婚約破棄・処刑エンドから巻き戻し転生しましたが、その前に日本でマンガ家やってました
よろしくお願いします。
私の名前は、ジュディ。ステイトン侯爵家の長女として生まれた。
私には幼い頃から決められた婚約者がいる。ブライアン第一王子殿下だ。
子供の頃はそれなりに仲が良かったとは思う。だけど、少しずつ大人になるにつれて、互いの心が違うものを求めていくのはどうしようもないこと。
私は彼を大切に想っていた。たとえ決められた婚約であったとしても、彼を支える1人でありたいと、そう思って努力してきた。
だけど、貴族が15歳になったときに通う学園で、彼は運命の人に出会ってしまった。
ポリー・フレーザー男爵令嬢。彼女との出会いが、彼を狂わせた。
運命の愛だと、彼は隠すことなく私に伝えた。
王家には側室制度がある。彼女は私達が結婚して世継ぎが誕生した後にでも、そこに入るのだろうと、そう思っていた。
だが彼は、そして彼を利用して甘い蜜を求める者たちは、そこまで待てなかったようだ。
学園の卒業パーティで、壇上に上がった彼は、ポリーを隣において、宣言する。
「ジュディ・ステイトン!君は、このポリーの命を狙った、反逆者だっ!君との婚約を破棄する。そして、君には処刑を命ずる!」
意味がわからなかった。王子が勝手に婚約を破棄し、勝手に判決を言い渡し、そして、刑を実行するなんて。
ポリーの命を狙うだなんて、そんなことはしていないと言いたかった。だけど、その前に、彼の護衛が剣を取り、壇上から飛び降りた。勢いそのままに、私に剣を振るう。
一瞬の出来事だった。
微かに周りの声が聞こえる。悲鳴、叫び声。
「王子、なんてことを……」
「誰か、助けて!」
「先生を呼んできて!」
誰かが私を抱きかかえているのがわかった。
うっすらと開く目には、微笑む王子の姿が見える。
ああ、この人は。私が大切に想っていたこの人は。私が欲しかった笑顔を、今ここで見せるのね。
あの人に言いたかったことは沢山ある。だけど、何も言えず、私の命は、消えた。
*****
「はっ」
目が覚めた。ベッドの中。汗が止まらない。
夢だったの?いや、夢じゃない。では今はいつ?そしてここは?私は、誰?
「お目覚めですか、お嬢様」
メイドのアイニが部屋に入ってきた。
「どうなさいました、悪い夢でも?まあ、ひどい汗。朝ですが、湯浴みなさいますか?」
「……そうね、準備してくれる?」
「かしこまりました」
退出しようとするアイニに声をかける。
「ねえ、今日は何日だったかしら」
「はい、春の始まりの月の4日でございます」
「そう、何年?」
「ファレス67年でございます」
「ありがとう」
不思議そうな顔でアイニが去る。
私はベッドから降りて、鏡の中の自分を見る。
「そう、今日はあの日から5年前なのね」
そこには、葡萄色の長い髪と紫黒の瞳の、あの時より少し幼い自分がいた。
「どうして巻き戻ったのかしら。それにどうして……」
私の独り言は、途中で止まった。なぜなら、
「お嬢様ー!」
叫び声と共に、扉がぶち壊されたからである。
「何事?」
「お、お嬢様はご無事ですか?ああ、生きておられる、生きて……」
私の護衛である、リックが泣きながらゆっくり私に近づき、そしてそのまま座り込んだ。大きな音に驚いて多くの使用人がやってきて、その惨状に戸惑い立ち尽くしている。
「いろいろ思うところはあるけど、とりあえずリック?」
「はい?お嬢様」
「着替え前のご令嬢の部屋をぶち破って、何してんのよ」
「も、申し訳ございませーん!」
とりあえず、追い出した。
朝の支度と朝食とお父様からのリックへのお叱りの後で、私はリックを部屋に呼んだ。
部屋の扉は修理中なので、しばらくは客間を使うしかない。そこには私とリックが、テーブルを挟んで対面していた。
