


「アモンさんがするわけにはいかないんですか?」

「魔界人には契約の証を外すことはできない。契約者と同じ種族だけだ」

「へ~」

「しかも勇者を施したは異世界人。今までは誰も勇者以外で契約を切ることが出来なかった」

「え。それって」

「同じ異世界人の魔王殿なら可能だということだ」

「……っ!」



嬉しかった。

ようやくこの世界で私のやれることを見つけた気がした。



「じゃ、外すね」

「うん」



腕輪は案外簡単に外れた。

まるで契約の証とかでもない普通の腕輪のように。

けど、悪魔の子の顔がそうではないことを物語っていた。



「うわぁ!魔王様ありがとう!僕嬉しい!」

「そう。よかった」

「お礼は何がいい!?僕ができることならなんでもするよ!」



悪魔とは対価や代償を気にするせいか、礼などもちゃんとしているようだ。




「それなら、人間や他の種族と仲良くして欲しい」

「え」



悪魔の子はきょとんとした。アモンさんも似たような表情をしていた。



「私は魔王として、この世界に住む人全員を幸せにしたい。今の世界のような人間しか幸せじゃない世界じゃなくって、魔族も他の種族も全員幸せにしたいの。だから貴方も協力して?」

「……」



私は祈るように悪魔の子の顔を見つめた。

やっぱり、難しいだろうか?悪魔なのに。さっきまで人間に奴隷扱いされていたのに。



「……いいよ」

「へ?」



私が間抜けな声を出すと悪魔の子は無邪気な笑顔を見せた。



「いいよ。人間と仲良くなれるように僕頑張るよ!」

「ほ、本当!?」

「うん。僕、嫌な人間たくさん知ってるけど、魔王様みたいな面白くていい人間もいるってわかったから」

「……っ!」

「じゃぁね、魔王様にアモン様!またいつか会おうね!」



そう言って悪魔の子は去っていった。

私は泣くのを必死にこらえて手を振っていた。



「…魔王殿」

「はい?なんですか?」

「私との契約、代償の件なのだが…魔王殿に関しては必要ないと判断した」

「え」

「魔王殿は私を奴隷扱いしない。ひどい命令をしない。そうだろう?」

「するわけないです」

「だったらかまわない。それに、私は貴殿と一緒にいると楽しい」

「楽しいですか」

「ああ。だからかまわない」

「ありがとうございます。けどあの、代償がないから契約するんじゃないです。私、代償があってもアモンさんと契約したいと思ってました。私にはアモンさんの力が必要なんです」

「ふふ…わかっている。貴殿は世界最弱の魔王だからな。私くらいの強い手駒がいなくては話にならない」



あれ?梟の顔だからわかりづらいけど、

今アモンさん笑った?

なんか嬉しい。



「で、どうやって契約するんですか?」

「そうだな。いろいろ形式があるのだが面倒だ。その腕輪を私にはめろ。それで契約成立だ」

「ええ!?そんなのでいいんですか!?」

「その腕輪には勇者の施した契約の術があるからな」



さっき悪魔の子から外した金色の腕輪…私には普通の腕輪に見えるけど、魔術が染み付いてるんだこれ…

私はアモンさんの左手をとる。

そして腕輪をつける。

さっきまで悪魔の子の小さい手首にピッタリだったのに、不思議と今度はアモンさんの手首にピッタリと収まった。



「契約成立だ。改めてよろしく頼む。魔王殿」

「こちらこそよろしくお願いします、アモンさん」



こうして私は本当の意味でアモンさんを仲間にした。










それからしばらくしてカースさんと合流した私達は町にたどり着いた。

勿論、アモンさんは梟の姿に変身してもらっている。

梟を連れた二人兄妹…町の人たちはそう思っただろう。

これで今夜はぐっすり眠れる。

結局一部屋しかカースさんは宿を取ってくれないけど、アモンさんがいるし、大丈夫でしょう。


…て、思っていたのに。



「あーごめんごめん。ウチの宿はペット禁止なんだよね」

「!!?」

「あらら。これは僕も予想外だねぇ」


やっとたどり着いた宿屋。

なのに女将さんの口からでた台詞はペット禁止。

そんな!この町ではここしか宿がないのに!



「お、お願いします!私この梟ちゃんが傍にいないと駄目なんです!」

「でもねぇ…馬小屋に置くことはできるけど部屋には入れて欲しくないんだよ。臭くなるだろう?」

「うちの子は臭くなんかないです!」

「も~ターニャは鳥離れできないと駄目だゾゥ☆お兄ちゃんと二人っきりでいいじゃないか」

「それが一番やなんです!女将さん!このとおりです!お願いします!」

「ええ~困るよ」

「魔王殿必死だな」

「だってカースさんと二人っきりって何もなくても地獄…ってアモンさんはしゃべっちゃ駄目です!今の貴方は可愛い梟なんだから!」

「……ホー」



大人しくアモンさんが梟になりきったところで私はなおも女将さん拝み倒す。

困る女将さんに、楽しそうなカースさん。

3時間の奮闘の末根負けした女将さんは他のお客さんに梟がいるのをバレないようにするのを条件にアモンさんも部屋に入れてもいいことになった。



「魔王様、そんなに僕と二人っきりの夜が嫌?」

「そうですね。嫌ですね」

「傷ついちゃうなぁ」



嘘付け。



「…騒がしいな」

「あ。すみませんアモンさん。起こしちゃいました?」

「いや。魔王殿に言ったわけではない」

「どうしたの?アモンちゃん」

「いやなに。少し、森の向こうが騒がしいなと感じただけだ。気にするな。気のせいかもしれない」

「ふーん」



カースさんは興味なさ気にそう答えたが、私は気になった。

森の向こう…アモンさんが感じた方角の先には、ブラックマウンテンがあるのだから。











ブラックマウンテンの頂上では朝日が差し込んできた。

少年が朝にブラックドラゴンの若い衆に会って、一晩が過ぎたのだ。



「あ。もう朝か。思ったより時間かかっちゃったなー」


少年は自身の小さな手を見てそう言った。


ドシーーーーン!



少年の背後で大きな物音がした。

少年は驚かずに振り返る。




「流石ブラックマウンテンの主とブラックドラゴン一族だよね」



少年はニコニコしながら倒れ伏したブラックマウンテンの主…ブラックドラゴンの長を見た。

長の後ろには沢山のブラックドラゴンが倒れている。



「お主…いったい何者じゃ…?たった一人で我らを倒すなんて…」



行き絶え絶えの状態で、なんとかその言葉だけ長は言った。

すると少年は笑って答えた。



「シャラはシャラだよ。それ以外の何者でもない」



少年、シャラの赤い目がきらりと光った。


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