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06:赤いベリーのホイップクリームパンとマヤ

「こ、これがマヤの料理か!? 随分と見事な見栄えだぞ!」


「そうね貴方! 食べるのがもったいないほどだわ!」


 バルタザール夫妻が、ワタシの作ったデザートを見て感嘆の声を上げる。

 現在ワタシが屋敷の厨房で作った、赤いベリーのホイップクリームパンは、食堂に運ばれ、席に付いている皆の前に並べられている。

 ペトラちゃんとセリアちゃんとメルちゃんは、キラキラした目で目の前の赤いベリーのホイップクリームパンを見ているが、それとは逆にヴィルおじさんとフェリ姉ちゃんは、笑顔が引きつっていらっしゃる。カロンに関しては、なにやら呆れ顔で、赤いベリーのホイップクリームパンをくんくんと嗅いでいる。


「マヤ・・・・これは何かしら?」


「赤いベリーのホイップクリームパンでございます・・・・」


「新しい物を作る時には、必ず相談するようにと言っておいたと思うけど・・・?」


 フェリ姉ちゃんは青筋をたてつつ、静かにワタシに圧を掛けて来る。


「事後報告になってしまった点につきましては反省しておりますが、なにゆえ望んでいた食材が目の前にあったものですから、つい暴走してしまったしだいであります・・・・」


 ワタシはたどたどしい態度で、そうフェリ姉ちゃんに報告した。


「まず聞きたいのだが・・・この白い花のようなものは何だね?」


 すると休む間もなく、バルタザール子爵から質問が飛び出す。バルタザール子爵は興味津々で、そのパンに装飾された白いデコレーションを指さす。


「それはホイップクリームといいまして、ミルクと砂糖で作りました」


「信じられん・・・これがあのミルクなのか?」


「それはミルクを魔法で加工したものでございますのよ旦那さま! その味はとんでもなく美味しいんですよ!」


 すると食堂の入り口のところに控えていた、ペリエおばさんがそう説明する。

 実は先ほど完成した時に、すでに厨房にいた4人で、赤いベリーのホイップクリームパンの味見を終えているのだ。ペリエおばさんも、さすがに味が知らない物を、バルタザール子爵には出せないようで、出来上がった直後に味見を申し出て来た。そして助手のサーラさんと、執事のルコントと共に味見をして、感嘆の声を上げていたのを思い出す。


「魔法か・・・・確かに魔法で凍らせれば、ミルクもこのような形になるかもしれんが、凍っている感じではないし・・・・いったいどのようにしたのだこれは?」


「それよりも貴方! わたくしはこの味が非常に気になりますわ!」


「そうだな・・・・。食べてみないことには、この料理は評価しようもないな・・・・」


 そう言いつつバルタザール子爵は、赤いベリーのホイップクリームパンにかぶりついた。すると皆も次々と、そのパンを口にし出した。


「これは美味いな! とくにこのパンの柔らかさは何だ!? さらにこのホイップクリームと合わさることでまろやかさが加わり、まるで口の中でとけていくようではないか!」


「ええ! 本当に美味しいわ! このホイップクリームとベリーの愛称も抜群よ!」


「すっごく美味しい! メルこれなら何個でも食べられる!」


「うううん! ペトラも何個でもいけるよ!」


「マヤちゃんの料理はどれも美味しいけど、これはその中でも一番美味しいかも!」


『マヤはまたとんでもないものを作り出したね・・・・・』


「マヨネーズの時も驚いたけど・・・・この美味しさはまたとんでもないわね」


「これは確かに絶品だな・・・・」


 全員の赤いベリーのホイップクリームパンを食べた感想は、悪くないようだ。


「マヤ殿! このパンの柔らかさとふわふわ感は、どうやって実現しているのだ!?」


「このホイップクリームとやらの製法は、教えていただけるのかしら!?」


 そして食べ終わると、バルタザール夫妻の、ワタシへの質問攻めが始まる。


「お二方ともお待ちください! このレシピの危険性は、お二方ならよく理解できるはずです!」


『そうだね・・・・確かにこのレシピは危険だ』


 するとそんなバルタザール夫妻に対して、フェリ姉ちゃんとカロンが、そんな意見を述べた。今度はこのパンで戦争が起こるとでも言いたいのだろうか?


「そ、そうだな・・・・この製法が欲深な統治者にでも知れれば、ただでは済まんかもしれんな・・・・」


「そうね貴方・・・・。最悪戦争にまで発展しかねないわね?」


 そして二人の見解も、そんなとんでもない意見にまとまった。こんなパンごときで戦争を始めるとか、この異世界の統治者たちは、いったいどこまで非常識な連中なのだろうか?


「それで? こんなとんでもない料理のレシピを知っているマヤ殿はやはり?」


「そうですわ叔父様・・・マヤは聖人に間違いないです!」


『ただし自称美食の聖人だけどね?』


「「美食の・・・・聖人?」」


 するとカロンのその言葉を聞いた、バルタザール夫妻が、呆れたような表情でそう口にする。まあカロンが言っているだけで、ワタシは自らその聖人とやらと、名乗った覚えはないのだけどね? ワタシがこの世界に転生させられた、目的を告げた記憶はあるが・・・・

 

 だがその聖人とはいったい何者なのだろうか? やはり前世の世界で言う、モーゼのような人物をさすのだろうか?


「ところでその聖人とは、いったい何者なのですか?」


 ワタシはここぞとばかりに、その聖人について尋ねてみる。


「マヤ殿はこのようなとんでもないレシピは知っているのに、聖人のような常識については疎いのですな?」


「ワタシはこの世界に生まれて6年しか生きていないですからね。ワタシが知らないことはまだまだ沢山あります」


 ワタシには前世の知識はあるが、この異世界の知識は、村人の6歳児程度しか持ち合わせてない。村から出たのもつい最近だし、生まれてまだ6年しかたっていない。前世の知識を思い出したのも、つい最近のことだ。


「なるほど・・・・。ではその聖人については、吾輩が説明してやろう・・・・」


 バルタザール子爵は聖人について知っていることを淡々と語り始めた。

 この異世界における聖人とは、人々を次のステージへと導き、救って来た者達なのだという。その代表に上げられるのが、【武の聖人】【魔の聖人】【政の聖人】の3聖人で、武の聖人は魔物と戦う術を、魔の聖人は魔法を使うための知識を、政の聖人は人々をまとめるための知識を、それぞれ与えて、人々を導いてきたのだという。伝承によるとその3聖人は、今でも生き続けているということだが、その真意は定かではないようだ。

 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

 食べるのが大好きな方★


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