第2話:雷帝軍の訓練は死ぬほどキツかった
「動け!止まるな!次の魔力充填まで3秒しかねぇ!」
雷帝軍、通称。
この部隊はUMAと戦う最前線のエリート中のエリートで構成されていた。
そして俺――雷帝の因子を持つ異世界転生者“アラト”は、ここにぶち込まれたわけだ。
……マジで、地獄だ。
「おい転生者ァ!走れ!お前は“雷”だろうが!」
「ッス……!」
教官と呼ばれるこの筋肉お化け、見た目は人間だが右腕がゴツい魔導義手。
それをブン回しながら、容赦なく俺たちをしごいてくる。
「魔法制御、開始!雷属性持ちはサンダーウェイブ・レベル1から!」
俺は急いで魔力を練り、手を突き出した。
「《雷撃・一閃》!」
ビリビリと火花がほとばしる。
空間に雷が走り、射線上の木人形が焼け焦げた。
「威力は……まぁ並。だが転生者ならもう少し上げてこい!」
やっぱそうか……くそ、転生者補正って、便利だけどハードルも高ぇな!
◆ ◆ ◆
雷帝軍の訓練は、【魔法訓練】【肉体訓練】【召喚制御】【機械操作】の4カテゴリに分かれていた。
この世界、魔法だけじゃなく“マギテック”って呼ばれる機械魔術がある。
銃に魔法弾を込めたり、機械の義手で魔法を撃ったり――
そんな世界で生き残るには、全部を使いこなさなきゃならない。
特にキツかったのが、【召喚制御】。
「召喚獣は、ただ出せばいいってもんじゃねぇ!意志を持たせ、信頼を築け!」
「そんなの、言葉で言われても……!」
俺の召喚獣《雷迅のグリム》は、雷で編まれた狼型の幻獣。
召喚した瞬間に吠えまくって、こっちの指示をガン無視。
「なつけねぇ……!」
召喚獣の目がギラリと光り、雷をまとう体毛を逆立てた。
まるで「貴様など主とは認めぬ」とでも言いたげな目。
その時だった。
「こらァ、召喚獣ォ!主に従え!」
横から、別の訓練兵が放った火球がグリムの背後を撃った。
「テメェ……!俺の相棒に何してやがる!!」
「なんだ?お前、相棒って言ったな?さっきまで手懐けられねぇって愚痴ってたクセに」
そいつは口元を歪めて笑っていた。
小柄だけど、妙に落ち着いた雰囲気のある男。
「オレはレイ・カグツチ。火の召喚使いだ。
見ててやるよ、“雷帝さん”――お前がどんな奴か」
この日、雷帝軍での俺の地獄と、仲間との出会いが始まった。