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好美は美麗の新生活を応援していた。
-94 真面目な無職と不真面目な店長-
ガルナス達の新たな学友の出現に湧きあがる店内の傍らで、好美は顔を赤くしながらも少し前から気になっていた事を聞いてみる事にした。
好美「美麗、そう言えば新しい仕事はいつから始まるの?結愛は何も言ってなかった訳?」
正直、泥酔寸前の状態で仕事の話なんて出来るのだろうか?日を改めて素面の時に聞いた方が良いのではないかと思うのは俺だけだろうか。
好美「何え、おまはんみたいに毎日深酒ばっかりしとる阿呆に言われたくないんじゃけど。」
仕方ねぇじゃろ、呑んどらんと夜勤なんてやっとれんのじゃ・・・、って今は我がじゃのうて美麗の話ちゃうんけ。
好美「ほうじゃほうじゃ、わせとったわ。」
もう・・・、我がらが2人共阿波のもんじゃからって皆の前でいきなり阿波弁出したら混乱するじゃろうに。
美麗「ねぇ好美、さっきから何訳分かんない事言ってんの。」
好美「大丈夫、気にしないで。それで?結愛は何も言ってなかったの?」
美麗「実はこの前ね、結愛に電話してみた時なんだけどまだ社屋の建設と車の手配が完了していないんだって。それが終わるまでは何処かでバイトしててって言われたんだけど。」
好美「じゃあ、うち(「暴徒の鱗」)でバイトする?確か・・・、昼の従業員不足で人手欲しがっていたはずだから聞いてみるよ。「松龍」にいたんだもん、美麗なら大歓迎してくれるはずだよ。」
好美は急遽店長のイャンダに『念話』を飛ばした、まだ忙しくなる時間帯ではないはずなのだが全くもって返事がない。
好美「まさか・・・。」
好美は嫌な予感がしたので、代わりに副店長のデルアに聞いてみる事に。
好美(念話)「デルア、イャンダが今どうしているか分かる?」
デルア(念話)「イャンダ?さっき店にはいたけど、何分か前から見かけないな。」
好美「やっぱりか・・・、(念話)ごめんねデルア、後は本人に直接聞くわ。」
デルア(念話)「だったらついでにすぐに戻る様に伝えてくれるかい?野菜の積み下ろしで人手が欲しいんだよ。」
好美(念話)「分かった、でもあんまり期待しないでね?」
好美はため息をつきながらデルアの行動を『察知』してみた、やはり嫌な予感は当たっていた様だ。
好美(念話)「イャンダ、忙しいみたいじゃん。景気良いみたいだね。」
ただ前回と違って今度は返事があった。
イャンダ(念話)「本当だよ、まぁ嬉しい事なんだけどね。」
好美(念話)「そんな事言いながら今回は何味の牛乳を飲んでいるのかな~・・・。」
イャンダ(念話)「げっ!!」
実は数日前の事、イャンダが午前中の仕事を抜け出して「お風呂山」の銭湯に浸かっていた事が発覚した。こんな奴が店長で本当に良いのだろうか。
好美(念話)「前にも言ったよね、いくらデルアがしっかり者だからって店長はイャンダなんだからね。ちゃんと仕事してくれないと給料払わないよ!!」
イャンダ(念話)「いや・・・、俺にも付き合いって物が・・・。」
好美(念話)「何?文句あるの?クビにされたい?」
イャンダ(念話)「す・・・、すんません・・・、すぐ戻ります・・・。」
イャンダが急いで仕事に戻る中、レストランにはいつの間にか噂の社長の姿があった。仕事の方はだいじょうぶなんだろうか。
好美「結愛じゃない、こんな所にいたらまた光明さんに怒られるよ?」
結愛「今日は大丈夫だって、有給届を出して来たから。」
どうやら貝塚財閥は俺が思った以上のホワイト企業に成長した様だ、これも教育等に熱心な結愛が社長を務めているが故だろう。もしも義弘だったら今頃・・・。
そんな中、既にグラスを手にしていた結愛の意識は別の方向へと向かっていた。
目線の先には誰が・・・?