2 NISAの「株式投資」は「経済に寄与していない」
◇株式投資はGDPにカウントされない
筆者:
ここではNISAの根本的な問題について語っていこうと思います。
質問者:
税制優遇としては盤石で穴がある制度ではないような気がしますけど……。
せいぜい損が出てしまった場合の損益通算が出来ないことぐらいでしょうか……。
筆者:
確かにNISAは税金の制度面ではほとんど穴が無いと言っても過言ではありません。
ここで僕が論じたいのは「日本経済にとって果たしてプラスかどうか?」という点です。
NISAは「貯蓄から投資へ」という言葉がある通り「預貯金を投資に回させたい」という事が目標の一つとしてあると思うんです。
しかし、現状のNISA制度にいくら投資しようとも実体経済に対してほとんど寄与しないんです。
質問者:
筆者:
そもそもの話としてNISAで扱われる商品は株式投資、債券売買、などの指数の売買なのですが、GDP(国内総生産)にはカウントされないんです。
NISAで売買されるのは、すでに発行されている株(中古品のようなもの)の持ち主が変わる「資産の移転」であって、新しい価値を生み出す「生産活動」ではないとされているからです。
(ただし、株式や債券の新規発行を購入した場合に限りGDPにカウントされるでしょう)
質問者:
筆者:
株式には信用取引というのがありまして手持ちの資金より多くお金を動かせるんですね。
更にかなり頻繁に売り買いを行うことが出来るので、その出来高を全てカウントしてしまうと、豊かさの指標に全く相応しいものでは無くなるからです。
例えば1億円持っていてそれを株を買って売ってを1日で10回こなしてGDP合計20億円とするのは合理的では無いという事です。
NISAは基本的には頻繁に売り買いをすることは想定されていませんが、購入している商品としては一緒なので
株式の売買や配当というのはGDPに含まれないんです(不動産なども同様ですが、手続き費用などはGDPにカウントされる。株式の手数料は下がっているために株式の方がより貢献度は低い)。
ちょっと違うかもしれませんが会社所有の物を物々交換で渡しあっているだけだからGDPなどとは関係ないみたいな感じです。
要は「新しい価値」を創造して初めてGDPとしてカウントされるんです。
質問者:
なるほど、所有権移転だけでは新しい価値では無いという評価なんですね……。
更に基本的には老後まで引き出さないことが想定されているのだとしたら、例え投資時点よりも株式が値上がりしたりしても消費に回って景気が循環する可能性は低いという事ですか……。
筆者:
少なくともNISA開始後から30年後に増えた分が消費に回ってプラスになるとかそういう感じなので、NISAへの資金流入は経済効果としてはかなりイマイチなんです。
質問者:
「貯蓄から投資」って言葉の印象とはなんだか思ったのと違う感じがしますね……。
筆者:
主に株式や債券の所有権の売買でとどまっている状況ですからね。
以前もNISAの投資の事を語った際に話しましたが、極端な話、発行済み株式の売買なのでその会社に投資しているわけでもないんです。
「力を借りて資産を維持する」だけに過ぎないというところを皆さん抑えていただければと思います。
「貯蓄から投資」という言葉の本質は国が、
「年金が足りない! かといって生活保護費も増やしたくないから、NISAを非課税にして投資させたろ!」
みたいな感じで非常に安易な考えで国策として動いてしまっている事が問題だと思います。
質問者:
筆者:
その上でもう一つ要素としてあるのが「アメリカ様に日本株を売り捌いている」という要素があるんです。
一体どういうことなのかと言いますと、現状NISAではアメリカのS&P500やオールカントリーが人気で1年間で2兆円の円が流出、年間で1円ほど円安にしていると言われています。
日本の現預金だったものがアメリカに行くのですからこれだけでも円安要因になるということです。
そして全体としての流れとしては、
1 日本人がNISAでアメリカ株を買い支える。
⇒ ただし、分散投資であるためにいくら買っても経営方針に口を挟めない。
2 日本円がアメリカに流れて円安になり輸出企業が有利になって喜ぶ。
⇒ 日本国民としては輸入品が割高になって物価高が進む。
3 アメリカ投資家がアメリカ株を売って日本株を買う(円安だから余裕)。
⇒ 日本企業は所属先が日本というだけであってアメリカに隷属する
アメリカに有利な事ばかりを株主総会で決議する。
こんな感じでNISAは間接的にではありますが、日本にとって不利な状況ばかりを密かに生んでいるのです。
質問者:
確か筆者さんはNISAをするのであればまずは日本株限定の非課税制度にするべきだというお話でしたからね。
筆者:
元がほぼ100%日本円だったものなのでそれが少しでも海外に流れれば円安要因になりますからね。
ただ、国側としては「アメリカの犬」という要素や「輸出大企業の犬」という要素があるので上記の動きは影では歓迎していると思われるので「敢えて欠陥を見過ごした」のでしょう。
しかも、この構造的な問題を指摘してくれる専門家があまりにも少なかったことから、NISAが構造上の問題ばかりを抱えた存在なのにそれが国民にはイマイチ分からぬまま今に至ってしまっているわけです。
勿論税制優遇があるという点において国民目線の試算を増やすという側面で見た場合は歓迎すべきことでしょう。
ですが、国民の資産を増やすことにしたって欠陥ばかりの方法以外にもっとやり方があったのではないのかな? 年金制度も自己積立制度や任意加入などに変更できなかったのかな? と色々と疑問があるわけです。
質問者:
事の始まりが年金が足りない状況ですからね……。年金制度改革もやって欲しかったところですよね……。
その上で円安になって国民生活が苦しくなっていくなんてやってられません……。
自分で運用や積み立てることを選択できるのであればそっちの方が私腹を肥やしている政治家に預けるより増やせるかもしれないんですし……。
筆者:
中には自己管理ができない方がいらっしゃると思うので、国に管理してもらった方がお金が残るという方もいらっしゃると思います。
ただ、現状国の年金制度に入るしか「選択肢が無い」状況であり、しかもそれは上の世代を養うためのシステムであって自分たちの年金には寄与しない(少なくとも保証されない)という将来不安を生み出しています。
この根本構造を変えない限り「上の世代に抑え込まれている」という若者の「無気力感」は払拭できないでしょうし、本当の意味での国の活力には繋がらないと僕は考えています。
おおよそ、現行のNISA制度に問題があることが分かったと思うのですが、「国内のみ非課税」以外にもっと効果的な方法があるのではないのか? についてを次回述べて終わりにしたいと思います。




