17:獣人の魔法とマヤ
「小さな竜巻? ・・・・風魔法だ!?」
『ボクのを真似たら出来ちゃったんだ・・・・』
現在目の前では、小さな竜巻が舞っていた。
それはセリアちゃんが、風魔法で出したものだ。当初本人は半信半疑だったのだが、やってみれば確かにそれはセリアちゃんの風魔法だったのだ。しかもその竜巻は、感覚的に出していると思われ、古代魔法だと判別出来た。
セリアちゃんは笑顔で、その小さな竜巻を見ていた。
そこは猫砦にある小屋の付近の野菜畑の前だ。皆その場所に集まり、その小さな竜巻を見ていたのだ。そんな中メルちゃんは、うずくまって何かをしている。メルちゃんはいつもマイペースだから仕方ないね。
「メルもできたよほら!」
「泥団子?」
そう得意げな笑顔で、メルちゃんが持って来たのは、泥団子だった。あれからメルちゃんも毎日、知恵の実の欠片を食べて、魔力を増してきたはずなのだ。その結果が目の前の、泥団子だと言うのだろうか?
『マヤはまだまだだね・・・・』
するとカロンがワタシに向けて、そんなことを口にした。見たところどこから見ても普通の泥団子だ。だが見ればメルちゃんの手は、泥で汚れた様子が全くなかった。
「少し浮遊している?」
よく見るとその泥団子は、メルちゃんの手の平から少し浮遊していた。そしてメルちゃんの手には、泥がまったくついていない・・・つまりメルちゃんは、手で触れることなく、この泥団子を作ったのだ。
「手が汚れるとお姉ちゃん怒るから!」
そう言うとメルちゃんは屈みこみ、さも当たり前のように、地面の泥を浮遊させ、もう1つの泥団子を作り上げた。どうやらメルちゃんにも、土魔法の才能が目覚めたようだ。
「やりましたねカロン! これで2人も魔法使いですよ!」
ワタシはセリアちゃんメルちゃんと手を取り、その喜びを分かち合った。
『そうだね・・・・。これで2人も獣人の英雄が誕生しちゃったわけだ・・・・』
するとそれを見ていたカロンが、そう意味ありげなことを口にしたのだ。
「獣人の英雄? なんのことですかカロン?」
『前にも言ったけど、魔法は力の象徴なんだよ。しかも獣人は魔法が使えないのが一般的とされているんだ。そんな獣人の中に、2人も魔法使いが生まれたんだよ? 彼女らを担ぎ上げようとする連中は、いくらでもいるだろうしね・・・・』
つまりカロンは、2人が誰かに担ぎ上げられて、英雄になる可能性があると言いたいのだろうか? この国で獣人は虐げられているし、それを快く思っていない獣人は沢山いるだろう。彼女達が英雄になれば、その先にあるのは・・・・獣人によるクーデター?
しかしそれもこれも、彼女らが誰かにそそのかされたらの話だ。そして彼女らの今の気持ちも非常に気になるところである。
「貴女達は獣人の英雄になって、クーデターを起こしたいですか?」
『マヤ・・・・それはストレートに聞きすぎだよ・・・・』
ワタシが2人にそう尋ねると、カロンは呆れながらそう口にした。
「え? なんでクーデター? 英雄は面白そうだけど・・・別になりたいとかは思わないかな・・・」
「ん?」
メルちゃんはワタシの言う意味が、理解できないようで、きょとんとしていたが、セリアちゃんはさらっと自分の意見を述べた。
「それよりも私は・・・・聖獣様とマヤに仕えたいかな・・・・?」
「メルも皆とはずっと一緒にいたい!!」
するとセリアちゃんは顔を少し赤らめながら、そんなことを口にした。そしてメルちゃんも、そんなセリアちゃんに同調するように、そう元気いっぱいに口にしたのだ。
「仕えたい? なに?」
今度はワタシがその意味を理解できずきょとんとしてしまった。
仕える? 平民のこのワタシに仕える? 誰かに仕えるのは平民であるワタシの方だ。なのにそんなワタシに仕えるだって?
『こう見えてマヤもまだ幼いからね・・・まだその意味を理解できないでいるのさ・・・きっと』
「それは少し残念ね・・・・」
そしてカロンとセリアちゃんは、何かをわかり合ったように、2人してワタシを見た。意味がわからないんだけど!
ビユゥゥゥゥ~!!
「なに!?」
すると妙な風が吹いたと思うと、うっすら半透明の何かが、空から飛んでくるのが見えた。もしかして新手の魔物!?
『ボクの風の精霊だよ』
どうやらそれは、カロンがつくった風の精霊のようだ。慌てているのか? その風の精霊からは、何やら切羽詰まった感じを受ける。
『その精霊はボクが例の聖騎士軍の野営地を、見張らせておいた子なんだ・・・・』
以前この猫砦に、数人のならず者が、やってきたことがあった。そいつらはすぐにデスキャンサーの襲撃を受けて、逃走したのだが、ワタシはカロンに跨り、そいつらの逃走経路を追ったのだ。そして行きついたのが、聖騎士軍と見られる旗の立てられた野営地だ。
セリアちゃんとメルちゃんの村は、聖騎士軍の襲撃を受けて、今はどうなっているかわからない状態だ。そんな盗賊まかいな連中が、この猫砦を見付けて、黙っているとはとても思えない。その素行から考えられるのは、この猫砦への襲撃だ。
カロンは風の精霊に何かを耳打ちされると、途端にその表情を曇らせた。
『マヤ・・・・。どうやら動き出したみたいだ。例の聖騎士軍が・・・・』
そしてカロンは目を細めると、そう口にしたのだ。
どうやら聖騎士軍が、とうとうこの猫砦に向けて、進撃を開始したようだ。
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