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14:ボーロ村の食料不足とマヤ

 あれからワタシは、ボーロ村の食料不足を、解決するために邁進していた。


 まずワタシが始めたのは、森での狩りや採取だ。森には多くの木の実、食用の野草、キノコなどがはえていて、自然の食料庫と言ってもいい場所だ。

 だが森には魔物がいて、危険な場所でもある。なので村人が、進んで森に近付くことはない。


 ここらの魔物で多いのは、とくにウルフやゴブリンだ。ウルフやゴブリンは、単体ではたいしたことはないが、複数で襲ってくる危険な魔物である。森に入った直後に、こいつらに捕捉され、ほどなくして群れに襲われるのが通例だ。


 だがこいつらにも学習能力もあり、一度群れを撃退されれば、その後襲ってくることはまずない。

 ワタシも森に入った当初はよく襲われたが、【身体強化】を使えるワタシにとって、こいつらの攻撃は、取るに足らないものだ。


 ゴブリンが好んで使う、棍棒で殴られたとしても、痛くもなんともないし、さらに危険な、剣を持っていたとしても、その攻撃は軽すぎて、深手を負うなんてことはない。

 またウルフの牙に噛まれても、甘噛み程度にしか感じない。噛み付かせて殴れば、だいたいそれで終わりだ。

 現在では遠くで様子を窺うだけで、こいつらがワタシに、近寄ってくるなんてことはまずない。


 たまに森ではボアとも遭遇する。ボアは恐れを知らず、相手が強いとわかっても、突撃してくる習性のある危険な魔物だ。だがそんなボアも、ワタシにとってボーナスでしかない。

 ボアは狩れば多くの肉になるし、その毛皮にも利用価値はある。

 その突撃に大した威力はないし、跳ね飛ばされても、一度として怪我をしたためしはない。【操土】で土を盛り上がらせて、転倒でもさせれば、あとは喉元を短剣で斬るだけで終わる。


 森に脅威があるとすれば、ごく稀に現れるアースドラゴンだろう。だがこいつらは草食で、自ら襲ってくるなんてことはない。こいつらの周囲には、肉食のキラードラゴンが、潜んでいることがあるらしいが、いまだに遭遇したことはない。もし遭遇してもアースドラゴンを囮にすれば、容易に逃げ切れる相手だろう。


 そんなわけでワタシは、毎日のように、森で食料調達をしているのだ。


「マヤ! お前また森に出かけていたのか!?」


 ところが森から帰れば、いつもヴィルおじさんが怖い顔をして、待ち受けているのだ。ヴィルおじさんはワタシに対して、過保護すぎるところがあるからね。


「森には入るなと、さんざん言って聞かせたはずだぞ?」


「この森の魔物なんて、大した敵ではありませんよ?」


「だがもしもがある! 森では何が起こるかわからないんだ! 今まで聞いたこともないような、強力な魔物と、遭遇することだってあるんだ!」


「心配いりませんって、そのために【思考加速】だって覚えたんですから・・・・」


 【思考加速】は森羅万象に、素早い動きが遅く見えるようにと、願って得た魔法だ。精神魔法に属する魔法で、文字通り思考を加速させることで、周囲の動きが、遅く感じるようになるのだ。


 習得魔法一覧

  

  土魔法 【操土】【結晶抽出】

  生命魔法 【身体強化】

  闇魔法 【黒渦】

  精神魔法 【思考加速】


 残り奇跡ポイント4・・・・


 この【思考加速】はヴィルおじさんの、本気の突きを、躱す際に習得した魔法だ。ワタシを一人前と認めさせるのに、必要な魔法だったわけだ。


 今では例えヴィルおじさんであっても、容易にワタシを足止めすることは出来ない。森にだって海にだって、どこでも自由に行くことができるのだ。

 勿論言うまでもなく、あのアビーおばさんだって、今では簡単に撒くことは可能だ。いくら迎えに来ようが、ワタシが飛んで逃げれば、あのおばさんには何もできなのだ。出来てもせいぜい遠吠えくらいだ。最近では諦めたのか、こちらに見向きもしなくなった。


