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09.撤退戦






 ハーピーは滑空後、人数が増えたことに警戒したのか、俺たちから距離をとった。


「シーア! 前衛を治癒!」


 すぐさま俺は指示を出す。いくら巨体で鍛えてるといえど、正面から衝突を受け止めたズックとニャンちゃんの身体は骨が折れて悲惨なことになってるだろう。シーアが術を行使すると、ズックは盾から離れ背負っていた斧を構え、ニャンちゃんは一人で盾を構えなおした。ひとまず二人は大丈夫だろう。


「ライト、どう動く」


 背後から、ダークに指示をあおがれた。


「どうすっかな……」


 斥候として状況確認だけの予定が、俺が眼鏡くん救出を優先してしまったせいで、大分嫌な状況になってしまった。


 撤退を前提としても、まだハーピーの攻撃をちゃんと把握できていない。やみくもに逃げたところで背後から襲われて終わりだ。


「とりあえず、ハーピーの動きが見たい。事前に話したとおり、まずは陽動を頼む」


「承知」


「ワフ、ダークのフォローを頼む」


 ダークとワフはこれでいい。次は眼鏡くんだ。


「シーア、眼鏡くんの治癒」


 ワフの背中からおろした眼鏡くんだが、ボロボロの服から見える肌には出血も多い。治癒したところでスタミナがどれほど残っているかはわからないが、精霊術師がいないと攻撃力(火力)が全然足らない。


 シーアに眼鏡くんを任せて、俺はハーピーを見据える。


 そのとき、ハーピーの背後から、ワフの背に乗り飛び上がったダークが見えた。ダークは身体を回転させるようにひねり、双剣でハーピーの顔を狙う。ハーピーはクチバシでそれを対応した。そのままついばむように、クチバシ突きだす。ダークはワフと連携し、上手くかわしていくと、一度こちらに戻ってきた。そのタイミングでハーピーは両翼を広げた。


「羽根の範囲攻撃がくるぞ! ワフ、シーア盾!」


 この攻撃はさっき見た。水と風の盾が現れるが、その内側でニャンちゃんが構えた大楯の内側に全員で隠れる。

 間もおかずに、羽根が矢のように飛んでくるが、問題なく防いだ。


 すると、防がれた事に怒ったのかハーピーが「ギャアアアアア」と咆哮をあげた。暴力的な音で空気が震える。嫌な予感がする。


「なにかくるぞ!」


 もう一度、水、風、大楯の内側に身を隠すと、大きな衝撃が走った。キィィンと盾と衝突した甲高い音が響く。事前情報と照らし合わせると、風の精霊術の刃のような突風か。


「シーア、前衛に治癒! ダーク、様子を見てまたワフと陽動に!」


 指示を出しながら考える。


 事前情報にあった滑空、羽根、風の刃は見た。攻撃前のモーションは、滑空は高く旅立ち、羽根の攻撃は両翼を広げる。風の刃は不確かだが、咆哮として仮定する。


 ダーク単独で陽動を任せるにはまだ情報も少ない。だからといって、ダークだけに攻撃させてもジリ貧だ。


 できれば滑空攻撃をさせ、盾で受け止めたあとにズックの斧で攻撃させたい。片足だけでも損傷させれば撤退の時間を稼ぐか、運が良ければむこうから逃げてくれるだろう。しかし、ニャンちゃんとズック二人がかりでないと、あの攻撃を受け止められるとも思えない。今の手札で何かないか。考えろ、考えるんだ。


「…………なにしに来たんだよ」


 背後から、眼鏡くんの不満そうな声が聞こえた。


「よかった! 目覚めたか!」


「お前たちなんかいなくとも――――」


「今はそういうのはいいから! なるはやで撤退したい! ニャンちゃんの大楯か、ニャンちゃん自体に精霊術かけられる!? 滑空の衝突を受け止めたい」


「誰に言ってんだ。両方できるに決ま――――」


「よし! じゃあ、ハーピーに滑空誘導するためにキレさせたいんだけど、顔面水で包むとか炎で燃やすとかできる!? シーアでもいいんだけど、温存したい」


「だから、誰に言ってん――」


「よかった! ニャンちゃん、聞こえてた!? 滑空がくるけど、眼鏡くんがなんとかするから頑張って耐えてくれ!」


「オッケーにゃ!」


「ズック、盾からすぐ出れるようにしといて! ハーピーが衝突後に体勢整える前に、足狙って全力攻撃!」


「わかった!」


「ダークも、衝突後すぐにハーピーに攻撃開始!」


「承知!」


「じゃあ、眼鏡くん! やっちゃって!!」


「チッ。…………『炎爆(バースト)』」


 不満そうな眼鏡くんだったが、短く術言を唱えた。次の瞬間、ハーピーの顔面で爆発が起き、炎に包まれた。

 ハーピーは身をくねらせ絶叫するも、風の精霊術を使いすぐさま鎮火させる。そのまま逃げてくれれば良いが、怒り心頭のようだ。ハーピーは雄叫びをあげると、宙へと飛び上がった。


「眼鏡くん!」


「わかってる! 僕に指図するな! 『土壁(ウォール)』」


 眼鏡くんの術言で、ニャンちゃんの三メートル先で、地面がせりあがり、土の壁がそびえ立った。


「『恩恵ー力ー(ギフト パワー)』」


 続いて、眼鏡くんが指をさし術言を唱えると、ニャンちゃんとズックの元へ大量の精霊が集まった。


 そうしてるうちに、ハーピーの上昇が停まる。


「くるぞ!」


「だからお前の指図は――――」


「かまえろ!」


「「おう!!」」


そのとき、ハーピーが滑空した。

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