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折角の機会を活かそうとする好美。
-96 社長の拘りから-
いつの間にかレストランにいた社長に好美は美麗について聞いておこうと思った、自分も人の事を言えた状態ではなかったが泥酔されては聞ける事もきけなくなってしまう。
好美「ねぇ結愛、さっき美麗から聞いたんだけど新しい社屋を作るのが遅れてるって本当なの?」
ビールが並々と注がれたグラスを片手に結愛はゆっくりと答えた、どうやら原因(と言うより理由)は結愛自身の拘りにある様だ。
結愛「ああ・・・、実はミスリル鉱石が数年に一度の不作になっている様なんだ。」
好美「ミスリル鉱石?何の関係がある訳?」
結愛が言うには、貝塚財閥関連の建物の外壁には必ず溶かしたミスリル鉱石を塗っているらしい。情報漏洩の防止と建物自体の強化が目的の様だが、一応高級品であるはずのミスリル鉱石をそんな使い方して勿体ないと思うのは俺だけだろうか。
結愛「良いだろうがよ、従業員あっての貝塚財閥だぞ。命は金で買えないじゃねぇか、建物を強くする事で従業員を守ってんだよ。」
これはこれは・・・、いち社長として立派な事を言っている様だな、相も変わらず口は悪いが。
結愛「この口調は昔からだろうがよ、それに誰がこのキャラにしたんだ。」
確かに・・・、ギャップのある社長令嬢キャラを作ろうと考え出したこの2重人格に関しては否定が出来ないな・・・。結愛社長、大変失礼致しました。
結愛「分かれば良いんだよ、もう・・・。折角の酒が不味くなるじゃねぇか・・・。」
好美「良いじゃない、気にせず呑もうよ。」
一度グラスを空にした後、好美に再びビールを注いで貰った結愛は一気に煽り目の前の小皿に取り分けておいた鶏の唐揚げに箸を延ばした。あれ?ナルリスの店に箸や鶏の唐揚げなんてあったかな・・・、確か洋食屋だったはずだけど・・・。
ナルリス「フォークとナイフでは食べにくいっていうお客さんもちらほらいるし、バイトやミーレンへの賄いとして出していた鶏の唐揚げ丼を見た常連さんが自分も食べたいって仰ったから試しに出して見たら意外と好評だったから商品化する事にしたのさ。それに台抜きで出したら肴にもなるから一石二鳥で助かっているんだよ。」
なるほどね・・・、「お客様第一主義」ってやつか。ただ光とお客さんだったらどっちが大事なんだろう、これは個人的に気になるだけだけど。
ナルリス「そりゃあ・・・、あ・・・、光に決まっているだろう!!」
光の事を溺愛しているのは今も変わらないって事ね、ただそんな恥ずかしいセリフをよく言えるよな。ほら見ろよ、光の顔が赤くなってんぞ。
光「もう・・・、恥ずかしいったらありゃしない。呑もう・・・。」
光がチーズを肴にグラスワインを一気に煽る中、好美はとある事件を思い出していた。
好美「じゃあ以前みたいにロラーシュ大臣が食べちゃった訳じゃ無いんですね?」
ダンラルタ王国の鉱山で当時メタルリザードだった大臣がミスリル鉱石を馬鹿食いしていた事件は3国のニュース番組で大きく報じられていた、ただそれからはナルリスの作る「煮込みハンバーグ・チーズ焼きグラタン風」をよく食べているイメージがあるが・・・。
ナルリス「好美ちゃん、ブロちゃんの事を話していたのかい?」
好美「えっ?ナルリスさん、何かご存知なんですか?」
調理の手を休めて水を飲みながら一息ついていたオーナーシェフは、偶然好美達の会話が聞こえて来たのでゆっくりと近づいて来た。
ナルリス「そうだね・・・、相も変わらずちょこちょこうちの店に来ているけど最近は拉麵屋さん巡りにハマっているらしいよ。」
好美「拉麵屋ですか?」
ナルリス「うん、バルファイ王国で最近増え始めたらしいよ。これは聞いた話だけど『人化』できる上級の龍族の店が人気らしいよ。」
女性「本当・・・、困ったもんだよ・・・。」
結構な行列店だそうだ。