08:姉妹の事情とマヤ
「昨日はせっかく美味しい食事を用意してくれたのに、あんなみっともない姿を見せてしまって御免なさい」
翌朝セリアちゃんが、そう恥ずかし気に謝罪してきた。
昨晩の夕食にビッグボアのステーキを出したのだが、セリアちゃんとメルちゃんは、フォークとナイフの使い方がわからず、悪戦苦闘して食べていたのだ。そのことの謝罪だろう。
「いえいえ。こちらの方こそ気が回らず申し訳ありません。せめて食べやすい串焼きにするべきでした」
現在ワタシは、畑に朝の水やりをしていたところだ。そこへ遅れて起きて来た、セリアちゃんが、謝罪にやってきたというわけだ。昨晩、2人は疲れていたとあって、食事を済ませると、再びメルちゃんがうとうとと、船をこぎ始め、すぐに2人には床に就いてもらったのだ。そのためか事情もろくに聞けずに、そのまま朝を迎えてしまった。
『そろそろこちらも事情を話して欲しいところだけど?』
するとカロンがワタシの後ろからのそっと現れ、そんなことをセリアちゃんに尋ねた。カロンがセリアちゃんに尋ねた事情とは、当然先日彼女達姉妹が、危険を冒してこんな場所までやって来た理由だ。すると途端にセリアちゃんの表情が曇る。これは何か並々ならない事情がありそうだ。
「ねえ・・・・お姉ちゃんお腹空いた・・・・」
するとそこへお腹を空かせたメルちゃんが、目をこすりながらやってきた。どうやら目を覚ましたみたいだ。
「その話は朝ご飯の後にでもいたしましょう・・・・」
ワタシはそんな2人を、再び台所に案内して朝食を振舞った。
朝食には焚火で作った棒パンと、魚の切り身と、数種の野菜をすり潰して作ったスープと、木の実入りサラダを出した。どれも好評で、あっという間になくなった。
そして朝食の後は、暗く沈んだ雰囲気の中で、姉妹に事情を聴くことになった。
「・・・・私達の村に、鎧を着た男の人達が攻めて来て、お母さんも・・・・お父さんも・・・・」
「うわあああああん!!」
セリアちゃんが事情を話すと、すぐにメルちゃんは大泣きを始めた。ワタシもいたたまれなくなって、少し涙で目がにじんだよ。
セリアちゃんの話によると、村に賊と見られる男達が攻めて来て、略奪や殺戮を始めたという。この世界ではよく聞く話ではあるが、いつ聞いても、あまり気持ちの良い話ではない。
『そいつらはもしかして・・・・』
カロンがその話に、何か心当たりがあるようで、口に出そうとしたその時だった。
「おおおおおい!! 誰かいねえのか!?」
叫ぶ男の声が、外から響いてきたのだ。
「「ひっ!!」」
2人の姉妹がその男の声に、怯えたように抱き合う。あんなことがあった後だ。その男の声に怯えても可笑しくはない。だがいったい誰だろうか? こんな危険な場所に、再び客が訪れるなんて・・・・
「いった誰ですか!? こんな魔物巣食う場所に!?」
ワタシは急ぎ小屋の外に出ると、城壁の上に飛び上がり、真下にいる男達に大声で尋ねた。
「あ~ん?」
「俺たちゃ聖騎士軍様だぜ!?」
「この門を開けろガキ!」
すると柄の悪そうな男達が6人、城門の前にいて、ワタシに脅迫めいた声で、そうまくし立てて来た。
『聖騎士軍・・・・やっぱりそうかい・・・・』
するといつの間にか、ワタシの側にいたカロンが、目を細め、そんなことを口にした。
聖騎士軍とはいったい何者だろうか?
この場所に来るためには、魔物巣食うあの危険な森を抜ける必要があるはずだ。あの男達はその森を、抜けて来たというのだろうか?
『あんな連中には、あの危険な森を超えるのは無理だ。この先を少し進むとシムザスにつながる街道があるんだ。大方その安全な街道を通ってやってきたんだろう』
ワタシの内心を知ってか、カロンがそう解説をしてくれた。確かにこの猫砦を少し進んだ場所に街道のような道がある。その先に行ったことがなかったので知らなかったが、その街道の先には、シムザスの街があるようだ。
つまり遠回りすれば、安全なルートを通って海まで来れたわけだ。まあシムザスの街までは徒歩で5日はかかると聞くし、安全でもかなり時間はかかっただろう。もし海にこれたとしても、デスキャンサーが待ち受けているし、どのみち安全とは程遠い旅になる。あの男達はその辺りを理解しているのだろうか?
「そんなことよりも良いんですか? この場所はデスキャンサーの巣窟ですし、今は丁度その出没時間でもあるんですよ?」
そんなワタシの言葉を勘ぐってか、城門の先からかさこそと、数匹のデスキャンサーが姿を現す。
「ぎゃあああ! 魔物だあああ!」
「このくそがきゃあ! すぐにこの門を開けやがれ!」
デスキャンサーを見て焦ったのか、男が悪態をつきながら城門を蹴りつける。まあ城門は硬い石で出来ているし、痛いのは自分の足だろうがね。
「助けますかカロン?」
『入れない方がいいよ。あれは山賊よりも質が悪い連中だから』
しばらくすると男達は城門から離れ、街道の方にすたこらさっさと、逃走を開始した。見ると先ほど城門を蹴りつけた男は、足を引きずりながら逃げ遅れ、そのままデスキャンサーの群に飲み込まれていた。後味は悪いが、山賊よりも質が悪い連中なら、この猫砦に入れるわけにはいかない。
「カロン・・・・あの連中について聞かせてもらってもいいですか?」
『ああ。ボクが知っているかぎりをね・・・・』
そう言うとワタシとカロンは、城壁から降りて、再び姉妹のいる小屋へと戻った。
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