05:目が光るマヤ
「ちょっと落ち着いてちょうだい! 私は少なくとも今現在は、聖騎士軍ではないわ!」
その只ならぬ様子に、フェリ姉ちゃんが焦り、そう釈明してきた。確かにワタシは聖騎士軍を指揮する彼女を目にしているのだ。それでも彼女は、あの悪辣な聖騎士軍ではないというのだろうか?
「今更だけど私・・・・あの聖騎士軍の悪辣さに気付いて抜けてきたのよ・・・・」
抜けて来た? あの聖騎士軍を?
確かに目の前の娘は、ボーロ村の村人には、1人として怪我をさせてはいない。普通の聖騎士軍とは、違うのだろう。だがあの聖騎士軍を抜けたというのは本当だろうか?
「そうね・・・・。貴方達もあの聖騎士軍は許せないのよね? ただこれだけは聞いてくれる?」
そう言うとフェリ姉さんは、只今警戒中のセリアちゃんとメルちゃんに向き直り、言葉を紡ぎ始めた。
「本当にごめんなさい・・・・。あの聖騎士軍があれ程悪辣だったなんて気付かなかったのよ・・・・。気付かなかったじゃ済まされないのはわかってる・・・・。それでもあのラザ村の村人だけは私に救わせてくれないかな? この証にちかって・・・・」
そう言ってフェリ姉ちゃんが出したのは、トップにある紋章が付けられたペンダントだった。それはヴィルおじさんが、いつも大事に持っていた物と一致していた。あれは確か・・・・旧神教のシンボルのような物だったはずだ。つまりフェリ姉ちゃんは、旧神教ということになる。なぜそんなフェリ姉ちゃんが、創世神教に属する、聖騎士軍になんて入っていたのだろうか?
「私は貴族よ・・・・。宗教も偽らないと生きていけない立場なの・・・・」
するとワタシの胸の内を察したのか、フェリ姉ちゃんがそうもらした。どうやら貴族も色々と、大変なようだ。ワタシも会社にいたころは、上司の命令には、いくら理不尽な命令でも逆らえなかったが、あれと同じだろうか? だとしたらちょっとかわいそうな気もする。
「はあ・・・・。ボーロ村で徴収する聖騎士軍を指揮する彼女を見かけましたが、とても誠実な対応でした・・・・あの聖騎士軍とは思えないくらいに・・・・」
ワタシはセリアちゃんとメルちゃんに、フェリ姉ちゃんがボーロ村でどんなだったかを説明した。
「ええ? 貴女あの時ボーロ村にはいなかったでしょ?」
「岩山に潜んで、ずっと様子を窺っていたんですよ・・・・」
あの時ワタシはボーロ村にある岩山の影に隠れて、ボーロ村の様子を見守っていたのだ。
「そうだね・・・・。フェリ姉ちゃんはあの兵士達とは全然違うもの・・・・。それにその証は仲間のもの・・・・」
「そうだよ! フェリ姉ちゃんは悪くない!」
すると2人のわだかまりも解け、どうやらフェリ姉ちゃんを、受け入れられたようだ。その様子を見ていたカロンも、警戒を解き、ラルフさんも手を掛けていた剣から手を離した。ようやく周囲は落ち着いたようだ。
「はあ・・・・緊張した・・・・。びっくりしたわよもう! 貴方怒ると目が青く光るんだもの!」
え? ワタシの目が青く? なにそれ怖い・・・・
別にワタシは怒ってはいなかったが、フェリ姉ちゃんに警戒を向けて、感情が高ぶり、緊張していたことは確かだ。昔誰かにワタシの圧がどうとかと言われたが、もしかしたら、この目が光ることを言っていたのだろうか?
