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04.

 後日。


 規格外のアイテムの供給源を失ったミッフィオーレの転落は早かった。

 国からの高度な依頼に応えられず、作り出すのは泥水のように悪臭を放つ粗悪品ばかり。

 度重なる失敗により多額の違約金を背負わされ、名門ファート家の財産はあっという間に底をついた。


 宮廷錬金術師としての地位も名誉も、そして財産すら失った彼を、計算高いヒロインは冷酷に見捨てた。

 ごめんなさぁい、無能で貧乏な男に用はないの、と鼻で笑い、吐き捨てて去っていったのだ。


 マデューカスでの成功を耳にしたミッフィオーレは、泣きながら、彼女の前に現れたのである。


「リーゼロッテっ。俺が悪かった、やはり俺にはお前が必要なんだっ」


 ボロボロの服を着て、鼻が曲がるほどの強烈な悪臭を漂わせたミッフィオーレが、爽やかな香りに満ちたアトリエに転がり込んできた。

 かつての高慢な面影は微塵もなく、彼はそのまま床にすがりつき、ガックリと項垂れて膝から崩れ落ち、無様に号泣する。


「おまえに散々ひどいことを言ってすまなかったっ。俺がバカだった。すまないっ」


「えっとぉ……どちら様でしょうか」


「お、お前の夫のミッフィオーレだぞっ」


「ああ……。申し訳ありませんが、今新作魔道具を作るので、手が離せないのです」


 リーゼロッテはぷくっと頬を膨らませ、迷惑そうに手を振った。


「営業の方なら、お引き取りくださいな」


「そ、そんなっ。助けてくれ、リーゼロッテっ。おまえがいなくなって、俺の評判はがた落ちなんだっ。このままじゃ錬金術師としてやっていけなくなる。戻ってきてくれっ」


「では、錬金術師以外の道に進めばよいのでは」


「そ、それはできないっ。俺の家は代々錬金術師で……」


「じゃあ、ご自分で錬金術を学びなおし、修練を積めば。私に頼るのではなく」


「いやでも……」


「それに、他にも錬金術師はいるでしょう。その人達に頼めば」


「そ、それもできない……。違約金を払って、もう金がないんだ……」


「じゃ、諦めてください」


 完全に路傍の石を見るような冷ややかな視線を向けられ、ミッフィオーレはのけぞり、絶望の叫びを上げる。

 その悲痛な声を背中で聞き流しながら、リーゼロッテは尻尾をパタパタと振るように、キラキラと目を輝かせた。


「さて、次はどんな魔導具を作ろうかしら」


 愛を捨てた天才錬金術師の、痛快で自由な第二の人生が、今ここから始まるのだ。

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