鉄砲探し
基地に戻った二人はシャワーと着替えを済ませ、会議室へと戻った。
カズミは会議室の簡易ベッドで横になり、ジェイスはジッポーを鳴らした。
そして次にどのような手を打つか、煙をくゆらせながら考える。
聞き込みをするのは確定としても、問題はヤクザである。
仲間を二人殺したのだ。全力で殺しに来るのは目に見えていた。
顔も見られているので、そのうち自分達の前に殺し屋がやってくるだろうことは容易に想像が付く。
ここでジェイスは、潮見派のアジトを強襲した連中の装備を思い出した。
ウィンチェスターM1200散弾銃、M2カービン、ストックを外したトンプソンM1短機関銃、M1917リボルバーにM79擲弾発射機。
ちょっとした歩兵分隊並みの装備だ。
いくら訓練しているとはいえ、これらを揃えた団体と戦うには拳銃では足りない。
「強力な武器が必要だな」
ジェイスは煙草をしっかりフィルター手前まで吸ってから、灰皿へ放り込んだ。
「カズミ」
「……はい?」
「ここの憲兵隊の武器庫は何処にある」
「地下です。管理人さんに『憲兵隊だ』って言えば、案内してくれますよ」
「分かった」
カズミに大人しくしているよう伝え、ジェイスは地下へと降りた。
武器庫の管理人は、くたびれた感じの軍曹であった。
テキサスから国防総省の特命引っ提げてやってきたジェイスのことを知っており、あれやこれやと質問をぶつけてくる。
特命ではあるが密命ではないので、麻薬密売の捜査のために来たこととそのためにヤクザと一戦交えるかもしれないと軍曹に伝えた。
地下で一人暇していた軍曹は、可能性とはいえ「一戦交える」ことにいたく感激してニコニコ顔で武器庫の鍵を開ける。
「管理がなっちゃいないな」
ジェイスは苦笑して肩をすくめた。
「麻薬目当てに武器庫空っぽにするアホウよりはマシさ」
悪びれもせず、軍曹は言い放つ。
武器庫はガンオイルと金属の臭いに満ちていた。ジェイスはそれを胸いっぱいに吸い込んだ。
それから、壁一列に並んだガンラックに収められた銃器へと目を向ける。
憲兵隊は一線級の部隊ではないので、支給される銃器もM16A1突撃銃やイサカM37散弾銃などではなく基本的に二次大戦時の型落ちの物ばかりだ。
セミオートで反動も小さいが連射出来ず咄嗟の攻撃に不向きなM1カービンに、戦中急造品故の特徴的な見た目からグリースガンと呼ばれるM3短機関銃、もっと軽くて製造コストも安い品が出ているウィンチェスターM1912散弾銃。
ジェイスは腕を組み、武器の選定を始める。
M1カービンは良い銃だが、大人数を瞬間的に相手をする状況下では向いていない。
M3短機関銃は、連射こそ出来るがその速度は遅くM1カービンよりマシと言った程度だ。
M1912散弾銃は、重く取り回し辛いが散弾による面の制圧力は魅力的である。おまけに、この散弾銃でスラムファイアが出来ることをジェイスは知っていた。
スラムファイア。暴発の一種で、銃の中で何らかの理由によって撃針が動いてしまい薬室に装填された弾の雷管を叩いてしまうという物だ。
暴発であるが、上手く使えば普通に撃つよりも連射出来る。引き金を引いたまま、ポンプのみを前後させればいいのだから。
重さに関しては自分が持つ分にはそう問題にならないと判断し、ジェイスはM1912を手に取った。
「ソイツにするかい」
出入り口の鉄戸に寄りかかった軍曹が声を掛ける。
「これは俺が使う。……問題は、相方のだ」
ジェイスはカズミの拳銃を思い出す。四十五口径の反動に耐えられないので、三十八口径を使っているのだ。
武器庫にある銃には銃床があるので、反動は拳銃よりマイルドだろうが連射すれば振り回されかねない。
その点ではM1カービンが使いやすいだろうが、多数相手には制圧力が足りない。
「M2カービンは無いのか?」
同じ弾を使いながら連射可能なM2カービンの有無を尋ねるも。
「前はあったんだが、持ってかれちまった。倉庫から盗まれたりしてるから、その帳尻合わせだろうな」
ジェイスは顔をしかめた。金に困った兵士かヤクザの仕業か分からないが、まさかの影響だ。
四十五口径よりも小口径で、連射速度がありながら、携行性に優れた短機関銃がベストだ。
突撃銃でも悪くは無いが、突撃銃が使うのは小さくともライフル弾だ。それよりもパワーが劣る分反動が小さい拳銃弾を用いる短機関銃の方がカズミには使いやすいとジェイスは考えた。
「……となれば、.45ACPより9ミリルガーの方がいいか」
9ミリルガー。ドイツのゲオルグ・ルガーが開発したからそう呼称される。もっとも、現代では9ミリパラベラム弾と呼んだ方が通りが良いだろうが。
この弾の寸法は9×19ミリ。対し、.45ACP弾の寸法は11.4×23ミリ。
たった二ミリほどの違いと言えど、撃ちやすさはかなり変わってくる。連射となればなおさらだ。
しかし、問題は米陸軍は9ミリルガーを使用する短機関銃を正式採用していないということだ。
一般部隊に配備されていないだけで特殊部隊などでは用いられているが、その分手に入れるのは難しい。
「どうするか……」
ジェイスが唸りだすと、今まで彼の呟きを黙って聞いていた軍曹が助け舟を出した。
「なぁ、兄ちゃんよ。要は、九ミリのサブマシンガンが手に入りゃあいいんだよな」
「……合法的かつ速やかにって条件が付きますけど」
密売品を買うや本国に注文するという手を潰すべく、ジェイスは予防線を張る。だが、軍曹は問題ないという態度であった。
「俺のダチが海軍にいる。そんでもって、アイツも銃器の管理をしてて、俺もちょいとばかし海軍の鉄砲事情を把握しててな」
「ほう」
「あるんだよ、海軍には九ミリのサブマシンガンがよ」
ジェイスは腕組みを解くと、軍曹へ歩み寄る。
「詳しく聞いても?」
軍曹はニヤリと笑ってみせた。




