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13:異世界の海の幸とマヤ

「マヤ? 本当にこんなので上手く茹で上がるのかい?」


「はい! これが美味しいんですよ!」


 現在村に帰還したワタシは、夕方も近くなり、海で得た食材の、料理に取り掛かっているのだ。

 周囲は料理の手伝いを申し出て来た、村の女達でごった返している。ビッグボアの時もそうだったが、村の女達は基本、獲物が村に運ばれると、こうして手伝いに出てくるのだ。


 ウニや貝を出した時には驚かれたが、とくにデスキャンサーのインパクトは大きく、悲鳴を上げる者もいて、少し騒ぎになったくらいだ。

 そんな中でも子供達は物怖じせず、デスキャンサーを、木の棒でつんつんと付いて、何が可笑しいのか笑っていた。


 グツグツ・・・・


 デスキャンサーの解体は、力のない村の女達には難しいので、身体強化が使えるワタシを含め、ヴィルおじさん、冒険者のダイソンさんで、ワタシの指示のもと、関節から切りはずし、大鍋に入るサイズに、細かく解体していった。

 デスキャンサーの甲殻が硬い理由も、【身体強化】によるものなので、食材となりはて、【身体強化】が切れた状態であれば、簡単に割ることが可能だ。


 その後細かく切ったデスキャンサーを大鍋に入れ、持ち帰った海水で塩茹でにしたのだ。

 グツグツと茹で上がるその甲殻は、さらに赤みをおびて来て、とても美味しそうだ。


 バチ! バチ!


 ウニは焚火の中に投入して、そのまま焼いている。

 焚火の中で焼かれるウニからは、大量に汁が噴き出し、それが湯気となって立ち上る。すると磯の匂いがしてきて、それがワタシの食欲を駆り立てた。ウニは焼くと、棘が飛ぶという噂を聞いていたが、そんなことは起こらなかった。棘は熱で徐々に先から、白く変色し始め、焼き上がっていく。


 ジュ~・・・・


 貝も同じく焚火に直接入れて火を通している。貝はアサリのような二枚貝で、直径30センチはあるような、特大サイズのものばかりだ。徐々に中に火が通り、汁を吹き出し、その汁がぐつぐつと、沸騰し始めている。その貝の焼ける香りが、さらにワタシの鼻孔をくすぐる。


「ほら! 茹で上がったよマヤ!」


 マーサおばさんがワタシのもとに、茹で上がったデスキャンサーを、一番に運んでくれた。

 マーサおばさんがワタシに運んでくれたのは、ワタシが強く希望していた、ハサミの部分だ。そのハサミは巨大で、まるで力士が先勝祝いに使う、巨大な盃のようにも見える。

 カニでワタシがお気に入りの部分は、やはりあのハサミだ。ハサミの部分は他の身とは違う、独特の食感があるのだ。


「えいや!」


 パツン!


 そのハサミを斜めに短剣で切り裂き、至高のその身を外界に晒すのだ。

 すると立ち上る湯気と共に、白い身が姿を現した。もわっと顔にかかる湯気から、甲殻類独特の香りがして、よだれが大量に溢れてくる。


「このデスキャンサーはマヤのおかげで狩ることができたんだ! マヤが一番に口にしても、誰も文句はないよな!?」


「ああ! よくやったマヤ!」「すげえぞマヤ!」「マヤちゃんすご~い!」


 ヴィルおじさんが村の皆にそう呼びかけると、一部「フン!」と鼻息を鳴らす連中はいたものの、皆がワタシの偉業を褒め称えてくれた。

 それが誇らしくも、照れ臭く感じて、ワタシは少し俯き気味となる。


 ヴィルおじさんの、食前の音頭ともとれる、その掛け声が終わると、ワタシはさっそくそのほくほくとした白い身に、箸を突き立て口に運んだ。


 それはまさに、あの前世で目にした、食の至高、カニの身そのものであった。

 だが前世でもこれほど大きなカニの身は、お目にかかったことはない。匂いもさることながら、その見た目が、すでに暴力的なまでに、食欲を駆り立ててくるのだ。


「はむ! はむ・・・あちっ!」


 気付くとワタシは、熱いのも構わず、その身に食らいついていた。


 口の中に入れるとまず、カニ独特の甘い風味が、湯気と共に口の中に充満し、鼻を抜けていく。咀嚼するとそのプリプリとした、いまだかつてない程の、贅沢な、肉厚な食感が伝わり、旨味が口の中に広がっていく。


 その大きな粒と繊維が、口の中でほどける感覚は、もう至高と言う他ない!


 そして久しぶりに、まともな食事をしたという満足感が込み上げ、次第に涙で視界が滲んでいく。

 気付くとワタシは、ぼろぼろと涙を流し、泣きながら、その身に食らいついていた。


「どうしたマヤ? そいつが口に合わなかったか?」


 そんなワタシを見て、ヴィルおじさんが心配そうに、声を掛けて来た。


「いえ・・・・。あまりに美味しすぎて涙が・・・・」


「そ、そうか。そんなにデスキャンサーは美味かったか・・・」


「おい皆! デスキャンサーは泣くほど美味いらしいぞ!」


「そりゃあいい!!」


「それじゃあ俺達も、あの憎きデスキャンサーを喰らってやろうじゃねえか!」


 そう村の男達が騒ぎ出すと、皆いっせいにデスキャンサーに手を付け始める。

 

「う~ん! マヤちゃん! ものすごく美味いよこれ!」


「これほどのものは初めて口にした!」


「まさかあのデスキャンサーがこんなに美味いとは驚きだ!」


 そして皆幸せそうな表情で、デスキャンサーの身を口にしていた。ワタシは涙をぬぐい、皆と笑顔で、その喜びを分かち合った。


『確かにこれは美味だ・・・・。この味を教えてくれたマヤには感謝だね!』


 見るとカロンも、その身を口にしてしまっていた。


 確か猫に過剰な塩は、よくなかった気がする。カロンは見たところ、ネコ科のようだが、果たして塩茹でした物を、与えてよかったのだろうか?


