表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/30

06:猫砦とマヤ

 第三者視点~


 あれから2ヶ月程過ぎたその頃、海辺にある村の跡には、砦が建てられていた。


 結界だけでは、心もとないと感じたマヤは、結界の内側にさらに、城壁で取り囲み、砦を建ててていたのだ。その砦はマヤの【操土】によって建てられ、所々にカロンを模したと思われる、猫型の穴が空いていた。

 その猫型の穴は、完成した城壁の内側が、余りにも日当たりが悪く、暗くなってしまったために、マヤが空けたものである。その猫型の穴から、城壁の内側に向けて、太陽の光が入り込む仕様となっているのだ。

 その城門があまりに巨大で、マヤの【操土】でしか、開けられないのはご愛敬。その城門にも猫の絵が彫り込まれていた。

 そこでマヤはその砦を、猫砦と名付けていた。


 2ヶ月前には、雑草がうっそうと茂る、空き地だった砦内には、今では多くの野菜や、実を付けた果樹が、生え揃っていた。そんな短期間で、野菜や果樹を生え揃わせた当人は、言うまでもなくマヤであった。

 猫砦の城門から入って、右側の一番奥には、石製の小屋が建てられていた。マヤはその小屋を寝床としていた。





マヤ視点~


「この火打石で火を付けるのもそろそろ面倒になってきました。そろそろ火の魔法でも習得したいですね・・・」


 その時、ワタシは朝食の準備をしており、いまだに慣れない火打石に、なんとか火を付けようと悪戦苦闘していた。


『そんなことで、回数制限のあるあのスキルを、使わないでおくれよ? あのスキルはもっと重要な時に使いなよ・・・・』


 するとワタシの傍らに、子猫の姿となったカロンが、小言を言いつつ姿を現した。


「面倒ですねぇ・・・・。マヨネーズさえ完成させれば、かなりのポイントを稼げると思うんですが、まだその目途もたっていませんしね・・・・」


 マヨネーズに必要な材料は、酢、油、卵だ。


 日持ちさえ気にしなければ、酸っぱい木の実から果汁を抽出して、その果汁を代用することが可能だ。

 油はベリー系の木の実の種からの抽出が可能だった。それは前世で見たインターネットで、ラズベリーなどのベリー系の木の実の種から、油が抽出できるという情報から知りえた知識だ。

 そしてその種から油をとる手段が、土魔法の【結晶抽出】であることは言うまでもない。その油は料理などにも、じゃんじゃん活用してる。


 残るは材料は卵だけだが、これがなかなか見付からない。村にはなかった卵だが、街まで行けば見付かるだろうか?


 ちなみにその日の朝ご飯は、炊いたヒラモチ麦と、貝の吸い物と、魚の塩焼きと、庭で採れた野菜のサラダである。

 最近は海で【操水】を使い、魚を獲ることを覚えたので、デスキャンサー以外の海の食材にも事欠かない。この海の魚は見慣れない魚ばかりだが、どれも巨大で、脂ののりも良い。2メートルクラスなんてよく獲れるので、魚は切り身にするのがあたりまえとなっている。


 そしてその魚との出会いが、奇跡ポイントの上昇につながったことは言うまでもない。


 奇跡ポイント残り4・・・・


 こうしてその日も、朝食がテーブルの上に並んだ。


「いただきます!!」


『今日も朝からご馳走だね・・・・』


 カロンは呆れながらそう呟くが、前世ではこれくらいの朝食は、あたりまえだったのだ。ここらの村で一般的な、水多めの麦粥とか、育ち盛りの子供が食べるには、とても少なすぎる内容だ。


「もしゃもしゃ!! ばくばく!! カロンも冷めないうちに食べてください!」


 ワタシはドンブリ一杯のヒラモチ麦をかき込みながら、ばくばくとおかずを口に詰め込んでいく。ヒラモチはお米に比べて大粒だけど、モチモチして美味しい。魚の切り身はよく脂がのっていて、塩加減も絶妙だ。その2つを食べ合わせれば、口の中でまろかやな味のハーモニーを奏で始める。


「つつつ・・・・」


 今度は素朴な香りのする、貝の吸い物をすする。すると口の中が、磯の香りと、貝の風味で洗い流されて、とても幸せな気分になる。


『君のご飯に慣れちゃうと、後が怖いね・・・・』


 そう呟きつつカロンも、その朝食に舌鼓を打った。


 朝食の片付けが終わると、今度は畑の管理に取り掛かる。雑草を抜いたり、畑に水やりをしたり、肥料をまいたりだ。ぶっちゃけ、ワタシの魔力だけでも植物は育つが、出来るだけ自然に育つように、肥料で育てたいと思っている。


『マヤ・・・・。何やらお客さんみたいだよ?』


 そんな野良仕事をしていると、カロンがそんなことを伝えて来た。


「誰ですか? こんな危険な場所に・・・・」


 こんな危険な海辺に来るとすれば、冒険者か狩人くらいだ。だとしてもあのデスキャンサーに挑もうとする者はそういないので、ここらに来るとすれば珍しい客となる。


「よっと!!」


 ワタシは一気に飛び上がると、もう一足壁を蹴り、城壁の上に躍り出た。ワタシの身体強化の強さであれば、これくらいの跳躍は朝飯前だ。というかこの砦から出る時は、いつもこんな感じで、城壁を超えて出るのだ。

 

「うんしょ! うんしょ!」


 城壁の上から外を見ると、そこには城門をひたすら押し開けようとする、小さな女の子がいた。女の子の後ろには姉と見られる娘もおり、心配そうに何か声を掛けていた。


 ここは魔物がいる危険な場所だというのに・・・・いったいどこの子供だろうか?





 第三者視点~


「メル! 危ないからよしなさい!」


 城門をひたすら押す妹のメルに、姉のセリアが注意をする。


「でもこの中なら安全そうだよ? それに猫さんの絵もあるし、きっと楽しい場所だよ!」


 幼いメルは城門にある猫の絵が気になり、その中に入りたくなったのだ。夜通し歩いて疲れているはずの幼い少女は、その疲れを忘れるまでに、その不思議な猫砦に、感銘を受けていた。


「君達、何をしているんですか!?」


 すると城門の上の方から、何やら幼げな、女の子の声がしてきた。


「聖人様色の・・・・女の子?」


 セリアは一目マヤを見て、そう呟いた。


 セリアの言う聖人様色とは、獣人に広く信仰されている、旧神教の逸話に出てくる、聖人の目と髪の色が、漆黒のような黒色だったことから、獣人の間に広く浸透した言葉だ。

 そんなマヤが忌み子と呼ばれる理由は、最近国全土に広がりつつある、創世新教の教えの中で、歴代最悪の魔王が、黒目黒髪であったという逸話が残っているからである。

 つまりマヤは旧神教では聖人色と言われ、良いイメージを持たれるが、創世新教では忌み子とされ、嫌われるということだ。


「今城門を開けますので! そこは危険ですのですぐに中へどうぞ!」


 そう言うとマヤはスルスルと城壁から降りて、門に手を当て魔力を流した。

 その巨大な石の城門を、マヤは【操土】操り、開け始めたのだ。


 ズズズ・・・・

 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

 食べるのが大好きな方★


 ぜひコメントをください!

 そして面白かったらブックマークと評価をぜひお願いします!

 ★★★★★いただけたら作者はテンション爆上がりですよ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