本人は座ることを固辞したけれど、見上げると首が痛くなると言ったら、渋々ソファに腰を下ろした。
メイドのアイニは、私の後ろに控えている。アイニは口が堅い、私の忠臣だ。彼女にはこれからの話は他言無用と云い含めてある。
「それで、リック。今朝のことだけど」
「はいお嬢様」
リックが背筋を伸ばした。彼は胡桃色の短い髪と栗色の瞳のゴツい護衛だ。年齢は私より3歳ほど年上で、昔から私の警護をしている。
長年の付き合いの彼がこれほど真剣な眼差しで私を見ているのは、正直初めてな気がする。もしかして彼も。
「あなたは、私が死んだと思っていたの?」
「はい、そうです」
その答えに、アイニも驚く。
「なぜお嬢様が亡くなるなどと」
「そ、それは」
「アイニ、今朝、私は今日が何日なのか聞いたでしょ?」
「はい」
「それはね、私は18歳で死んで人生が巻き戻って、今日から人生をやり直しているからなのよ」
「え、それはどういう……」
「私もです。私も殺されました。お嬢様が殺された後に、奴の護衛に」
「そう、あなたも」
「はい」
戸惑うアイニに、自分が殺された時のことを話して聞かせた。王子の浮気、婚約破棄からの王子独断による処刑。あまりにも惨たらしい内容に、アイニが慄く。
「ですが、今お嬢様はこうして生きておられます。そのようなことは……」
「そうよね、普通は信じないわ。そうね、今日は……アイニ、明日の朝刊の内容を教えましょうか?ルオッカ伯爵の家に査察が入るのよ。それで、長男の不正が明るみになるの」
「そうなのですか?」
「とりあえず、今日は信じてもらえなくても、私達の話を聞いていて頂戴。信じるのは明日以降でいいわ」
「はい、お嬢様」
彼女は嘘は言わない。私に取り入ることもしない。だから信じてもらおう。今生も。
「それで、リック。あなたはどこまで記憶があるの?」
「はい、お嬢様と同様だと思います」
「そう、それなら私しか知らないことを言って見て」
もしも彼も同じなら、知っているはず。
「巻モドリ子先生」
「は?」
アイニが驚く。
「他には?」
「私はアシスタントBでした!」
「やっぱ、お前かいっ!」
「はい、モドリ子先生〜」
私達は、ハイタッチをかました。スパコーンといい音が炸裂した。
*****
私には、前世の記憶がある。とは言っても、その前世はジュディが王子に殺された後の話である。
王子に殺されて、普通はそこから巻き戻るのがセオリーなんだろうけど、私の場合はそこから一度日本で生まれ変わっている。日本で大往生してから、今の自分であるジュディの過去へ巻き戻ったわけだ。
「私はこことは違う世界で生まれ変わっていたのよ。日本っていう国でね」
「はあ」
アイニは話の展開についていけず倒れそうになったので、一緒に座ってお茶を飲んでいる。
「そこで、マンガ家をやっていたのよ」
「私は先生のアシスタントBでした」
うんうんとリックが頷く。
「あの『マンガカ』とはどのようなお仕事なのでしょう?」
「そっか、わからないわよね」
「はい」
部屋の奥にある机に行き、そこにあった紙に絵を描いていく。
「まあ、これは!」
「こちらの世界の絵画とは異なるタッチでしょ。これを紙に書いて、セリフもつけるの」
「小説の挿絵とは違い、絵そのもので物語を語るのです」
「これなら文字が読めない者でも、楽しめそうですわね」
「そうね、こちらの世界でも受け入れてもらえそうかしら」
私の目が、きらりと輝いた。それをリックが見逃すはずがない。
「お嬢様、我々のやることは、決まりましたね」
「ええ、まずは婚約解消ね」
「そっちですか?」
「そりゃそうでしょ?」
「でも、前回婚約解消しようとしても、ダメでしたよね」
そう、前回もお父様にお願いしたのだ。王子の気持ちが私にない以上、不幸になるのは目に見えていたから。だが、お前の魅力がないせいだとか、ハラスメント発言しまくられた。
