第1話:雷が俺を殺し、導いた
俺の名前は――いや、だった、の方が正しいかもしれない。
日本で、どこにでもいるような高校生。
成績は中の下。運動も普通。友達とゲーセンに行ったり、ラーメン食いながらバカ話したり。
そんな、当たり前すぎる日常。
――それが終わったのは、あの日だった。
真っ黒な雲が空を覆い、稲妻が街を引き裂いた。
俺はたまたま、帰り道の公園を突っ切ろうとして、雨に降られて走ってた。
そして、次の瞬間――
ドンッ!!
目の前が真っ白になって、全身が焼けるように熱くなった。
音も、痛みも、感覚も、なにもかもが消えた。
「あ……れ……?」
たぶん、俺は――死んだんだと思う。
◆ ◆ ◆
気づくと、そこは真っ白な空間だった。
空も地面もなく、ただただ広がる“無”。
そして、目の前に現れたのは――
「ようこそ、選ばれし魂よ」
銀色の瞳を持つ、フードを被った存在。
人のようで、人ではない。
神? そんな雰囲気があった。
「お前は“偶然”ではなく、“必然”として選ばれた。雷に打たれたのは、そのためだ」
「……俺が、選ばれた?」
神は頷いた。
「お前には、“雷帝因子”という特異な魂の波動が眠っていた。だからこそ、異世界への転生が許されたのだ」
「異世界……?」
俺の頭はまだ混乱していた。けど、次の言葉で全部吹っ飛んだ。
「この世界は今、滅びの危機に瀕している。
宇宙から飛来した《UMA》――未確認生命体によって、人類は滅亡寸前。
お前には、この世界を“雷”と“力”で変えてもらう」
「――は?」
完全にゲームやアニメのテンプレだった。
でも、その“テンプレ”を前にして、俺は何も言えなかった。
「これは、転生だ。だが、ただの転生ではない。
お前は既に《雷帝》としての力をその身に宿している。
剣、魔法、召喚、そしてマギテック――
この世界のあらゆる力を、お前は手にすることができる」
その瞬間、俺の体に雷が走った。
稲妻のような光が視界を駆け抜け、全身が熱を帯びる。
「力の片鱗を見せてやろう」
神が手をかざすと、俺の前に魔法陣が浮かんだ。
『雷迅の剣』
空中に稲妻のような剣が現れる。
そのまま俺の手に収まり、手の中でビリビリと雷を放つ。
次に、神がもう一つ魔法を放つ。
『雷牢の檻』
目の前に現れた幻影の敵を、稲妻の檻が瞬時に捕らえる。
捕らえたと思った瞬間――爆ぜるような雷が全方位に炸裂した。
「この力……!」
心臓が高鳴る。
体が熱い。雷が体内で弾けるようだ。
「これが、“雷帝”としての第一歩だ。
お前の運命は、今始まったばかりだ――《雷鳴の王》よ」
光が包み、俺の意識は暗転していった。
◆ ◆ ◆
目を開けると、そこは灰色の空と機械の街。
高層ビルに魔法炉の煙。銃声と剣戟の音がどこかから響いている。
「目覚めたか、転生者よ」
金属製の義肢を持った兵士が、俺を見下ろしていた。
背後には、銃を持った兵士と巨大なメカ、
そして、鋼鉄で作られた“召喚獣”のような存在が並んでいた。
「ここは、雷帝軍。貴様の力を、この戦いに使わせてもらうぞ」
――こうして俺は、雷と共に生まれ変わった。
そして始まったんだ。
剣と魔法と雷と、UMAとの戦いが――。