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92/666

92

楽しいはずの食事会で何故か悩むオーナーシェフ。


-92 副店長にとっての憧れの存在は食い逃げ犯?-


 賑やかな宴会が続き、女子高生達がひたすらに箸を進めていく中、調理場でサブシェフと共にずっと調理を続けていたナルリスには1つ不可解の事があった。

 ハーフ・ヴァンパイアである娘のガルナスと同級生のメラが以前から大食いというのは変わっていない、むしろ食のペースが速くなっている(よく言えば成長していて、悪く行ってしまえば金のかかる様になってしまっている)のだ。まさかと思ったが2人で大食い同好会でも結成して日々鍛錬を続けているのだろうか、そうでないと早食いとしても成長してしまっている根拠が産まれない(まぁ、ガルナスに至っては光からの遺伝だと思われるが)。自らの店の周囲を中心に飲食店等をぷらぷらと当たってはみたが、何処の店も大食いのチャレンジメニューなんて出してもいない。

 ただガルナスは学校の陸上部に所属していた事をも思い出した、日々厳しい練習が放課後から数時間の間続く中で大食いの練習をする時間なんて取れるだろうか。

 そんなこんなで父が頭を悩ませているのを横目に娘達はどんどん空いた皿を重ねていった、正直アルバイト1人では皿洗いが追いつきやしないのでタイミングを見つけてはロリューが手助けに入る様になっていた。


ロリュー「無理しなくても良いからな、ちょこちょこ水分摂ってくれよ。」


 流石にどんなに忙しい状況でも「無理をしろ」だなんて人として言える訳が無い、と言ってもロリューは『人化』したケンタウロスなんだが。


アルバイト「ロリューさん、すみません。本当に助かります。」

ロリュー「なぁに、元々休みだったのに無理やり入って貰って申し訳なく思っているのはこっちの方さ。後でアイスでもご馳走させてくれ。」

アルバイト「はい!!」

ロリュー「お前、こんな時だけは良い返事だな。」


 バイトの返事が良いのは分からなくもない、高く昇った日の光が窓から差し込む調理場はずっと火を使っていたが故に室内温度が40度を超えてしまっていた。正直ナルリスもロリューも調理と汗拭きのどちらを優先すべきか分からなくなっていた、この状態でのアイスは何よりのご馳走だと言えるだろう。

 そんな中、真希子にはこっちの世界に来てからずっと疑問に思っていた事が有った。


真希子「ねぇ、ずっと思っていたんだけどこの世界って妖精とかっていないのかい?」

メラ「えっと・・・、姉は一応ニクシーですけど・・・。」


 確かにニクシーは人魚や妖精の一種を呼称する時によく使われるが、真希子の言う「妖精」とは全くもって別物だった。


真希子「ほら、フェアリーとかピクシーとか、小さくて可愛いのがいるイメージがあるんだけどね。」


 その時だ、女子高生達が一心不乱に食事を続けるテーブルの方から女の子の声がした。声色からはガルナスやメラと同い年かと推測された。


声「おばさん、小さすぎて悪かったね。」

真希子「誰だい、ご挨拶な子だよ。それに「おばさん」じゃなくて「お姉さん」だろ。」


 少し怒りかけている真希子を必死で抑えようとするガルナス。


ガルナス「真希子さん、悪気があって言った訳じゃ無いと思うので落ち着いて下さい。ほら言ったじゃない、その大きさだから見つからなくても当然だから姿を見せてあげて。」


 ガルナスの言葉が終わった瞬間、女子高生達の間にぼんやりとだが光が出始めた。やがてその光は人型に変わりどんどん大きくなっていった。それから少し経って光の中から2人と同じ制服を着た女の子が出て来た。


ガルナス「お気持ちはお察しします、この子は友人で妖精フェアリー族のピクシーであるホル・マイヤーって言うんですけど食事代を浮かせたいからって小さいまま見つからない様にしていたそうなんです。もうホル、あれ程駄目だって言ったじゃない。」


 待ち望んでいた妖精の登場に空いた口が塞がらない真希子。


挿絵(By みてみん)


真希子「こりゃたまげたよ、でもね・・・。」


 すぐに冷静になった真希子、流石は店の副店長で大企業の筆頭株主。


真希子「お代はちゃんと頂きますからね。」

ホル「はーい・・・。」

ガルナス「もう全く・・・、馬鹿な事考えるからよ。」


まさかのただ飯を食う為の作戦に自らの特徴を利用していたとは・・・。

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