「あのクソ親父」
「ヒイイ、お嬢様からクソ親父発言」
アイニが泣く。
「この程度で泣いてはいけませんよ、アイニ」
「予告が怖すぎます」
「それでは、こうしませんか?」
私達は作戦会議を行なった。
*****
「皆様、『マンガ』をご存知?」
「もちろんですわ。あんなに読みやすい書物があるのですね」
「それに内容も。うふふ、小説ではあのような恋物語はございませんもの」
「大胆な表現で、初めはとても驚きましたわ。でも両親は読むことを許してくださいませんの」
「私のところもですわ。でも、お母様もこっそり読んでいらっしゃるのよ」
ご令嬢たちがお茶会でコソコソ、マンガの話をしている。
隣の青年達も同様で。
「先日発売された『僕は君に恋の雨傘をさすんだよ』を読んだか?」
「ああ、雨の中に佇む女性。雨で服が濡れて」
「おおう、そこに男が来て、寒いと震える彼女をギュッと抱きしめて」
「たまらぬ」
「雨傘になりてえ」
「そっちかよ」
彼らの会話を録音してえ。そんな気持ちをおくびにも出さず、紅茶を優雅に飲み干す。
あれから私達はマンガを描き始めた。とは言っても、まずは風刺画から始めた。いきなり普通のマンガを発表しても、読者がついてこれないかもと思って。
今の王の政治に不満を持つ者は、意外と多くいるのだ。王自身はそんなに悪くはない。だがその取り巻きやら、王妃や王子には不安しかない。
問題を訴える新聞が発行されているのは知っていたので、そこに行って風刺画を見せたところ、ものすごく喜んでくれた。
「素晴らしい!これなら文字が読めないものにも訴えることができます」
「そうでしょう。他にもマンガという異国の文化がございますのよ」
「すんばらしい〜!内容も斬新ですね。これは是非ともうちで出版させてください!」
「前世の自分に聞かせてやりたいセリフ第一位を聞いた」
「リック、何泣いてんのよ」
「いや、前回は一生アシスタントだったもので」
「今は先生でしょ、あなたも」
私達は出版社と契約を結び、新聞用の風刺画とマンガを制作することになった。
この世界には電気はないけど魔道具や魔石があって、日本のように印刷が可能だ。だから、新聞も読めるし、本も多種多様揃っている。だけど、娯楽小説の内容は少しおとなしめというか。
日本では普通の恋愛モノでも、こちらの世の中では少し刺激が強いようで、そのおかげでかなりの反響があった。
風刺画もその表現方法はもちろん、内容もかなりの衝撃を与えたようだ。出版社の人々は国から逃げまくりながら、出版の日々を続けた。どうもスポンサーがいるみたい。そうでなければ、隠れて印刷もできないだろうし。
マンガも風刺画も世に広まり、それによって徐々に政治の流れも変わっていった。
マンガも風刺画も人気が凄いのはいいんだけど、現在描けるのは私とリックだけ。だって、他にマンガ家いないし。
とてもじゃないが手が足りなくて、アイニにも手伝わせた。
そうすると、アイニの他の仕事がどうしても疎かになる。すぐに侍女頭にバレた。
事情を説明すると、
「まあ、あの有名な、マンガの!」
すぐに追加で人を雇ってくれた。
そうすると、家令や執事も気がつく。事情を説明すると、
「おおお、あの高名な!」
すぐに私の家庭教師を解任して、学園も休学扱いにしてくれた。勉強する暇ないし。
そうすると、お母様、お兄様が気がついた。そして、お父様にも、バレた。
「おおお、あなたがあの『きゅるるん、アリスたんの魔法のお勉強♪』の作者の、アシス・タントビー先生でいらっしゃいますかあああっ!」
「まあああ、貴女が、マキ・モドリコ先生ですって?!『ラブラブな二人は今日もラブラブブ♪』大好きです!」
「うおおおおっ、俺のバイブルマスター!」
全員ファンだった。
「お父様、原稿忙しくて王子妃教育なんて無理。婚約解消したいのー」
