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どうして守が読む必要が?
-88 秘密と嘘-
2人は真希子から渡された手紙を読んで心が温まった以外に何も感じていなかった、ただ守はどうして自分が読む必要があったのかを自分なりに思い出そうとしていた。
守「そう言えばさっき母ちゃんが「端の物でも摘まんでいろ」って言ってた様な気がするな、「端」を「摘まむ」ね・・・。」
光「守君、どうしたの?」
守「光姉ちゃん、その手紙ちょっと借りて良い?」
光「良いけど、どうするつもり?」
守「ごめん、折り目付けるよ。」
守は端っこの文字だけが見える様に手紙を摘まんで読み上げた。
「あ」「な」「た」「た」「ち」「は」「姉」「弟」「だ」
守「「あなた達は姉弟だ」・・・。えっ?!俺達が姉弟?!」
光「守君、何冗談言ってんの。私達が姉弟な訳無いじゃん、だって家が隣同士だった以外共通点も無いのに!!」
光は守の手から折り目の付いた手紙を奪い取って読み直した、何度呼んでも「あなた達は姉弟だ」と書かれていた。
2人は手紙を見て驚きを隠せなかった、自分達が姉弟だって?!その後何処か険悪なムードになるかと思われたが、光がおふざけで始めた「プロレスごっこ」により場は治まった。
そんな中、渚と一は未だにじゃれ合う光達に近付いて頭を下げた。
渚「実はね、あんたにずっと嘘をついていたんだ。あんたの父である阿久津はすぐに死んだ訳じゃ無くて実家の組員に追われた際に私と離婚して逃亡したんだ。あいつ、生まれたばかりのあんたを私に任せて私達を決して巻き込みたくないから自分は死んだ事にして成長したあんたにもそう伝えておいて欲しいと頼んで来たんだよ。親として嘘をつくのは良くないんじゃないかと言ってはみたんだけど、こればかりは仕方なかったのさ。」
一「吉村・・・、いや光ちゃん。俺と2個下の弟である阿久津は私が中学の頃に両親が別れて俺は母方に引き取られたからずっと知らなかったとは言え、ずっと話せなくて悪かったと思ってるんだ。本当に申し訳ない。」
必死に頭を下げる叔父を目の当たりにしつつ、光にはもう1つ気になる事があった。
光「じゃあ・・・、阿久津は一度戻って来たって事?」
真希子「そうさ、その時私との間に生まれたのが守だったんだよ。」
光「でもどうして?どうしてお母さんの所ではなく真希子さんの所に?」
真希子に尋ねたはずの質問に何故か頬を掻きながら答えようとする渚。
渚「えっとね・・・、これは私も人づてに聞いた話なんだけどさ。阿久津は逃亡を続けていた際に真希子が「紫武者」としてスルサーティーに乗って走っていたのを見かけて惚れてしまったらしいんだ、それで私と真希子の友人関係を知らない上に私との元夫婦の関係を隠したまま子供を作っちまってまた逃亡したって訳さ。」
渚の話にため息が止まらない真希子。
真希子「もう・・・、あの時は滅茶苦茶だったね。色んな意味で。」
正直言って想像もしたくないのは俺だけだろうか。
渚「本当、私達が和解しているのが奇跡と言っても良い位だね。」
真希子「あれは仕方なかったのさ、私達2人は何も知らなかったんだから。唯一悪いのはただ欲にまみれた阿久津1人って事にしようって、あの時話したじゃないか。」
渚「そうだったよ、ハハハ・・・。」
今となっては良い(?)思い出となった昔話を思い出して談笑する母たちを見ながらも、まだ驚きを隠せない守の横で嬉しそうに光が笑っていた。
守「な・・・、何だよ。」
光「ごめんごめん、いやね、あんたみたいな弟が欲しいなって思っていた事があったのよ。」
守「何だそれ・・・。」
真希子「まぁ付け加えるとしたらだけど、私が王麗に協力して捜査していたのはそれを理由に警察に保護してもらっていたって訳なのさ。えへへ・・・、守、まだ母ちゃんも侮れないだろ?」
守「いや母ちゃん・・・、俺の知らない秘密持ちすぎだろ・・・。それと、褒めてねぇよ。」
それから暫くの間、レストランは温かな雰囲気に包まれていた。
終わりよければ全て良し