八戦士を探せ
「八戦姫か。須賀君もやっかいだけど、彼女達もやっかいね」
「そうだな。一対一では負ける気がしないが流石に私も複数では勝つのは難しいだろう」
「私なら瞬殺ですね…」
「そうだ。貴殿はこの世界最弱の魔王なのだからな」
「……うう。チート設定の須賀君が憎いっ!このチート!最強主人公め!」
「ふむ。魔王殿、その恨みがましい表情なかなかいいものだ」
「え、そんな顔してました?ショック」
そんな会話をしながら私は森の中を歩いている。
人間界の森なのでアモンさんには普通の梟姿に変身してもらっている。
時折私の肩に乗り、羽を休める姿は可愛い。
しゃべる声は渋い声なのはこの際気にしないわ。
「で、魔王殿は八戦姫に対抗する者達を探そうというのか」
「そうです。そうですね…チーム名は八戦士とでもしておきましょうか」
とにかく戦力集めである。
妖精でもエルフでもドワーフでもモンスターでもいいから、アンチ須賀君の人たちに仲間になってもらうのが私の目的である。
須賀君はかなり強引に魔王討伐をしたみたいだからアンチが多いと思うのよね。
そこをつくわけだ。
「魔王殿のその姑息さ、悪くない」
「びっくりするくらい嬉しくない言葉をありがとうございます」
とはいえ、私はこっちの世界に来て浅いしアモンさんも情勢には無関心だ。
誰がアンチ須賀君なのかわからないので、人里で情報収集することにした。
そんなわけで、人里に向かって森を進んでいるわけだ。
「けど、すぐに見つかるかな?アンチ須賀君派なんて…なかなかそんな事、言いづらい状況なんじゃないかな?」
「そのとおりだよ魔王様」
「ぎゃっ!」
突然目の前に現れたのは須賀君が来たのを察知して真っ先に逃げた全ての元凶、魔法使いのカースさんである。
「ミスターカース!貴殿という男は…」
「なにアモンちゃんその呆れた顔はさ。魔界では敵前逃亡なんて日常茶飯事でしょう?」
「貴殿にその必要はなかったと思うが、まあいい。それよりも何しに来た」
「ん~、暇つぶしに魔王様に情報でもあげようかなって思って」
暇つぶしって…本当に自由人だよねカースさんって。
「情報ですか?」
「うん。八戦士にピッタリの人材の情報。欲しいでしょ?」
「「……」」
「あれ?二人ともどうしたの?そんな疑わしい目しちゃってさ」
「そりゃしますよ」
「貴殿は信用ならん」
「ひどいなー二人とも」
口ではそう言ってるけど楽しそうだよねカースさん。
私は、カースさんを信用してないというよりも、無茶振りな人物を紹介されそうで怖いという感じ。
アモンさんの時といい…カースさんは私がワタワタしてるのを見るのが楽しくって仕方ないんだろう。
でも、無茶振りな人物の方がきっと須賀君や八戦姫に対抗できるんだろうな。
凡人であり、この世界最弱の私では、そこまでしないと須賀君を倒すことができないんだ。
「嫌な予感しかしませんが、カースさんの情報を教えてはくれませんか?」
「そんな渋々な態度で欲しいって言われてもねぇ。魔王様は女の子なんだからもっと可愛くできないかな?」
「ワー!カースサン情報ヲアリガトウゴザイマスー!スッゴクウレシイナー!」
「……魔王殿…演技は得意ではないのだな」
「アモンさん。可哀そうなものを見る目で見ないでください」
「まー面白かったから合格点あげちゃうよ。魔王様、このさきひたすら真っ直ぐ行くと真っ黒な植物しか育たないブラックマウンテンがあるんだ。そこに向かいなよ」
「ブラックマウンテン?」
なんかコーヒーの名前みたい。
「どうせならさ、八戦姫には居ない種族の奴が何人かいた方がいいと思うんだよね」
「…っ!まさかミスターカース、もしかしてブラックマウンテンの主を八戦士に招こうというのか?」
「そのとおり!アモンちゃんは主との交渉の時は手伝っちゃ駄目だよ?魔王様と主が交渉する場面を僕は見たいんだからさ」
「貴殿は悪趣味だな…だが、それは私も同じ。面白いな」
「いやー、アモンちゃんは話がわかるねー」
二人だけで盛り上がられても困る。
ていうか、会話を聞いて嫌な予感が確信に変わっちゃったよ…
「ブラックマウンテンの主さんって…すごく強い方なんですか?」
「そりゃもう!味方になれば百人力!」
「確かに。味方になればな」
「み、味方になれなかったら…?」
「踏み潰されるかな?」
「魔王殿は炭にされるかもな」
「ひぇぇぇぇぇっ!」
わ、私が何をしたっていうんだ!?
「ふ、踏み潰すって、炭にされるって…!?ブラックマウンテンの主さんって何者なんですか!?」
私がそう聞くと魔法使いと梟の姿をした悪魔は教えた。
「遥か古代からこの地に住まい、神に近いといわれる伝説のモンスターだ」
「で、伝説のモンスター?」
「ブラックドラゴン……圧倒的なその力、チートの勇者を倒すには不可欠だよ」
もし交渉失敗して炭にされたら須賀君の枕元に夜な夜な立って呪ってやる。
私はそんな縁起でもない誓いをたてた。