「よろこんでーっ!」
あっさり婚約解消となった。
このままずっとうちにいて、ずっと原稿描いてていいんだよと、家族・使用人全員のお墨付き貰ったんだけど。
それに、執筆環境も改善してくれた。
「疲れた」
と言ったら、治癒魔法使いを雇ってハイポーションをガンガン飲ませてくれた。これ確か、死にかけても絶対助かるやつだよね。今飲めるんかい。
治癒魔法使いも我々のファンで、
「先生を死なせるわけにはいきませんから」
と、ドラゴン倒して材料入手していた。いや、モチベすげえな。
「スクリーントーンや、いろんな形のペンや定規が欲しい」
と言ったら、魔道具師に依頼して作ってくれた。いつかパソコンとかタブレットも頼みたい。
アシスタントも欲しいと言ったら、画家志望の若者を集めてくれた。だが、奴らはパトロン貴族目当てで集まってきた者ばかりだった。
面接は、家令と執事と侍女頭が行ってくれた。
「マンガなんて芸術ではありませんな」
「そうです。我々の絵画のような崇高な……」
「ほれ、アシス・タントビー先生の生原稿」
「「「うおおおっ!アリスたんの、涙目顔ドアップー!!」」」
「アシスタントになったら、先生と一緒に仕事できるのになー。先生が描いた原稿に自分も背景とか描けるのになー」
「え、アシスタントとは、そういうお仕事なのですか?」
「そうです。先生の原稿の補助。そして、一番最初の読者になれる特権付き」
「「「はいはいはーい!アシスタントになりまーす!!」」」
「お前ら、全員ファンやんけ」
全員土下座した。
「「「生意気言って、すんませんでしたー!!」」」
「んじゃ、一応誓約魔法かけるよ。どこかで先生のことバレると困るし」
「「「喜んでー!!」」」
アシスタント、大量導入成功。ただ、我々の生原稿見て号泣しながら拝んでいて、しばらくは使い物にならなかったが。
「ねえ、リック。マンガの内容なんだけどさ、そろそろもう少し大人の表現しても大丈夫かなあ」
「そうですね。みんなだいぶ慣れてきたと思いますよ」
「実はさ、例のマンガを描きたいのよね」
「例のって……巻モドリ子先生のヒット作『ブライ・アン王子の、優雅な恋人達』シリーズですか?」
「そう、あいつ」
私はニヤリと笑った。目はまったく笑ってないが。
実は、前世の私は、BとLのお話も書いていたのだ。元々そっちの方が有名だった。
きっかけは、日本でもジュディのことを思い出したことだ。
王子に殺されたことを思い出してムカムカして、こいつらを主人公に漫画描いて、酷い目に合わせたろって発想からである。
『ブライ・アン王子×護衛』とか、『ブライ・アン王子×宰相』とか。宰相はおっさんだけど。
ありとあらゆるシチュで、王子をいたぶった。うけけ。それがなぜかウケて、そこそこ売れた。ありがとう、王子。
それを再びここでも描いてみた。
名前もそうだけど、もちろん顔もそっくりに。
護衛は、私達を殺った奴な。お前も描いちゃる。うけけ。
この本もかなり売れた。ありがとう、王子。
☆☆
「なんだ、このマンガというやつは!私がこんなことするわけないじゃないか!」
「そそそ、そうですわね、ブライアン様あ。そ、それで、宰相様とは……」
「会っていない!最近あいつ、なぜか私をじっと見ていることが多くて、怖いんだが!」
「護衛は?」
「護衛、チェンジした!」
「ちっ」
「ポリー、ねえ、今、舌打ちした?」
「まああ、そんなことありませんわああ」
特等席で見たかった。
「なんか下心聞こえたけどっ?」
☆☆
そして、私が18歳になる頃、王が退位した。
どうやら風刺画の力は凄まじかったようで、国を動かしちゃったよ。いや、マンガを普及させるために描いただけなんだが。王様ごめん。
王位は王弟に受け継がれ、王子は廃嫡された。
だがその後、元王子は行方不明になった。元宰相と元護衛も消えたそうだけど、まさかねえ……。
