95
光明は妻の行動を許すのだろうか・・・。
-95 感動の裏で-
今回は先に有給届を出して来たと宣言した後に喜び勇んでグラスに瓶ビールを注ぐ結愛の意識は別の方向へと向いていた、どうやら聞き覚えのある声に反応した様だ。
結愛「ん?聞き覚えがある声がすると思えば、お前ホル・マイヤーだな。もうすぐ期末だってのに随分と余裕じゃねぇか。」
ホル「理事長先生、食事中にその話題はやめて下さい。」
ネクロマンサーの顔を見たピクシーが少し焦った表情をしていたので好美は小声で尋ねてみた。
好美(小声)「結愛、あの子がどうしたって言うの?」
社長兼理事長は好美の問いに頭を抱えながら答えた、本人に気遣って回答も小声で。
結愛(小声)「あいつな・・・、次の期末で赤点が3つ以上あったら留年しちまうんだ。」
どうやらこの世界でも学校の事情は変わらない様だ、ただ言える事は折角この世界で一番競争倍率が高い貝塚学園魔学校に通っているのに今のままでは本当に勿体ない。
ホル「もう・・・、人の事ひそひそ話で言わないで下さいよ。帰って勉強するから勘弁して下さい。」
結愛「本当だな、俺は全員の成績表を預かって目を通しているからちゃんと勉強してないか分かるんだぞ。来年は大事な年になるんだから今現在でそんな状態だとまずいってのは分かるよな?」
ホル「はい・・・、十分分かってます。」
自分の言葉に崩れ落ちるピクシーの気持ちを察した結愛は本人の肩に手を乗せて慰めた。
結愛「悪かったよ・・・、そんな顔すんなって。俺はお前も頑張っている事も知ってんだぞ、1年2年と特進クラスに通っている数少ない生徒の1人なんだからそれを活かして欲しいだけなんだよ。ほら、今日はゆっくり食ってからでいいから帰って必ず勉強しろよ。」
ホル「は~い・・・。」
結愛「それとガルナスにメラ、お前らも人の事言えないって事は感じておけよ。俺は3人に仲の良いまま特進クラスに居続けて欲しいんだぜ、期待を裏切んなよ。」
ただ娘の学校での様子をあまり知らないが故に結愛の発言に驚きを隠せないのが光とナルリスだった、ガルナスのイメージと言えば「陸上」と「大食い」だけだったはずだが・・・。
光「結愛ちゃん、今何て言ったの?うちの子が「特進クラス」って?」
状況を把握しきれていない両親に理事長は「大人モード」で答えた。
結愛「そう・・・、ですけど・・・。なんでそこまでびっくりしているんですか?」
ナルリスに至っては驚くどころか完全に調理の手が止まってしまっていた、伝票はずっと雪崩の様にで続けているのに大丈夫なのだろうか。
ロリュー「おい・・・、ナル・・・、大丈夫かよ。隕石でも落ちて来た位の顔すんなって。」
ナルリス「悪い・・・、俺は夢をみているのかと思ってしまってな・・・。」
今の今まで娘に勉強というイメージが無かったので「特進クラス」なんて夢のまた夢と思っていた、夏休みの自由研究だってちゃんとしないのにコネでも使ったんだろうか。
ガルナス「パパもママも失礼な事言わないでよ、私だって実はちゃんと将来の事を考えてるんだから。」
ガルナスの発言に続いたのは、学園の理事長本人だった。
結愛「光さん、ナルリスさん。実は私結構見てたんですよ、娘さんが学校の図書室で分厚い共通一次試験の過去問題集と睨めっこしながら真面目に勉強していた所をね。しかも本人が必死に稼いだバイト代で買ったって言ってるんです、私正直理事長をしていてこんな生徒初めて出逢いましたよ。一応、エスカレーター方式でうちの大学に入れるんですがもしかしたら本人には別の希望があるかも知れませんね。」
まさかの賞賛につい嬉しくなったオーナーシェフは急ぎシンクへと向かって追加として大量の米を研ぎ始めた、その眼にはうっすらとだが涙が・・・。一方、別の席では。
ガルナス「あれま~・・・、私本開いて寝てただけなんだけど・・・。」
メラ「確かにそうだけど、今それは言わないでおこうか。」
メラに賛成・・・。