07:獣人の姉妹とマヤ
ズズズ・・・・
「とりあえず入ってください・・・・」
ワタシが操土でその大きな城門を開けると、扉の向こう側にいる姉妹は、驚愕の表情でこちらを見ていた。
見ると姉妹には、犬のような耳と尻尾があり、彼女らが獣人であることがわかった。ボーロ村では見たこともなかった獣人を、こんなところで目にするとは、思いもよらなかった。獣人といえば、異世界もののラノベでは、テンプレな種族だったのを思い出す。
2人ともとても可愛らしい姉妹だ。お姉ちゃんの方は10歳くらいだろうか? 頭1つ分以上ワタシよりも背が高い。妹ちゃんの方は、ワタシと同じくらいの背の高さだ、ワタシと同じ、5歳くらいなのかもしれない。
2人とも一心不乱に、森を抜けてきたのだろう。枝で切ったであろう擦り傷が、あちこちにあった。
そして姉妹は恐る恐る、城門を潜り抜けた。
「お姉ちゃん!! 見たこともない木の実やお野菜があんなにあるよ!!」
城門を潜り抜けるや否や、妹ちゃんの方が興奮しながら、畑の方に駆けていく。
「危ないわよメル!!」
そんな妹ちゃんを止めようと、お姉ちゃんが駆け寄る。
「ちょっとメル!?」
ところが妹ちゃんは、お姉ちゃんが抱き留めた途端に、まるで糸が切れたように、意識を失ってしまった。
「どうしたんですか!?」
「zzzzz・・・・」
『寝ているね・・・・』
心配になって妹にちゃんに駆け寄ると、お姉ちゃんに支えられながら、いびきをたてて寝入っていた。
「ごめんなさい・・・・。昨晩から一睡もしないで森を抜けて来たものだから・・・・」
昨晩から一睡もしないで、この危険な森を?
この姉妹にいったい何があったのだろうか?
「あちらに小屋がありますから、一先ずあちらで休みましょう」
ワタシは姉妹を、小屋の中にある寝室に案内した。
小屋の中にある寝室には、簡素なベッドがあり、そのベッドがワタシの寝床だ。
「そちらにあるベッドを使ってください・・・・」
「ありがとう・・・・」
ワタシがそのベッドを勧めると、お姉ちゃんはベッドの上に、抱きかかえていた妹ちゃんを寝かせ、自分もまるで崩れ落ちるように横になり、やがて寝息を立て始めた。
「2人にいったい何があったんでしょうか・・・・?」
『とりあえず目を覚ましたら聞いてみよう』
ワタシとカロンは、静かにその姉妹を見守った。
第三者視点~
「ここは? ・・・メル?」
セリアが目を覚ますと、そこには見慣れない天井が見えた。その横にはまだ寝息を立てている、妹のメルがいた。
『目が覚めたみたいだね・・・・』
声のする方にセリアが目をやると、そこには虎柄の白い子猫がいた。
「不思議な猫・・・・。言葉をしゃべれるのね?」
『カロンだよ。よろしくね』
その虎柄の白い猫は当然あのカロンだ。
「私は・・・」
「目が覚めたんですね?」
セリアはそんなカロンに、言葉を返そうとするが、丁度そこにマヤが現れた。マヤはセリアとカロンの会話を聞きつけ、セリアが目を覚ましたのを悟りやってきたのだ。セリアはそんなマヤに目を向ける。
「あの・・・・泊めてくれてありがとう。私はセリアよ。それでこっちで寝ているのが妹のメル」
マヤが現れると、セリアはとっさにお礼と自己紹介をする。ついでにまだ寝息を立てている、妹の自己紹介もした。
「目が覚めたなら、まずは傷の手当からしましょう・・・・」
マヤが言う傷とは、セリアとメルの体中あちこちについた、森の木々の枝でついたであろう傷のことだ。
「こんな傷、舐めていれば治るわ?」
そんなマヤの申し出を、きょとんとした表情で耳にすると、セリアはそう言葉を返した。
「駄目ですよ! 傷は化膿すると治りにくいんですから!」
そう言うとマヤはセリアの手を取り、腕にある傷の上に手をかざした。
『まさかマヤ・・・・あのスキルを使うつもりかい?』
「当然です! こんな時こそあのスキルを使う時なんです!」
『やれやれ・・・・。君の中には自重と言う言葉が欠落しているようだ・・・・』
マヤ視点~
ワタシはセリアちゃんの傷を治す方法を、【森羅万象】のスキルに問いかけた。すると【森羅万象】のスキルが、その傷を治す道筋を描いていく。
まずは魔術的に作られた貪食細胞により、傷口にいる菌を捕食殺菌していく、その後傷口を合わせると、生物がもつ再生能力を高め、傷を瞬時に再生していくのだ。それは生物魔法の【治癒】という魔法だ。
そしてワタシは【治癒】の魔法を習得した。
習得魔法一覧
水魔法 【操水】
土魔法 【操土】【操鉄】【抽出】
生命魔法 【身体強化】【治癒】
闇魔法 【黒渦】
精神魔法 【思考加速】
植物魔法 【植物改良】
合成魔法 【魔石操作】
残り奇跡ポイント残り3・・・・・
「凄い! 傷があっという間になくなった!」
傷が瞬時になくなると、その様子にセリアちゃんが驚愕する。
傷が緑の光に包まれ、瞬時に塞がれていく様子は、とても神秘的で見ごたえのある光景だった。同時にワタシもその様子に驚愕し、目を丸くしていた。
「まるで司祭様のような魔法を使うのね!?」
「へ? 司祭様?」
セリアちゃんの言う司祭様の魔法とは、僧侶の回復魔法のようなニュアンスだろうか?
そう思いつつカロンの顔を、確認するように横目で見た。
『それ・・・・教会にいる聖職者や司祭が使う魔法だからね? 無暗に人に見せると、教会に囲われちゃうよ?』
するとカロンから、そんな言葉が返って来た。
「肝に銘じておきます・・・・」
この国の、特に創世新教の教会には、ろくな噂を聞かない。その教会全てが、そうではないかもしれないが、君主危うきに近寄らずだ。
「う~ん・・・・。お姉ちゃんお腹すいた・・・・」
その直後妹のメルちゃんが目を覚ました。
「ご飯の用意ならすぐにできますから・・・まずはその傷を治してしまいましょう」
そう言うとワタシは、2人の傷の治療を再開した。
「わあああい! しさいさまの魔法だ~!」
傷が瞬く間に塞がると、メルちゃんはとても興奮して、小躍りしてまわった。
「こらメル! 大人しくなさい!」
セリアちゃんに注意されるも、その興奮がおさまる気配はない。メルちゃんはとても活発な、女の子のようだ。
そして2人の治療が粗方終わると、今度は食事をするために、2人を台所に案内した。
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