04:この国の料理事情とマヤ
エリザベート夫人により、すっかり着せ替え人形にされてしまった、ワタシ達子供3人は、ひらひらのドレスに着せ替えられていた。
ワタシは赤いドレスを着せられ、ペトラちゃんは青いドレスだ。セリアちゃんとメルちゃんは、自ら使用人の服を希望したが、それでもひらひらのメイド服になった。
前世でもあまりそのひらひらに、馴染みのなかったワタシは、少し気恥ずかしさを覚えて落ち着かない。
『なかなか似合っているじゃないかマヤ?』
「そうね! 馬子にも衣装とはこのことだわ!」
その上まるでからかうように、フェリ姉ちゃんとカロンが、ワタシにそんなことを言ってくる。
恥ずかしいので止めてくれ!
現在そんなワタシ達は、食堂に案内され、昼食をご馳走になるという話になっている。
「おう! お前ら似合っているぞ!」
「ヴィルおじさん戻っていたんですね」
見るとヴィルおじさんが、すでに席についていた。納税が終わり、再びこの屋敷に戻ってきたのだろう。
「ヴェルおじさんだけですか? 他の方々はどちらへ?」
冒険者のダイソンさんにモニカさん、ステッドおじさん他村人の姿は見えない。
「他の連中はクリスティアン様とはあまり面識がないからな・・・・。さっそく借りた別邸に向かって食事でもとっているのだろう」
どうやら他の面々は食事には誘われなかったようだ。まあ彼らも貴族との食事は緊張するだろうし、ある意味その方が良かったと言えなくもない。
ちなみにクリスティアン様とはバルタザール子爵のことだ。彼の名前はクリスティアン・バルタザールだからね。
「それでは全員席についてくれ! 今日は其方らのために料理人が腕によりをかけて料理を作ってくれておる!」
見るとテーブルには、すでに料理が並べられていた。
主食は肉? あれはボア肉だろう。とにかく肉の量が多い。
後はもったりとした感じの茶色いパンが用意されている。この辺りの小麦は、表皮や胚芽まで含んでいるため茶色いのだ。
それからボア肉と野菜のポトフに、野草の混ざったサラダ・・・それから木の実だ。木の実にはペーダの実や、ベリーが含まれている。
飲み物はハーブティーのようだ。何か爽やかな香りがしている。
カトラリーは前世と変わらないフォークやナイフなので、マナーはそれなりに大丈夫ではないだろうか?
「それでは皆食前のお祈りを・・・・」
この辺りではお祈りをしてから食事をいただくので、その音頭をバルタザール子爵が行う。それが済んだらさっそく実食だ。
「しゃくしゃく・・・・」
まずはサラダからいただく。サラダには野草も使われ、甘みと苦みが入り交ざり、簡素な味のドレッシングもかけられている。ドラッシングは酢も混ぜられているようで酸味もある。酢があるなら、後でどこに売っているか、聞いてみるのもいいかもしれない。
その次はポトフに取り掛かる。
ポトフの肉は火が通りすぎているせいかパサついている。野菜のえぐみが取り切れていないのは、下処理の研究不足なのだろう。野菜のえぐみや苦みは、下処理が不完全だと取り切れないのだ。あとは味が薄い・・・・味が薄いのは塩や胡椒が高価で、少量しか入れられないからだ。こればかりは仕方がない・・・・
そして次は多めに用意された肉に取り掛かる。
「むぎぎ・・・・!!」
硬いだと? しかも若干臭みが気になる。
パンは硬くもったりとしていた。これは酵母が使われていないのが原因だろう。ナッツのような風味は悪くないが、もう少しなんとかならないかと思ってしまう。
料理全般が貴族でこのレベルだというのは少しいただけない。
神も言っていたが、やはりこの国の料理事情は、かなり改善が必要なようだ。
「獣人の二人は村育ちなのに、随分とカトラリーの扱いに慣れているな」
バルタザール子爵がセリアちゃんとメルちゃんの、カトラリーの扱いを見て、感心しながらそう口にした。基本村ではスプーンくらいしか使わない。肉なんて棒に刺してそのままだ。そんな二人が器用にカトラリーを使うものだから驚いたのだろう。
