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01:拾われ子マヤ

「ブギィィィィィィ~!!」



 転生したら目の前に、巨大な猪がいた・・・・


 そいつの体高は成人男性ほどもあり、その体長はかなりのものと予想できる。その目は血走り、そいつはすでに、ワタシの目の前まで迫っていた。その狂暴なデスタックルは、すでにワタシに向けて、開始されていたのだ。


 ワタシ・・・・転生早々死んだ?


 前世のワタシは、社畜で働く会社員だったと記憶している。異世界もののラノベが大好きで、食べるのが好き、アニメの影響でキャンプ飯にも憧れていた。時間の都合もあり、前世ではとうとうキャンプには行けずじまいだったが・・・・


 ・・・・・出来ればキャンプ飯ぐらいは食べたかった。





「マヤ! なに惚けているんだい! とっとと畑の水やりを済ませな!」


 いつものようにアビィーおばさんが、ワタシに向けてそう叱責をあびせてくる。


 転生したワタシは、村人からマヤとよばれる少女だった。年齢は5歳で、痩せていてとても小さい。それはもらえる食べ物が少なく、いつも腹を空かせていたからだ。

 拾われ子で、忌み子で、しかも村が貧しいとくれば、食べ物なんてそうそう口には入らない。毎日薄く麦を入れた、麦粥でなんとか食いつないでいた。

 まるで飼い犬のような扱いで、めったに家の中に、入らせてもらったことすらない。その割に、馬車馬のように働かされた。


「や~い!」「忌み子忌み子~!」


 バスン! ボスン!


 ワタシのお腹や顔面に、悪ガキどもの投げた泥団子が命中する。

 

 その泥団子は痛くはないが、ぐしゃとしてべちゃとしていて、とてもいい感じではない。しかも服や顔が汚れて、最悪の気持ちになる。

 こいつらはアビィーおばさんの家の次男と三男で、次男がメルデで三男がマーロだ。この二人はいつもワタシを虐めてくる。忌み子となれば、この村では、いじめられて当たり前の存在なのだ。


 ワタシが忌み子である理由は、黒目黒髪だからだ。

 この世界には魔力が存在していて、目と髪の色が濃い程魔力が多いとされている。

 だが黒目黒髪は違った。魔力は高くても、縁起が悪いとされていたのだ。それは宗教上の理由からでもあったが、得にこの世界にいた、魔王が関係しているらしい。

 この世界で魔力が多い者は、高い確率で、魔法が使えると云われている。

 だがワタシの場合、その魔法すら使えないから、さらに始末に負えない。


 ワタシが拾われたのは、村の小山にある、木の下だったと聞いている・・・・

 赤ん坊だったワタシは、木の下に籠の中に入れられ、捨てられていたのだ。

 その籠の縁には、見慣れない文字が書かれており、その文字が【マヨネーズ】と読めなくもなかったという。そこでワタシの名前は、その籠の縁にあった文字がそのまま付けられたのだ。


 そう・・・・ワタシの正式な名前は、マヨネーズなのだ。


 前世のワタシはマヨラーまではいかないまでも、マヨネーズは大好きだった。そのマヨネーズの名前を悪いとは思わないが、人の名前で、しかも少女の名前でマヨネーズはどうだろうか?

 それを聞いた当時のワタシは、マヨネーズについて何も知らず、ただ神秘的な響きだとは思っていた。ところが、マヨネーズが何かということを、思い出した今のワタシにとってその名前は、かなり微妙に思えて仕方なかった。

 だがもう付いてしまったものは仕方がない。ワタシは一生マヨネーズの名前で、生きていかなければならないのだ。


 ワタシの呼び名は初めのころ、そのマヨネーズを短縮して、マヨとよばれていたらしい。ところがこの村の人間には、マヨという発音がしにくかったらしく、いつの間にやらマヤとよばれるようになっていた。


 その日も村で、馬車馬のように働かされていたワタシは、不意に村を囲んでいる塀の向こう見た。

 村に塀がある理由は、魔物を寄せ付けないようにするためだ。時々ゴブリンなどが村に侵入してきて、弱い子供などを攫っていくのだという。そのため村の周囲には、木の柵が設けられている。

 その木の柵の向こうには深い森があり、その森の中には最近巨大な猪、ビッグボアがちょくちょく、出没していたのだ。


「またあいつだ!」「村の中の様子を見ていやがる・・・・」


「村で雇った冒険者のやつらに報せろ!」


 村人たちはビッグボアを恐れており、皆口々に不安をもらしていた。

 魔物が村に入ることは、滅多になかった。それは魔物にはテリトリー意識があり、人間のテリトリーと思われる、村の中には入ってこないからだ。しかも木の柵などがあれば、簡単には侵入してこない。

 ただ腹を空かせれば話は別だ。ゴブリンのような小さい魔物はまだしも、巨大なビッグボアのような魔物であれば、そんなのお構いなしに、ぶち破って入ってくる。

 そして魔物が1匹でも村に入ってくれば大惨事だ。ましてや巨大なビッグボアなんて入って来た日には、それはもう大騒ぎになる。吹けば飛ぶような村だ。人口も少ない。最悪それだけで全滅もありゆる。


 そんなビッグボアが、洗濯物が入った籠を抱えたワタシを、しばし睨みつけていたのだ。


 ガシャ~ン!!


「ビッグボアが村に侵入したぞ!!」


 それは悲鳴に近い、男の知らせだった。

 

「ひいぃぃ!」「助けてくれええ!」


 それとほぼ同時に、村人たちの叫び声が上がる。


「全員そいつの目を見るな! まっさきに襲われるぞ!」


 そこへ駆け付けたのは、村の自警団の代表であり、元冒険者であるヴィルおじさんと、村で雇い入れた冒険者の2人だ。

 ヴィルおじさんと冒険者の2人は、それぞれ武器を持って現場に駆け付けたのだ。

 だがそれは既に遅すぎた・・・・。

 今の状態ならば、あのビッグボアが、ワタシに襲い掛かる方が早いだろう。そしてそのビッグボアは、まるで暴走する大型トレーラーのごとく、ワタシに迫っていたのだ。


 ワタシの命を奪うために・・・・


 その時ワタシの頭の中に、あるスキルのイメージが描き出された。その起死回生のスキルこそが、【森羅万象】だったのだ。

今回は食卓のヒーロー、マヨネーズが主人公です。

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