19:迫りくる聖騎士軍とマヤ
「あれが聖騎士軍ですか・・・・?」
ワタシはカロンに跨り、上空から聖騎士軍と見られる、長蛇の列を見ていた。それは現在崖に面した街道に差し掛かったところだ。あの旗は確かに聖騎士軍のものだが、本当に噂で聞くような、悪い連中なのだろうか?
「ちょっと声を掛けて見ましょう」
『まあ・・・突然攻撃を仕掛けるのは気が引けるだろうから、それは構わないがね・・・・』
突然攻撃をしかけて、もしあの砦に対して何もする気がなかったり、他の目的の集団だったりすれば、当然こちらに非が出てくる。ワタシがどうにかしたいのは、あの猫砦に襲撃しようとする連中であって、それ以外の人達ではない。
「ああ~・・・・!! ちょっと! すみませんが・・・・そちらの集団の目的はなんでしょうか!?」
ワタシは上空から、その集団に尋ねた。
「ああ? 何だありゃあ?」
「構わねえから撃ち落とせ!」
「このガキ! 見下ろしてんじゃねえ!」
ピュッ! ピュッピュッ!
するとその集団は、急に弓矢を構え、こちらに矢を射かけて来たのだ。
「うわ! 攻撃してきた!」
『平気だよあんなの。風の障壁でいくらでも弾けるからね・・・・』
見るとその矢は、こちらに触れる前に弾かれ、真下に落下していた。どうやら風の障壁というのは、見えないバリアのようだ。
「話の通じる方々ではないようですね・・・・?」
『まるで山賊の集団だね? 攻撃仕掛けてきたのは向こうからだしいいんじゃない?』
ワタシが今から何をするのかを悟ったのか、カロンが同意してきた。
当然こんな連中は、例の巨大な水球で、洗い流して差し上げますとも。そのためにワタシ達は、この場所を選んだのだ。
この場所の街道は道も狭くなっていて、崖に面した場所だ。当然そのすぐ真下には、海が広がっている。海には巨大なサメのような魚もいるし、転落すれば命もないだろう。
「うわああ! 何だあれは!?」「巨大な水球だと!?」
ワタシは上空に掲げた水球を、徐々に水蒸気を集め大きくしていく。
「フルートヴェレがくるぞ! 退避だ! 退避いいいい~!」
するとならず者の集団から、一部聞きなれない単語が聞こえた。フルートヴェレとは、いったいなんのことだろうか?
『フルートヴェレってのは津波を引き起こす魔法のことだね・・・・』
「へえ・・・」
確かにこの巨大な水球を、真下に落とせば、勢いで大波くらいは発生するだろう。彼らは既に似たような魔法を知っていて、その魔法がフルートヴェレとよばれているようだ。
そのフルートヴェレを恐れて、ならず者たちは一斉に、狭い崖路から広い道へと、引き返していく。
「そろそろいいですかね?」
『マヤは甘いね~・・・・』
ワタシは全てのならず者が、広い道へ避難したのを確認すると、巨大に膨張した水球を、狭い崖路へと落下させた。
ザザザザ~ン!! ドドドドドド~ン!!
すると凄まじい勢いの濁流が出来上がり、その水圧で狭い崖道が、崩壊を始める。その様子をならず者たちは、唖然とした様子で見ていた。
「もう一発いきますよ~・・・・」
「「「ひぃぃぃ!!」」」
そしてワタシが再び水球を膨張させはじめると、焦った様子で退却していった。あの崖道も既にないし、ならず者たちがここを渡ってくることもないだろう。
ワタシとカロンはそこで追撃をすることもなく、猫砦に引き返したのだ。だがここでワタシは彼らを甘く見たことを、後悔することになる。
それは夜、誰もが寝静まった頃に起こった・・・・
『マヤ! 目を覚ましなよ!』
「う~ん・・・・? 何ですかカロン・・・こんな夜中に?」
カロンが激しくゆさぶり、ワタシの目を覚まさせたのだ。辺りはまだ真っ暗だったが、月明かりが窓から差し込み、外の様子がはっきりと見えた。すると数人のうごめく影が、窓の向こうに見えたのだ。
「もしかして襲撃者ですか!?」
『そうだよマヤ・・・・どうやら既に向こうは武器も抜いているようだ。たぶん聖騎士軍の連中だよ・・・』
カロンはただならない様子で、ワタシにそう伝えて来た。そしてワタシの隣には、まだ寝息を立てている、姉妹の姿が見えた。彼女らを守るために、ワタシは戦わなくてはならない! そう腹に決めたワタシは、徐に小屋の入り口を目指す。
「おおおい! 出てこいガキ! ここにいるのはわかっているんだぜぇ!」
「馬鹿野郎! 騒ぐんじゃねえ!」
その時男数人の声が聞こえて来た。その気配から察するに、どうやら襲撃者は少数のようだ。
「ここへ何のようでしょうか?」
ワタシは扉を開けると、わざと黒塗りの刀を下にたらし、その隙間から鋭い眼光と共に覗かせた。
「ひっ!」
「いいねえその感じ! 早く剣を交えようぜぇ!」
すると驚く男の声と、威勢の良い男の声が響いた。
見ると外には巨漢の男とその男が連れた5人の男に、ひょろ長い不気味な目をした男がいた。どうやら彼らが襲撃者であるようだ。
「カロン・・・・あっちの6人は任せてもいいですか?」
ワタシは既に白虎姿となったカロンにそう問いかけた。あっちの5人とは、巨漢とそいつが引き連れた5人のことだ。
『仕方ないねえ・・・・。あっちはボクが仕留めておいてあげるよ』
ワタシが気になったのは、そのひょろ長い男だ。そのひょろ長い男からは、並々ならない気配を感じたのだ。
「引き返してくれる気はないんですよね?」
ワタシはその男を睨みつけつつそう問いかける。
「止めるわけないだろ? こんな楽しそうなこと・・・・」
「まさかあのフルートヴェレを放ったのが、こんな小娘だったたあな・・・・」
すると巨漢の男が、ワタシ達の間に口をはさんできた。
「貴方達の相手はそちらのカロンですよ・・・・」
「グルルルル!!」
カロンは今まで聞いたこともないような、恐ろしい唸り声を上げ、男達を威嚇する。そのカロンに男達は、怯えたように後ずさり始めた。
そしてワタシは目を細めて、目の前の男に黒塗りの刀を向ける。
こうしてワタシの初めての、人間との死闘が、幕を開けたのであった・・・・
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