89
祝福の裏では・・・。
-89 有名なはずの大騒動-
客席で先程姉弟だと発覚した2人を含めた転生者達が談笑している頃、調理場でずっと時間に追われていたシェフ達は焦りに焦っていた。
ロリュー「ナル、転生者達って皆こんなに食ってばっかなのか?俺こんなの初めてなんだけど。」
ナルリス「光の祝い事だから余計じゃないかな、唯一の救いはガル・・・。」
バイト「すいませーん、オーダー通しまーす。」
2人「はーい・・・、よろしく・・・。」
雪崩の様に機械から吐き出される伝票を見て先程からなのだが何度も何度もため息をつく2人、そんな中ソムリエ兼サブシェフは先程聞き逃したオーナーの言葉を聞きなおそうとした。
ロリュー「ナル、それで?さっき「唯一の救いは・・・」って言ってたけどガル・・・。」
ただタイミングが悪かったのか、唯一の救いが崩れ去ってしまった様だ。それどころか、状況が一変してしまったと言っても良い位に・・・。
ガルナス「パパただいま、メラ連れて来たけど忙しそうだね。」
ハーフ・ヴァンパイアの娘・ガルナスの学校の友人でマーメイドのメラ・チェルドは相も変わらずナルリスのコロッケが好物の様だ、今日もそれを食べに来たらしいが・・・。
メラ「お・・・、お邪魔してます。」
女子高生達の姿を見て焦りの表情を隠しきれなかった父は、せめてこの2人の食事は後にさせて欲しいと願って仕方がなかった。嫌な予感が頭をよぎった・・・。
ナルリス「あれ?そう言えばアルバイトは大丈夫なの?」
メラ「今日は先日の代休なんです、確か店長もここに来ていると聞いたんですけど。」
ナルリス「え・・・、どこからそんな情報が飛んで来たの?」
メラ「姉です、後で本人も来るって言ってましたけど席は空いてますか?」
ナルリス「席ね・・・、今日は予約で埋まっているんだよ・・・。」
ロリュー「え?そうだ・・・。」
空席の状況を改めて確認しようとするロリューをきつめの視線で引き止めるナルリス、勿論先程の言葉は嘘であった。店の端の方にまだ2テーブルの空席があったが今は自分達の仕事を執拗に増やしたくなくて必死だった、しかしオーナーシェフの希望は再び崩れ去ってしまった。
真希子「あら、ガルちゃんにメラちゃんじゃない。2人もこっちにおいでなさいな。」
酒が回った勢いで気持ちが大きくなっていた副店長が女子高生達を手招きしていた、その光景を見て2人は絶望していた。
ナルリス「ロリュー、今日って白飯って炊いてたか?」
ロリュー「白飯?うちのメインってパンだよな。」
ナルリス「でもあの2人だぞ・・・、お前はあいつらの勢いを知らないのか?「暴徒の鱗」での大騒動を聞いてないのか?」
どうやら元竜将軍達の体験を耳にしていないケンタウロス、目の前の細身の2人が起こした大騒動はある意味歴史的な物だった事を未だに知らない。
ナルリス「良いか、よく聞けよ。」
忙しい中、敢えて調理をする手を止めて改まった様に声を掛けるヴァンパイアの様子がただ事では無い事を語っていた。
ナルリス「お前は想像できるか?あの「暴徒の鱗」が予備として設置していた物も含めた炊飯器に入っていた白飯が全て空になったんだぞ、しかもそれからまだ追加が大量だったらしい。はっきり言って俺らが今見ている雪崩はまだましと言っても良いかもしれん。」
ロリュー「冗談はよせよ、それにこの店にある炊飯器はたったの2台で片方ずつしか使っていないじゃないか。もしも今の情報が本当なら速攻で全滅しちゃうんじゃないか?」
それから十数分後・・・、ナルリスの「嫌な予感」が当たってしまった様だ・・・。ウェイトレスとして勤めるダーク・エルフのミーレンから悲報が・・・。
ミーレン「オーナー!!ガルちゃんたちが炊飯器からそのままご飯食べてるけど大丈夫な訳?!店の米が無くなっちゃうよ!!」
災厄の再来か、そう言えば条件が揃っている様な・・・。