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渚は「暴徒の鱗」が自分だけの物では無い事を十分に理解していた。
-99 ホウ・レン・ソウ-
渚は話の流れから予想していたので冷静に対処していた様だが、ロラーシュの突然の申し出に自分1人で判断をして良い物かと悩んだ結果としてやはりシューゴとパルライの2人に『念話』で相談してみる事にした。自分が光に昔食べさせていた家庭の味を基にプロデュースした「特製・辛辛焼そば」は兎も角、メインである拉麺の元々の味を作り出したのは2人と言っても過言では無い。
シューゴ(念話)「弟子ですか・・・。」
シューゴはバルファイ王国の国道を南下しながら渚からの『念話』を受けていた、もうすぐ貝塚学園魔学校が見える所まで来ていてこの日の巡回コースの3分の1まで達していたが時間的に余裕があったのでゆっくりと考えていた。
シューゴ(念話)「「暴徒の鱗」の味と言っても、元々俺がしていた「暴徒」とパルライさんの「龍の鱗」の混合ですから片方が勝手に動く訳には行かないでしょう。」
渚(念話)「じゃあ・・・、やはりパルライさんの判断を仰ぐのが1番なのかね。」
叉焼のベースや拉麵のかえしとなる醬油ダレは「暴徒」の物を使っているが、鯛出汁を中心に鶏ガラやゲンコツ等で取っているスープはパルライオリジナルなので双方の同意が必要になる。
しかし、シューゴの心中ではもう1つ懸念している事が有った。数か月程前から全店で使用している麺は一秀が店長をしている店舗に任せてあり、そのレシピを一秀が門外不出にしているのだ(※ここからは「一」の事を「一秀」と表記します)。
渚(念話)「まぁあの人は強情で頑固って訳じゃないから大丈夫と思うけど、私も含めて4人で1つの店を作っている様な物だからね。」
シューゴ(念話)「そうですね・・・、今でこそ全店で作れる様になっていますがやはり「辛辛焼そば」の味の基礎を作れるのは渚さん以外にいませんからね、それも考慮した上で渚さんはどうお考えなんですか?」
渚は少し落ち着こうと、グラスに入った水を一気に飲んで一息ついた。
渚(念話)「私だってあんたと同じ考えだよ、だからこうして『念話』を飛ばしているんじゃないか。」
2人は何よりもパルライの返答が気になっていた、拉麵屋の店主でもある前にバルファイ王国の王でもあるパルライに信頼を寄せている様だ。
パルライ(念話)「すみません・・・、もう少々お待ち頂けませんか?今丁度ランチタイムで手が離せないんですよ。」
屋台の2人は携帯の時計を確認した、時刻は「13:00」、確かに拉麵屋にとっては忙しい時間帯だと言える。
それから30分程経っただろうか、やっとパルライから返答がやって来た。
パルライ(念話)「ふぅ・・・、お待たせしてすみません。それで・・・、どうされたと仰るんです?」
相も変わらずこの世界の国王達の腰の低さには驚かされる、ただ皆がこうやって平和な毎日を送っている事が出来ているのも国王達のお陰なのだ。
その3国王の1人であるパルライに渚は改めて事情を説明した。
パルライ(念話)「ロラーシュって、あのダンラルタ王国のロラーシュ大臣ですか?!」
渚(念話)「そう言えば・・・、テレビで見た事が有ると思っていたんだ。すっかり忘れていたよ。」
おいおい・・・、やけに冷静だなと思っていたらただ忘れとっただけかい。
渚「仕方が無いだろう、私だって人間なんだから。」
そんな中、パルライは何かを思い出したかの様な口調で改めて『念話』を飛ばして来た。
パルライ(念話)「そう言えば・・・、ダンラルタ王国のデカルト国王から何か頼まれていた様な・・・。」
ただでさえ大臣としての仕事が忙しいはずなのに、ロラーシュの自分勝手な行動をデカルトが許すのだろうかとシューゴと渚が思っていると・・・。
パルライ(念話)「そうでした、うちって今ダンラルタでは屋台だけの営業じゃないですか。」
シューゴ・渚(念話)「はい・・・。」
だから何を思い出したんだよ・・・。




