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10:泉でのティータイムとマヤ

 翌朝ワタシ達は、避難民がいるとみられる、ラザ村に向けて出発した。

 メンバーはワタシ、カロン、フェリ姉ちゃん、ラルフさん、加えて馬型の土精霊4体だ。セリアちゃんとメルちゃんは、水精霊3体と共に猫砦で留守番だ。


 フェリ姉ちゃんとラルフさんは馬に跨り、ワタシは自走しながら、カロンはそんなワタシに並び、2人を追従している。馬は常に走れるわけではなく、急いでいても30分程度しか走れない。しかも全力で走るわけではないので、身体強化を使っているワタシにとっては、少しもどかしいくらいだ。

 馬型の土精霊はそんなワタシの後を、同じ速度で追従している。疲れた様子もないので、ある意味こいつらの方が、無敵なのかもしれない。


「貴女そんなに走り続けてよく平気でいられるわね?」


「身体強化を使っていますからね・・・・」


「そう・・・・。身体強化って思っていたよりもすごいのね」


 ワタシは馬かカロンに乗ることを、勧められたが、トレーニングのために自走を選んだ。身体強化を使っていれば、1時間以上ぶっとうしで走り続けても、少し息が切れるくらいだ。


「マヤさんの身体強化は少し異常ですので、あまり基準になさらない方がよろしいかと・・・・」


 するとラルフさんが、そんなことを言って来た。


「ワタシの身体強化は普通とどう違うんですか?」


「常人であれば身体強化はもって小半刻の半分といったところでしょう。抑えて使えば長持ちはするでしょうが、それではあまり通常と変わりませんので、一時間も息を切らさず走ることなどできません。ちなみにマヤさんの今の身体強化の強度はどの程度ですか?」


「5分の1程度でしょうか? このくらいだと魔力の回復が、十分に消費に追いつきますので、延々と使っていられます」


「5分の1程度の身体強化で、すでに常人のものを上回っておいでとは・・・末恐ろしいですな・・・・。しかも延々に使っていられるというのは異常ですぞ?」


 身体強化の強さは、魔力出力であるMAGの数値が、依存しているものと思われる。ワタシのMAGがそろそろ100を突破しそうなくらいなので、5分の1といえば、MAG20程の出力となる。すると常人のMAGは、20を下回るくらいなのかもしれない。

 MPの回復量は最大MPが影響しているのではないだろうか? 現在1分で1程度回復するので、身体強化を半分程度の出力で使って、初めてMPの回復量と近郊し、回復しなくなるくらいだ。

 なので今の状態でも、十分にワタシのMPは、回復し続けているのだ。


『マヤは神に愛されているからね・・・・。きっと魔力も聖獣並みか、それ以上あるんだよ』


 ワタシは神に愛されている自覚はないが、どうやら魔力が多めになるように、生まれてきているようだ。その部分は感謝すべきだろう。


「羨ましいわね・・・・どうやれば常人はその魔力に追いつけるのでしょうね?」


 するとフェリ姉ちゃんが、そんなことを呟いた。

 ワタシはその手段を知っているが、知恵の実のことは話せないので口をつぐんだ。


「こんな場所に泉があったんですね?」


 森を駆け抜けて3時間程すると、泉が見えて来た。

 森の木々に囲まれたその泉は、太陽の光を受けて、キラキラと輝きとても綺麗だ。泉の影響か涼やかな感じを受ける場所だ。小さな魔物たちがその泉で水を飲んでいるが、ここでは争う様子もない。自然の不戦協定でもあるのだろうか?


「こちらで小半刻ほど馬を休ませねばなりません」


「それじゃあお茶でも淹れましょうか?」


「いいわね!」『ボクもいただくよ』


 ワタシは【黒渦】から、鍋とコップを取り出しつつ、皆にそう尋ねた。


「その役割はわたくしめにぜひお任せください・・・・」


 するとラルフさんがそう申し出て来た。執事であるラルフさんは、その役割を誰にも、譲りたくないのかもしれない。


「こちらは変わったハーブですな? 味も香りも悪くないです」


 ラルフさんによると、この国でお茶といえば、ハーブティーになるそうだ。数々のハーブが存在し、それぞれに薬効もあるらしい。


「それはうちの畑でとれたチャノキの葉を乾燥させたものなんですよ?」


 チャノキの葉は前世の知識をもとに、植物改良の魔法で再現したものだ。紅茶のもとになる葉なのだが、いまだに紅茶の味には至っていない。乾燥させることで、なんとか細茶のようにはなったがそこまでだ。紅茶や緑茶をつくるには発酵が必要なようだが、その方法がわからない。たまに傷ついた葉が、茶色くなっているので、その辺りが関係していると思われるが、はっきりしたことはまだわかっていない。

 

 ラルフさんは手早く火を起こすと、鍋に水を入れて、加熱し始めた。


「へえ~! なかなかいい香りのハーブね?」


 ラルフさんがお湯に、乾燥させたチャノキの葉を入れると、周囲に花のような香りが漂い始める。


「苦みはありますが飲みやすく香りも悪くないです・・・・」


 ラルフさんはお茶をオタマですくって味見すると、そう感想を述べた。


「お茶受けにはこれをどうぞ・・・・」


 ワタシが出したのは、出発前に作っておいたクッキーだ。薄力粉ではないので、少し固めにはなったが、サクサクとしてなかなかの仕上がりなのだ。


「乾燥パンかしら? お腹は空いてないわ」


 この国でクッキーといえば、保存食の乾燥パンだ。硬く食べにくいため、一般的には飲み物に浸して食べることが多い。ほのかな甘みがあり、小麦をたっぷり使って作られるため、ボーロ村では高級品とされていたのを思い出す。あの頃は砂糖入りのクッキーなんて、とても考えられない高級品だ。


「クッキーですよ。砂糖入りなので甘くて疲れがとれますよ?」


「サク・・・・。ほう? 柔らかくて美味しいですな。これはまたずいぶんと砂糖を奮発しましたな?」


「嘘! 砂糖入り!? しかもやわらかいのその乾燥パン!? それじゃあ私も頂くわ!」


『ボクにも1つおくれよ』


 どうやらフェリ姉ちゃんもカロンと同じ様に、甘い物には目がないようだ。勢いよくサクサクとクッキーを食べ始めた。ちなみに普通の猫に、砂糖は与えてはならない。カロンは美味そうに食べているが、彼は普通の猫ではない。聖獣なのだ。


「そういえば昨晩頂いた物にも、砂糖を使っていましたな? 平民である貴女が、砂糖などどちらで入手されたのですかな?」


「砂糖はある木の実から、魔法で抽出が可能なんですよ」


 砂糖は超高級品なので、この国で口にできるのは貴族くらいだ。しかしワタシはシュガーペーダがあるので、簡単に入手が可能だ。


「貴女そんな果樹も育てていたのね? 貴族に知られたらきっと取り上げられるわよ?」


「それはちょっと心配ですね・・・・」


 ボーロ村にもいくつかシュガーペーダの果樹が植えられているし、それが取り上げられないか心配だ。とくにこの領地の領主は強欲と聞くしね。


「そろそろ刻限ですな・・・・出発しましょう」


 何を基準に計ったのか、ラルフさんは地面に立てた棒を見ながらそう報せて来た。こうして一時のティーテイムを満喫したワタシ達は、再びラザ村を目指したのであった。


 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

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