「マヤ様が教えてくれたの・・・・」
セリアちゃんがおどおどしながら、バルタザール子爵にそう答える。
「ほう? そういえばマヤ殿の所作もなかなかのものだ。マヤ殿はどこでその作法を?」
うっ・・・・! そう聞かれると答えようがない。前世の記憶があるなんて口にすれば、頭が可笑しいと思われるだろう。最悪異端者扱いもありうるかもしれない。
『マヤにそんな知識を与えた張本人がいるとすれば・・・・それは神だろうね? でもそのことを不用意に詮索すれば、君達にとってはあまり良くないんじゃないかな?』
テーブルの上で子猫姿で食事をするカロンが、そうバルタザール子爵に答える。なるほど。そういう答えはありかもしれない。本当は違うが丸く収まる。まあ自分で神がどうとか言うのは、あまり口にしたくないがね。
「なるほど・・・・これは失礼」
『まあそれは人間の都合だから・・・・ボクは気にしないけどね?』
宗教上の理由だろうか? あまり詮索されないのは、正直助かるがね。
「はあ・・・・。マヤの食事に慣れちゃうと、どれも味気なく感じるわね・・・・」
「お嬢様・・・・それを言ってはなりません」
食事の味に対して、ぼやくフェリ姉ちゃんに対して、後ろに控えるラルフさんが諫める。つい口をついて出てしまったようだ。
「あら? マヤの料理はそんなに美味しいのかしら?」
するとそのぼやきに聞き耳を立てていた、エリザベート夫人がフェリ姉ちゃんに尋ねる。
「マヤちゃんのご飯は美味しいよ! でもどれも秘密なの!」
それに元気よく答えたのは、メルちゃんだった。
「あら? わたくしはメルちゃんのお友達なのに教えてくれないのかしら?」
するとエリザベート夫人が、そんな困ったことを言いだした。
「叔母様・・・・マヤの作る料理はどれも革新的で、へたすると戦争が起こるくらい美味しいの・・・・だから不用意に表にはだせないのよ?」
確かマヨネーズは戦争の引き金になるんだったか?
まあワタシはマヨネーズが戦争の引き金になるなんて、信じてはいないが、皆が言うからには気を付けた方がいいのだろう。
「失礼だがそのような幼子に、まともな料理ができるなんてとても思えないのだがね?」
するとバルタザール子爵は、そのフェリ姉ちゃんの言葉に懐疑的なようで、そんなことを口にした。まあそれは6歳になったばかりの子供が、一人でまともに料理ができると言っても、信じられないのは確かだ。
『マヤがどういう存在か理解していれば、そう懐疑的になることもないと思うんだけどね?』
カロンがそう言うと、バルタザール夫婦はお互いに目を見合わせ、その表情を一変させる。どうやらカロンの意見から、フェリ姉ちゃんの言葉を信じたようだ。
「貴方! わたくし達はこれから運命共同体とも言える仲間です! そんな仲間の秘密を漏らすような真似は当家に誰1人としていませんよね?」
そのエリザベート夫人の表情からは、食べたいぞという気迫が伝わってくる。
「あ・・・ああ・・・・。そうだな・・・・」
そんな奥さんの剣幕に、少々縮こまり気味のバルタザール子爵・・・・夫婦の力関係は、どうも奥さんが上のようだ。
「はあ・・・・。マヤ? 何か作って差し上げることは可能かしら?」
するとフェリ姉ちゃんがため息をつきつつ、ワタシにそんな頼みごとをしてきた。つまり秘密は守るから何でも作っていいよってことだよね?
「台所をお貸しいただけるなら・・・・」
「ルコント・・・・マヤ殿を台所に案内してさしあげてくれ」
「承知しましたクリスティアン様・・・・ささ、お嬢様・・・どうぞこちらへ」
バルタザール子爵が執事に命じると、執事はうやうやしく頭を下げ、ワタシを厨房へと案内し始めた。
こうしてワタシは、バルタザール子爵の屋敷で、料理をすることになったのだ。
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