「そんなことより今日は森でボアが狩れたので焼肉ですよ!」


「お前はまたそんな無茶な狩りを・・・・」


「わ~い!! 今日はマヤの焼肉だ~!!」


 ワタシの話を耳にしたペトラちゃんがはしゃぎまわる。

 ボアの解体は慣れたもので、今では1人でもさくさくできる。それでもだいたいは、ヴィルおじさんを始め、村の男達も参加して、総出で行うことになるんだけどね。


「カロン・・・いつものお願いします」


『ああ。冷凍の魔法だね?』


 肉は軽く凍らせた方が、薄く切りやすい。なので毎回焼肉の際には、カロンに肉を凍らせてもらっているのだ。

 この村本来のスタイルでは、肉は適当に切り分けて、塊を骨付きで頂くのが普通だ。だが肉には熟成期間もあり、熟成が未成熟な肉は、硬く旨味が薄くなる。ボアならだいたい熟成には5日程はかかる。採れたてで頂くなら、薄切りにした方が、断然食べやすい。旨味の少なさは、塩で補うのだ。薄く切られた肉には、少量の塩でもよく馴染む。


 ジュ~・・・・


 焼肉は石板を焚火で加熱して、その上で行う。焼き肉用の網なんてないので、石焼で焼肉を焼いていくのだ。焼いた肉はもちろん、村人皆で騒がしく頂く。


「うめ~!」「柔らかくて最高だ!」


「毎日でもこれが食べたいよ!」


 焼肉は今日も村人達に好評だ。薄く切って塩を振っただけなのだがね。


「う~ん・・・・。塩だけってのはどうも慣れないな・・・・」


 だがワタシは、前世で焼肉といえば、あの濃い味のタレだったので、塩だけではどうにも物足りなく感じる。そこで試行錯誤して、自作でタレを作ったりもしている。


「酸っぱめの果汁に、塩ってのも悪くはない・・・・でもやっぱりあれが足りないかなあ?」


 あれというのは当然醤油のことだ。前世でタレといえば、大体のものに醤油が入っていたからね。


「見ろ! またマヤが新たなタレを作り出したぞ!」


「本当だ! 俺にも味見させろ!」「私が先だよ!」


 ただこんなタレでも、見付かれば村人が殺到するのはなぜだろう? そこまで村人達は、味に飢えていたというのだろうか? いや。それ以前にこの村では、味の概念すら、おぼろげだったのだ。こんな反応も、無理もないかもしれない。


『もはやマヤは美食の聖人だね? まあボクはそんな君を認めてはいないがね・・・』


 その度にカロンは、ワタシにそんな皮肉めいたことを言ってくる。カロン曰くワタシは、こんな小さな村で、いつまでも、くすぶっていていい存在ではないらしい。ワタシにいったい何を望んでいるのだろうかこの猫は・・・・?


「そんな悪態をつくなら、この報酬の飴玉はなしですよ?」


『それはそれ、これはこれさ。約束通りその飴玉はいただくよ』


 カロンはワタシの目の前で、あんぐりと口を開けて、飴玉を要求した。


 飴玉は現在この村で最も人気のある、ワタシがこの村で最初に作り出した砂糖菓子だ。

 飴玉は甘みのある木の実に、【結晶抽出】を使い、砂糖を抽出して、さらに【操土】で砂糖を固めて作り出した一品だ。

 単純だがスイーツといえば、酸っぱい木の実しかないこの村では、圧倒的に糖分の多い飴玉は、画期的で、至高のスイーツとも言われているのだ。

 しかも糖分は、魔力の回復にも役立つので、そのためかカロンも、この飴玉には目がない。


『今日のはペーダの果汁が入っているね。ボクは前のよりこっちが好みかな?』


 カロンは飴玉を、舌の上で転がしながら、そう感想を述べた。


 この辺りの木の実は巨大だが、それでも甘みは薄い。木の実一個から作れる飴玉も、たったの3~4個と少ない。それゆえ飴玉ごときが、かなりの貴重品となるのだ。ゆくゆくは糖分を多く含む、サトウキビのような植物も、手に入れたいものだ。


「それよりも今は米が欲しい!!」


 そんなことよりワタシは、現在米に飢えていた。この村の主食は麦がゆで、米に食感が、微妙に似てなくはない。だが所詮麦は麦だ。硬くてぱさぱさしている。それに甘みも、粘り気もない。


「お前はいつもそれだな? 昔は麦も品種改良していたという話だが、そんな麦もあったかもしれんな?」


 そうだ! 品種改良だ! 【森羅万象】を使って麦から米を創ってしまえばいいのだ!


 ワタシはまだ見ぬ米に夢をはせ、行動を開始した。


 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

 食べるのが大好きな方★


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