ちなみにポリーは、マンガに沼って、今は私のアシスタントをしている。
人生ってわからん。
王弟は「私もマンガのキャラにならないよう気をつけるよ」と言ってたとか。王弟、マンガに詳しくね?まさかスポンサー……ゲホゲホ。
*****
「お嬢様、無事に生き残れましたね」
「ええ、よかった。だけど」
私達は今、人生を巻き戻してから初めてお茶会をしたあの部屋で、またお茶を飲んでいる。
あれから5年経ったのね。
だけどこの部屋に、当時の面影はない。今、部屋には複数の机と椅子が持ち込まれ、紙が散乱している。
元々あった小さなテーブルとソファは部屋の隅に追いやられ、現在そこでお茶を嗜んでいる。
「日本の頃と変わりませんね」
「本当、修羅場は相変わらずね」
机で寝ているのは、アシスタント達だ。
彼らもかなり上達して、そろそろデビュー出来そうな子もいる。ポリーも優秀で、少女マンガ部門で頑張っている。彼女もそろそろデビューさせてもいいかもしれない。
「これからどうします?」
「そうね、せっかく生まれ変わって断罪を回避できたんだから、人生を楽しみたいわね」
「……お嬢様に伝えていないことがあります」
リックがカップを置いて、私を真剣な目で見つめる。もしかして……。
「じ、実は」
「は、はい」
私も背筋を伸ばした。
「どうして巻き戻ったんだと思います?」
「え?知らない」
「私、死んだ後の記憶があるんです」
「そうなの?」
「最初に死んだときは『可哀想だから、別の世界で幸せにね』って、女神様が送り出してくださったんです。だけど……」
気まずそうに、リックが下を向いた。
「何かあった?」
「はい、日本での生を終えてからまた女神様にお会いしたんですけど、その時にお願いされまして」
「お願い?」
「……続きが読みたいと」
「……何の?」
「巻モドリ子先生の『ブライ・アン王子×シリーズ』です」
「あれかい!」
思わず立ち上がった。
「『あれの続きが読みたいから、戻してあげるわね。ついでに少し若返らせてあげるわ。待ってるわね』とのことです」
「つまり、これからも続編を描けと」
「そういうことです」
はあーとため息をついて、座り込んだ。ってーと何か?私は続編描くために、巻き戻ったってか?
「そっちかーい!!」
*****
その後、マンガは我が国の文化のひとつになった。老若男女、貴族平民問わず、皆が楽しめるものに。
マンガを読むために文字を学ぶ、それが知性を向上させ、文化や政治あらゆるものが進化していった。
政略結婚もマンガのネタに多く利用されたせいで、今は恋愛婚が多くなった。
そう、私も今度、好きな人と結婚する。
相手は平民だけど『トレンドですね』ってことで許可された。
ずっとここに住んで好きにしていいよってお父様もおっしゃるし。出版する前に読む特権とか言うのやめて。
「お嬢様、覚えてます?アシスタントB以外の私の前世の名前」
「うーん、正直覚えてない」
「でしょうね」
リックが苦笑いを浮かべる。
でもね、覚えていることもあるのよ。
王子の護衛に斬られて逝く寸前、私を抱き起こしてくれたのは、あなたよね。
みんなが王子から逃げる中、私を抱いて言ってくれたでしょ?
「愛しています。これからも、ずっと」
だから、前世日本でも一緒にいたんでしょ。
呼び名なんて『ねえ』とか『あのさあ』とか。名前なんて照れ臭くて呼べなかったわね。
前世も今も。ずっと一緒ね。
「私のことも、お嬢様とか先生って呼ぶの、いい加減やめてよね」
「……そうですね。愛していますよ、ジュディ」
ジュディ「『王子×シリーズ』の新作、どうやって女神さまに贈ればいいのかしら」
リック「とりあえず神殿の供物でいいんじゃないですか」
それを読んだ聖女が、沼る。
聖女「布教せねば……」ハアハア。




