02:シムザスの街とマヤ
その日ワタシ達は、シムザスの街にやってきた。
シムザスの街には城門があり、その城門を潜らなければ、街に入ることが出来ない。城門を潜るためには通行税を支払う必要がある。一人銅貨5枚ほどで、通貨が可能となるのだ。城門の前には、槍を持った兵士がおり、黒塗りの刀を帯刀していたワタシは、少し緊張はしたが、街に入る目的などを聞かれたくらいで、何も問題は起こらなかった。どうやらこの国の法律には、前世とは違い、銃刀法違反のようなものはないようだ。まあ武器を所持した冒険者も、普通に出入りしているし、考えてみればこれがこの国では、当たり前なのかもしれない。
「目的は何だ?」
「納税とクリスティアン・バルタザール様への挨拶に参りました」
「問題ない! 通って良し!」
ヴィルおじさんが代表で、兵士の質問に答えると、全員分の支払いをまとめて済ませ、無事に城門を通過することができた。ちなみに馬に跨るフェリ姉ちゃんとラルフさんは、また別々に質問されているようだ。貴族である彼らは、ワタシ達麦の納税者の一行とは考えられないので、また別に対応が必要なのだろう。
街の城門を抜けると、そこには中世ヨーロッパの、街並みが広がっていた。城門の側には露店が出されており、その先の方には、木造や土壁の家屋が立ち並び、密集しているのが見えた。あの辺りは住宅地なのだろう。下水などのインフラが、未発達なのは少し気になるが、あばら屋と畑以外何もないボーロ村よりはずっとましだろう。
露店には様々な作物や、陶器や布などの生活用品、塩の入った壺などが並べられ、ワタシの目を引くが、まずはバルタザール子爵の屋敷に行き、挨拶をする必要があるらしい。
シムザスの街には最大で1ヶ月程滞在するのだが、その際にバルタザール子爵の屋敷にある、別邸を借り受け、しばらく寝泊まりすることになるようだ。
その際にワタシのボロボロの服装が問題になるようで、ペトラちゃんのお古を借り受け、今はその服を着ている。貴族に会うためには、身だしなみも、整えなければならないそうだ。
「ん? なんだか妙な気配を感じますね・・・・」
そんな中ワタシは、人混みから、妙な気配を感じた。ワタシは魔物の徘徊する森を散策することで、ある程度の気配には、敏感になっているのだ。
『マヤも気付いたかい? どうやら数人の者がマヤのことを監視しているようだ』
「監視ですか? いったい何の目的で?」
「この街には人攫いなどの物騒な連中もいる。マヤの黒髪は目立つから、そいつを頭巾にしてかぶっていろ・・・」
そう言うとヴィルおじさんは、ワタシに大き目の布を渡してきた。さっそくその頭巾を頭にかぶるが、その様はまさに、あの赤ずきんちゃんのようだ。
「マヤ・・・・似合っているわよ?」
「そんな笑いながら言われても嬉しくないですよフェリ姉ちゃん・・・・」
笑いをこらえながら、そんなお世辞を言ってくるフェリ姉ちゃんに、ワタシは不貞腐れながら言葉を返した。
シムザスの街では、獣人も差別対象になるようで、セリアちゃんとメルちゃんも、ワタシと同じ様に布を渡され、頭巾にしてかぶっていた。二人も街に入ってからは、そういった気配を察してか、緊張の面持ちである。
この街に入ってから、柄の悪い連中もよく見かけるし、あまり治安が良い街ではないのだろう。
通りには冒険者ギルドの建物もあった。後ほどワタシはあそこに立ち寄り、冒険者登録などの手続きを行うのだろう。ワタシは冒険者になるために、このシムザスの街にやってきたのだ。その際はヴィルおじさんの付き添いも必要となるため、冒険者ギルドに行くのは、納税の後になりそうだ。
ちなみに納税の際には、領主の城に向かうそうなので、目立つワタシは留守番となる。それは領主とワタシが会うことで、また良からぬことが起こらないように、するための計らいなのようだ。
ゴ~ン! ゴ~ン・・・・・
しばらくすると時計台の鐘が、現在の時間を知らせるために鳴らされる。
シムザスの街には大きな広場があり、そこには巨大な時計台があるのだ。現在もその時計台が、民家の屋根から、顔を覗かせている。あの場所にもぜひ行ってみたいが、あの付近には創世新教の教会があり、ワタシのような忌み子は、近付くことすら許されないようだ。というか近付けば、ぜったいトラブルのもとになるだろう。君子危うきに近寄らずだ。
『マヤ・・・・後で旧神教の教会にも立ち寄ってもらうよ?』
「確かこの街にもあるんでしたね・・・・」
カロンによるとそれとは別に、旧神教の教会もあるらしく、後ほどワタシはそちらにも、顔を出さなければならないようだ。教会のような建物に、入るのは少し緊張するが、あの神にも会えるかもしれないし、立ち寄らないわけにはいかないだろう。
そんな中大通りに入ると、大きな屋敷が、徐々に前方の方に見えて来た。どうやらあれがバルタザール子爵の屋敷であるようだ。
こうしてワタシ達は、無事にバルタザール子爵の屋敷に、到着したのであった。
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