「あのカロン・・・。猫に塩はよくなかった気がするのですが、体調の方は大丈夫ですか?」


『ボクをその辺の猫と一緒にしないでくれるかな? なんなら人が死ぬような猛毒でも平気だけど?』


 どうやら聖獣であるカロンは、普通の猫とは違うようだ。


「貝ももういいみたいだよ!」


「今いきます!」


 マーサおばさんのその知らせを聞くと、ワタシは二枚貝の料理へと向かった。

 巨大な二枚貝も焼き上がり、その身を【操土】で造った台の上に乗せて、殻を外していくのだ。


「でか・・・・」


 そのあまりのでかさに、ついそう呟いてしまう。

 二枚貝はこの村でも昔は、食べられていたという。なので皆美味い部位は、良く知っているし心得ている。中でも貝柱、外套膜の人気は高く、その部位を狙っている者は多かった。

 あまりに巨大なために、茹で上がった貝を、さらに部位ごとに解体して、貝柱、外套膜、それ以外の部分に分けていく。


「あら? マヤあんた手際がいいね?」


「ありがとうございます」


 魚などは前世で捌いたことはあったが、巨大な二枚貝を捌くのは、これが初めてだ。だが基本魚よりも単純な構造なので、比較的簡単な作業だった。

 部位ごとに分けたあとは、それぞれの部位を切り身にしていくのだ。ここだけは前世とは全く異なる常識だ。二枚貝の身を切り身にするなんて、初めての経験だったからね。


「俺にもくれ!」「私にも!」


 二枚貝を切り終えると、さっそく村人が我先にと殺到した。


 そしてワタシもその二枚貝の切り身を頂く。ワタシが選んだのは、当然貝柱の部分だ。

 

「むにむに・・・・」


 その身を口に含むと、口いっぱいに磯の香りが広がり、鼻から抜けていく。噛みしめると貝の汁が溢れ出て来て、濃厚な旨味が口の中を支配する。これは間違いなく、あの上品なアサリの味だった。


「美味しいねえ・・・・いくらでも食べられるよ!」


「これ麦がゆに入れたらどうだろう?」


「美味しいかもしれないねえ・・・・」


 ワタシ的には森に生えていた、三つ葉に近いハーブを切って、入れたかったが・・・・


「最後はこの黒い棘の生えたやつだよ!」


 そう宣言するのは、ウニを採取したモニカさんだ。


「さあマヤ! 頼んだよ!」


 結局ワタシ任せですか・・・・


「えいや!」


 ますは焼き上がったウニを、短剣で真っ二つに割る。

 割ったウニの中から、その中身を取り出していくのだ。ウニで食べられる部位は、黄金色に輝く、生殖巣の部分だ。

 ウニのその黄金の身は、殻の外から熱を通したことで、その湯気を内部に閉じ込めて、蒸し焼き状態となっているのだ。

 その黄金の身が、磯の香りを放つ湯気に、もくもくと包まれている様子は、とても食欲を駆り立てられる。ウニの大きさもあってか、その黄金の身は、どれもとても大きい。


 その身を丁寧に切り分け、皿代わりの葉っぱの上に、次々と乗せていく。

 ウニは本来の甘みや、風味を損なわないためにも、塩は振らないで頂くのがベストだ。勿論好みで塩を振るのも悪くはないがね。


「うっ・・・・! おいおいまじかよ! まさかこれほど美味しいなんて・・・・!」


 さっそくその身を口に含もうとすると、そのウニを一番拒否していた、ダイソンさんがすでに口にしていた。この暴力的な磯の香りに、抗えなかったようだ。


 ワタシもさっそくその身を口に入れてみる。

 

「もく・・・」


 その身を舌の上に乗せると、何とも言えない、とろけるような濃厚な味わいが伝わり、幸せな気持ちになる。次第にその濃厚な味わいが、口いっぱいに溶け出し、磯の香りが鼻から抜けるのだ。たまにウニの粒が、ぷちっと口の中で弾け、それがまた心地いい。

 やっぱりウニは最高の食材だ。


「これはたまらないねぇ! 口の中でとろけるよ!」


「海にはまだこんなに美味しい食材があったんだね・・・・」


「そうです! 海だけでなく、この世界にはまだ見ぬ食材が沢山あるはずなんです!」


 この世界にはまだ見ぬ食材が、数えきれないくらい、眠っていることだろう。いつかはそれらの食材を求めて、旅に出るのもいいだろう。それがマヨネーズを始め、多くの調味料の開発につながり、更なる美食を生んでいくのだ。

 こうして夜は更けていき、幸せな宴は、幕を閉じたのであった。


『新たな美食との出会いにより、奇跡ポイントに3加算されました。』


 そしてなんと今回、新たな美食と出会うことでも、奇跡ポイントが加算されることがわかった。


 残り奇跡ポイント5


 お読みくださりありがとうございます!!


 マヨネーズが好きな方★

 冒険が好きな方★

 食べるのが大好きな方★


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