そしてワタシは感情が高ぶると、目が青く光ることが判明した。
「それじゃあ仲直りの印にこれから昼食をご一緒しませんか?」
ワタシはフェリ姉ちゃんとラルフさんにそう提案した。
ちょうど今日は卵もあるし、なにより天然酵母も完成しているので、ふわふわパンだって作れるのだ。
「ちょっと貴女料理なんてできるの?」
「マヤちゃんのご飯は美味しいんだよ!」
フェリ姉ちゃんがそんなワタシに懐疑的な目を向けるが、メルちゃんがそれを否定するようにそう口にした。
「ラルフ・・・・」
「は・・・・承知いたしましたお嬢様・・・・」
そんなワタシがいまだに信用できないのか、フェリ姉ちゃんはラルフさんに、ワタシにの補佐に付くように促した。
「貴女・・・この卵を生で使う気!? お腹壊すわよ!」
ワタシが卵を台所に出し、生で使うと宣言すると、フェリ姉ちゃんがそんなことを口にした。ボーロ村でも生卵は、腹を壊すと聞いていたし、一般的にそう言われているのだろう。だがワタシにはあの魔法がある。だから何の心配もいらないのだ。
「心配ありません・・・・なぜなら浄化の魔法で腹痛の原因を駆除するからです!」
そう・・・・それが【浄化】の魔法だ。
ワタシは説明が終わると、いまだに懐疑的な表情のフェリ姉ちゃんをよそに、卵に【浄化】の魔法をかけた。
「嘘! 卵がぴかぴか!」
「ほう!? これは・・・!」
【浄化】の魔法は卵を徹底洗浄して、つるつるのぴかぴかに磨き上げるのだ。
その余りの卵の綺麗さに、フェリ姉ちゃんもラルフさんも驚愕している。
「でも聖職者の魔法が卵に使われるのなんて初めて見たわ・・・・」
「浄化を教会で頼めばけっこうな額のお布施を要求されますぞ・・・・」
そして2人は次に、呆れたようにそう口にした。
「これがさっき言っていたマヨネーズとやらね? 見た目は随分と華やかね?」
「これなら貴族の食事会にでも出せますな・・・・」
皆がテーブルに着くと、ラルフさんだけは一貫してテーブルにつかず、フェリ姉ちゃんの傍らに立った。そしてマヨネーズのついたパンを見せると、そんな感想を漏らした。
今回の昼食はふわふわのロールパンに切れ込みを入れ、数種類の野菜に、ボアのハム、それらにマヨネーズをかけて挟んだものだ。マヨネーズはデコレーションが見えるように、外にはみ出るように、盛り付けてあるのだ。せっかくのデコレーションなので、隠すのももったいない。
ちなみに野菜は、レタスに玉ねぎスライス、それに薄く切ったミニトマトも加えてみた。
ボアのハムには手間がかかったが、毎日の料理研究の末に、ついに形になったのだ。
「あ~む! むぐむぐ・・・・」
そのロールパンサンドにかぶりつくと、マヨネーズの酸味がパンの甘みを引きたて、さらにそれにまろやかさが加わる。それにハムの熟成による豊かな旨味が加わり、しゃきしゃきとしたレタスがメロディーを奏で、とても心地よい気分になる。玉ねぎの苦みがその風味をさらに押し上げ、たまに混ざるトマトの酸味が、味のハーモニーを生み出していく。
なかなかに絶品な一品に仕上がっている。贅沢を言えばバターの風味も加えたいが、まだバターの研究には着手していない。確かバターは豚のラードでも作れたはずだ。今度研究してみよう・・・・
「美味しいね~・・・!」
「はむはむ! 美味しい!」
セリアちゃんとメルちゃんは、一心不乱にそのロールパンサンドにかぶり付いている。
「はむ・・・・? 貴女これ・・・・」
ところがフェリ姉ちゃんは、そのロールパンサンドを一口口に入れると、黙り込んでしまった。
「あの・・・お口に合いませんでしたか?」
やはり貴族は口も肥えているし、この程度のロールパンサンドでは、納得いかないのだろうか?
「その逆よ・・・・」
その逆? いまだにフェリ姉ちゃんはロールパンサンドを咀嚼し、その味を吟味しているようだ。
「なるほど・・・・」
そしてマヨネーズを一舐めすると、なにか納得したように頷いた。
「ラルフ・・・・貴女もこれを食べなさい!」
すると手付かずでテーブルの上に置いてあった、ラルフさんのロールパンサンドを指さし、フェリ姉ちゃんがそうラルフさんに命じた。
「お嬢様・・・・わたくしは執事でありますので・・・・」
「いいから食べてみて! 貴方の感想が聞きたいの!」
いったいフェリ姉ちゃんは何が言いたいのだろうか?
「そう言うことでしたら・・・・はむ・・・・」
そしてラルフさんも、ロールパンサンドを口にする。
「む・・・!?」
するとラルフさんはロールパンサンドを口にして固まってしまった。
いったいどうしたというのだろうか?
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